絵を映像にする

ここまではデザイナーの仕事で、これ以降は映像を作る工程となる。ここで、絵コンテの状態で実際に映像を撮影した、実際に作成したムービーが上映された。冒頭で再生された完成版と比べるとかなり未完成な状態で、舛本氏は「ノートの端に書いたパラパラ漫画のよう」と形容しつつも、すでにこの段階でカメラの切り替えなどは再現されている。ここから、プロダクション作業が行われ、映像がビルドアップされていく。

絵コンテの状態を映像にしたものが上映された

■レイアウト

「レイアウト」はアニメーターが制作するもので、画面上での人物のおさまりや演技のさせ方、背景のラフなどを決定する。

■原画

多くの工程がデジタル化されたアニメ制作現場において、原画は紙に鉛筆で描かれている

アニメの作り手として広く知られる「アニメーター」。一口にアニメーターと言っても作業内容や役職は複数あるが、その別名のひとつに「原画マン」という呼称がある。それはこの「原画」の制作を手がけることから来ている。

レイアウトを切った後に行われる原画の作業では、キャラクターの動きや影の付け方、表情が確定される。近年はBlu-rayやDVDの特典や関連書籍に原画が収録されることもあるため、鉛筆のやわらかい線で描かれたイラストを見たことがある人も多いかもしれない。

■動画

アニメーターの中には、「動画」を担当する「動画マン」と呼ばれる役割もある。「動画」とは上述した原画の間にある動きの部分を描いていく作業を指し、作画力やレイアウト構成、演出などの能力が必要となる原画マンになる前段階として、新人が担当することもある役職だ。動画の工程を経て、原画だけで撮影した状態よりも、映像がなめらかに動くようになり、ここで最終的な動きと線画(アウトライン)が決定する。

■カラーモデル

流子とマコの着色後の立ち絵。キャラクター設定の絵と見比べると、その仕上がりがよく分かる

動画まで終わったら、この後は色塗りの作業(カラーモデル)。「仕上げ」とも呼ばれる工程・役職で、例えばセーラー服がどんな質感の素材でできているのかといった部分は、アニメーションでは色で表現するのだと舛本氏は語る。カラーリングにおいてもきちんとコンセプトが決められており、各キャラのコンセプトカラーなどを反映されながら色をつけていく。

武器の硬質さやコスチュームのやわらかさなどを演出するものカラーモデルの役割

■BG(背景)

ここまで解説してきたのはキャラクターの作画についてだが、それと平行して、背景の作画が行われる。背景担当が描くもので、「キルラキル」においては、画用紙にポスターカラーを使って、手で描くというアナログな手法が採られている。ポスターカラーを使っているのは予算面の都合と、速乾性があり便利であるという実用性のふたつの理由があるという。

ここまで来て、映像のための素材がすべてそろった段階。膨大な数の原画や動画、背景などがそろい、やっとわれわれが見ているアニメーションが完成する。これ以降は、撮影の作業となる。

■撮影

各種素材をもとに、完成画面(動画)を作っていくのが「撮影」の工程。素材を重ね合わせるほか、例となったシーンであればキャラクターの周囲が光る演出やテロップなど、デジタル上の映像処理を入れるのも撮影担当者の仕事だ。

ここで映像「は」完成した、と舛本氏。これだけ多くの工程を経てきたが、この動画にはまだ音声が入っていない。アニメは絵と音で成り立っており、音声を入れるのは絵ができた後なのだと言及した上で、ここからは音に関する作業の解説が始まった。