首都圏コンピュータ技術者株式会社(以下、MCEA)は9月1日、個人事業主として働くITエンジニアと企業の開発案件をマッチングするサービスを刷新し、新たに「PE-BANK」のブランド名で提供を開始した。スキルを持ったフリーランスのエンジニアと、そのスキルを必要とする企業の開発案件を結びつけ、エンジニア向けの事務や福利厚生などのサポートも行う。

エンジニアにとって働くことの大きな喜びは、自分の手でモノを作り、それが社会の役に立つこと。そして自分の作ったものが自分の評価に結びつくことだろう。しかし、社会や産業が複雑化する現代ではそれが見えにくくなり、いちエンジニアの立場から自分の仕事の目的や結果を自覚しにくいこともある。会議や雑務に振り回され、肝心の開発に思ったように時間が取れないといった弊害も起こり得る。そんな中でも、自分の能力を十分に生かしながら、働きやすい環境を自分で獲得して働いている人たちがいる。フリーランスのエンジニアたちだ。

フリーランスというと、企業組織に束縛されない一方で、後ろ盾や保障がなく不安定な立場で仕事をしなくてはならないという印象がある。保険や年金、税金も自分で管理して納付する手間も必要だし、何より仕事を得るための営業活動をしなくては仕事を得られない。開発の傍ら、営業経験のないエンジニアに新規開拓しろというのも酷な話だ。また、コンプライアンスの問題でそもそも個人とは契約できない企業も少なくない。

フリーランスという立場に憧れはしても、会社勤めしか知らない立場ではリスクの大きさは、はかり知れない。冷静に考える人ほど一歩踏み出すことに躊躇するのは当然だ。こうした課題を解決し、スキルを持つエンジニアをニーズに合った現場と結びつけているのが、MCEAのPE-BANKだ。これについて、同社代表取締役社長・齋藤光仁氏、業務管理部取締役・寺田晃氏に話をうかがった。

独立開業って難しい?

首都圏コンピュータ技術者株式会社 業務管理部取締役 寺田晃氏

PE-BANKのサービスの中核は、同サービスに登録されたエンジニアと、企業から寄せられた開発案件をマッチングすることだ。しかし、一般的に想像される人材派遣や当事者同士がお互いを探すビジネスマッチングサービスとは大きく異なる部分が2つあると、寺田氏は説明する。ひとつはMCEAの営業担当が企業とエンジニアの間に立ってマッチングを行うこと。ミスマッチを避けながら、様々な規模・分野の案件に安心して関わることができる。

そしてもうひとつは、エンジニアとMCEAが企業からの案件を”共同受注”という形で請け負うということだ。エンジニアとMCEAが、ひとつの会社のような動きをするのだ。これは、あるプロジェクトに対して複数の会社がひとつの企業として事業を行う”ジョイントベンチャー”と同じような形態で、個人と企業が組む場合は法的に「組合」という形になる。この仮想的な企業体において、エンジニアは経営と技術部門、MCEAが営業・総務・経理部門を受け持つ形になる。

キャプション:PE-BANKの受注の仕組み。エンジニアとMCEAがひとつの会社のような形で仕事を請け負う

エンジニアは仕事の対価を時給ではなく成果物に対する報酬としてクライアントから受け取る。画一的に決められる時給とは異なり、契約の時点からエンジニア自身が参加して契約内容を決めるため、自分で納得して仕事を引き受けることができる。これはキックオフの時点でモチベーションの高さが違ってくるはずだ。

支払われた報酬は、10%前後がMCEAに(登録継続期間により8%,10%,12%の3パターン)、それ以外の部分はエンジニアに分配される。もちろんその中から税金や社会保険料を支払う必要があるが、成果に対する報酬がフェアで明確であることへの充実感は、給与収入からは得難いものだ。

営業活動はMCEAの担当者が日々行っているため、エンジニアは常に自分の仕事に集中することができる。仕掛かり中のプロジェクトの終了に合わせて次の案件を紹介してもらえば、継続的に収入を得られるので安心だ。また、請求や入金の管理、確定申告や納税分のプールといった事務作業も全面的にサポートされるので、青色申告が不安な場合でも問題ない。

何をやるか、何をやらないか、自分で決める働き方

仕事を選択するだけでなく、仕事をしないことを選択できるのもフリーランスの利点だ。齋藤氏にたずねると、ユニークな事例をいくつも教えてくれた。例えば、1カ月ほど仕事を休んで新しい技術の勉強をしたり、個人の開発や研究に充てたり、あるいは2~3カ月休んで旅をすることも自由だ。もちろん、家事・育児のために2~3年休業することも可能だ。希望すればいつでも仕事に復帰できるよう、MCEAがサポートしてくれる。

首都圏コンピュータ技術者株式会社 代表取締役社長 齋藤光仁氏

また、MCEAに登録しているエンジニア同士の交流も活発で、MCEAもこれを積極的に支援しているという。今必要とされる技術の勉強会や個人の開発・研究の成果をシェアする発表会(文化祭)、楽しむのがメインのボウリング大会やバーベキューなどが毎年開催され、多くのエンジニアが参加している。リア充や体育会系のノリが苦手な方も、エンジニア同士なら素で楽しめるのではないだろうか。自分のスキルの維持・向上のためにも、活発な情報交換の場があることは心強いはずだ。

代表取締役社長である齋藤氏自身がこうした多くのエンジニアと直に接点があり、それを楽しんでいるようだ。もともと齋藤氏本人もプロフェッショナリティを活かしたフリーのコンサルタントを経験しているだけに、技術で生きて行きたい人たちの考え方や行動に理解があるのだろう。同社にとって、PE-BANKに登録されたエンジニアは決してただの"頭数"ではなく、人を見て人と共に開発を行って行くための一人のパートナーなのだと言える。

自分の仕事に不満があるなら、あるいは自分にとって良くない環境にいると思うなら、自分自身の力を活かし、独立してフリーランスとして働いてみてはどうだろうか。問題はクリエイティブに解決すべき。そう考える人にこそ、フリーランスという生き方が向いている。

取引実績750社以上、多い時で月1,000件を超える案件から、ITエンジニアの非公開求人情報を提供する、キャリア相談&マッチングイベント「適職フェアin新宿」を10月4日(土)に開催。MCEAの営業担当と相談のうえ、その場でスキルとのマッチングが行われる。事前登録は同社Webサイトから。