越境ECのニーズが急拡大!

少子高齢化が進む日本の総人口は、将来的に大幅な減少へと向かうことが予測されている。人口が減少すれば個人消費も縮小することから、EC事業においても海外の顧客を対象にビジネスを行う越境ECの気運が高まりつつある。一方、円安等の経済的な要因もあり、海外から日本のECサイトを利用する越境ECユーザーの数は、年々増加傾向にある。経済産業省の調べによると、米国や中国では、国外ECサイトの利用率は2012年に約半数にも達している状況にある。その金額規模は、中国が前年比13%増の1,096億円、米国が471億円となっており、潜在的な日本の越境ECの市場規模は1,500億円を超えると見られている。

越境EC利用率経年変化(2010-2012)
出典:平成24年度我が国情報経済社会における基盤整備(経済産業省)

越境ECに立ちはだかる4つのハードル

高まる越境ECのニーズを受けて、ECを実践する企業はもちろん、個人にとっても越境ECユーザー獲得のために、海外ユーザーを見越した対応が今後は重要になってくると言えよう。しかし、中小企業や個人の出店者が新たに越境ECに取り組むには、大きく4つのハードルが立ちはだかっている。

まず1つ目は、言語のハードルだ。国内ECサイトでの出店者間の競争が激化していることから、海外市場に目を向けて、とりあえずサイト内の記述を英語に翻訳して越境ECを始めようとする事業者は多い。しかし単なる日常会話レベルであればブロークンな英語でも十分かもしれないが、越境ECの場合は相手に正しく商品情報を伝えることが最も重要となる。そのため、サイトではビジネス英語での正確な表記が求められるのである。

2つ目は、文化のハードルである。国ごとに商習慣や消費者の文化には違いがあり、その国の事情に合わせた対応が必要になる。例えば匂いに関する表記1つをとっても、国内では一般的な「爽やかな匂い」「匂いは気にならない」などのような曖昧な表現でも伝わるが、国外では「◯◯の香料の匂い」「湿気臭あり」といったように具体的な表現にしなければならない国や地域が多い。

3つ目は、プラットフォームのハードルだ。国内のECプラットフォームであれば、使い慣れているうえに、“痒いところに手が届く”ユーザーフレンドリーなつくりになっていることが多い。しかし海外のECプラットフォームの場合、使い勝手に馴染みがないのに加え、利用者側にそれなりの知識が必要なものが多く、言語と合わせて大きなハードルとなってしまうのだ。

そして4つ目は、国内外で共通した課題である在庫管理についてだ。複数のECサイトに出店していると、同じ商品の注文が同時に入ったりすることがある。その際にきちんと在庫を確認せずに品切れの商品を受注してしまった場合、大きなトラブルにも発展しかねない。しかし、ノウハウもリソースも乏しい小規模な事業者にとっては、リアルタイムかつ正確な在庫管理を行うことには困難が多いのも事実だ。

越境ECをトータルにサポートするサービスが登場

こうした越境ECのニーズの高まりと、事業者にとっての越境ECへのハードルの存在といった背景を受けて、越境ECでの海外の顧客とのコミュニケーションを、言語だけでなく文化や商習慣も踏まえて総合的にサポートするサービスもここにきて登場している。それが、ピットクルーが展開している越境ECサポートサービスだ。このサービスは、同社が2011年頃から行っているソーシャルゲーム企業などを対象とした、多言語サポートサービスの内容を越境ECに特化したかたちに進化させたものだ。10カ国語以上の言語でカスタマーサポートを提供でき、メールでの対応を基本に必要に応じて電話でも対応できるサービスとなっている。

ピットクルー、業務推進部 業務統括グループのグループ長、小松崎隆氏は、越境ECサポートサービスの開発経緯についてこう説明する。

「もともと国内で複数のEC事業者向けにサポートやパトロールなど各種サービスを提供していたのですが、プラットフォーム側だけでなく出店側のお客様からもサポートに対するニーズが拡大していきました。そのためゲーム会社のお客様を中心に好評だった多言語サポートサービスを、越境EC事業者のお客様にも提供できればと、サービスの開発に着手したのです」

翻訳サービスでは、日常的な顧客とのやり取りのメール翻訳や、サイト登録時の翻訳などを実施する。既に国内ECサイトに出店している場合であれば、事業者はそのデータをダウンロードしてピットクルーに提供するだけで越境EC向けの翻訳が完了する。この場合、海外のそれぞれのECサイトに必要となる情報を抜粋し、価格も現地の通貨に変換したうえで、正確に翻訳したデータが作成されて納品されるのである。

また、翻訳を行う際には、一般的な言語の違いだけでなく、文化の違いにも考慮がなされるのが特徴となっている。例えば、日本の場合はもともと多湿であるため湿気に関する匂いの説明などは一般的ではないが、米国ではそうした匂いの付いた商品は不良品だと捉えられることもある。そうした事態が起きないよう、海外の商習慣や文化に精通したスタッフが翻訳やアドバイスを行っているのである。そのためスタッフには、単純に外国語ができるだけではなく、実際に海外での生活経験のある人材を集めているという。

「『この商品ならば航空便がいいのか?それとも船便がいいのか?』といった一般的な質問がお客様から寄せられることが多いです。そのときには、相手先の国やお客様ごとの事情などを踏まえて、『この商品であれば、米国に発送するにはこの方法が最適ではないでしょうか』といったアドバイスを行っています」(小松崎氏)

さらに、ebayをはじめとした海外のECプラットフォームへの出店サポートもピットクルーのサービスには含まれている。先述のように国内ECサイトに出店済みの事業者であれば、データを各ECサイトに合わせたフォーマットに変換するところまでサポートするのである。

そして同社が越境ECサポートの次のステップとして検討しているのが、商品の発送代行サービスだ。

同社経営企画管理部の中生緑氏は言う。「お客様へ行ったアンケート内に、『商品をつくることに専念したいので発送や決済を代行してほしい』といった声などがあり、そこまで踏み込んだサポートを展開すべく現在体制を整えているところです」

さらに、越境ECのサポートサービスを展開していくなかで、同社自身にも更なるノウハウが蓄積されていくことから、各国ごとのニーズに合った商品の選定やマーケティング方法など、将来的にはより広範囲でのビジネスのサポートも目指していくという。

最後に小松崎氏は今後の抱負について次のように語った。「日本の生活用品など、アジアで特に人気の高い商品は数多くあります。なので、国ごとに売れる商品の傾向を踏まえながら、お客様とともに越境ECビジネスを成長させていきたいですね」

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