「自分のやりたいこと、なりたいもの」を考えて

舛本氏は、講演の締めくくりに、「アニメを作っているのは監督やキャラクターデザインだけではない」のだと語った。アニメ制作の総責任者であり、作風が話題になりやすい「監督」、アニメーションの絵のパートの花形である「キャラクターデザイン」といった職種に注目が集まりがちではあるが、彼らだけではアニメは完成せず、各セクションの技術者が技術を持ち寄り、ひとつの映像作品を作っているのだと熱弁。そして、講義を受けたアニメ業界に関心のある入学希望者たちに対し、「自分のやりたいこと、なりたいものは"単純にできている"のではありません。「やりたいこと」がどこにつながっているのか考え、自分にあった仕事やセクションを検討してもらうきっかけになれば」と語り、場を締めくくった。

この日、講演会場の一角には、解説に使われた「キルラキル」15話の原画や動画、背景の原本など、関係者でなければまず見る機会のない非常に貴重な資料の数々が、手に取って自由に閲覧できる状態で公開されていた。これは、舛本氏が関係各所の許可を取って実現したはからい。「アニメは人間が作っている」ということを、アニメを「見る」ところから一歩前に進もうとしている若者に知ってほしかったのだと笑う舛本氏。未来の「アニメの作り手」に対する思いが垣間見えた一瞬だった。

本稿の締めくくりとして、舛本氏が学生たちに向けて語りかけた「学生のうちにしておいたほうが良いこと」10カ条を記しておく。学生向けとはなっているが、すでに社会に出た人にとっても、何か得るものがあるはずだ。

1:映画を観る(1年に100本)
2:作品を作る(1年に4本)
3:自分が楽しいことをする(なんでもいい)
4:夢中になるものを探す(好きな物ではない)
5:イベントの幹事をする(飲み会、旅行など)
6:会話をする(年上の人と)
7:同志を作る、見つける(友達ではない)
8:物事を簡単に否定しない(物事には原因と動機があり情報には意図がある)
9:(アニメーターを目指すなら)絵を描く(1日6時間)
10:とりあえず"やる"