「オーソドックスなアニメのつくりかた」を詳細に解説

そして、同作品の15話「どうにも止まらない」を教材として、アニメの映像ができるまでの行程をひとつずつ丁寧に追っていく授業が始まった。

「キルラキル」の制作方法は「オーソドックスなテレビアニメの制作方法に準じている」とした上で、通常であれば表に出ることのない絵コンテ状態の動画や、声優による演技の音声、BGM、効果音など音響関係の資料も特別な許可を得て使用するなど、舛本氏が講演にかける熱意が伝わる内容となった。音に関して本稿ではお伝えできないのが残念だが、1工程ずつ順に追っていく。

■企画書

「キルラキル」の企画書。タイトルやストーリー、キャラクタ-、世界観など、作品を構成する要素がまとめられている

「どんなものもお金がないと作れない」。そんな一言から解説は始まった。アニメも例に漏れず、制作するためには関係各社から制作のための出資を集める必要があり、そのために必要となるのが「企画書」だ。「キルラキル」の場合、企画書はTRIGGERが作成。「セーラー服」、「服」、「スケバン」といったコンセプトを軸に、作品タイトル、ストーリー、キャラクター、世界観などをまとめた冊子を作った。企画書には初期設定が掲載されているため、特にキャラクターに顕著だが、放送段階とは異なる部分が見られる。

■シナリオ

シナリオの一部がテキストで公開された

無事企画書が通ったら、最初に作るのは「シナリオ」。同作品は劇団☆新感線の座付き劇作家であり、近年ではTRIGGER設立メンバーと制作したアニメ「天元突破グレンラガン」や「仮面ライダーフォーゼ」など、アニメ・特撮の脚本も手がける中島かずき氏が執筆。物語の起承転結や、ドラマやキャラクターのせりふを書いたもの。すべてテキストで構成されていて、これを基準に物語を構築していく。

■絵コンテ

シナリオが仕上がったら絵コンテの制作が始まる。15話の絵コンテを手がけたのは、近年では制作中の実写映画『進撃の巨人』や『のぼうの城』などを手がける映画監督として知られる樋口真嗣氏だ。映画方面での活躍の印象は強いが、かつて「新世紀エヴァンゲリオン」を生んだガイナックスで、アニメーション作品も手がけていた人物だ。

「キルラキル」15話「どうにも止まらない」絵コンテ

「絵コンテ」はおおまかに言えば漫画のラフのようなもので、実際の映像の設計図にあたる。独特のフォーマットがあり、中央に絵、そのわきに補足テキストが書かれている。「絵コンテはアニメーションの最終的な映像の面白さの7割が決まるほどの重要なセクションで、各人の作家性によって、最終的な出来栄えが変わってくる」と舛本氏。樋口氏の絵コンテはかなり独特のスタイルで、「場面の空気感や雰囲気まで描かれている」勢いのある内容だとコメントしていた。

■キャラクター設定

主人公の纏流子

アニメ作品には、必ず最低ひとりはキャラクターデザインを担当する人物がおり、その役職名は「キャラクターデザイン」としてスタッフロールに表示される。近年は人気漫画家・イラストレーターが起用される例も多く、アニメファンが注目する要素のひとつとなっている。

流子の友人である満艦飾マコ

キャラクターデザインを行う際のポイントについて、舛本氏は「キャラクターが住んでいる世界の中で、どういう等身で、髪型で、服装をしているのか。作品の中でイマジネーションを膨らませてデザインしていく」ことが大切なのだと強調。アニメーションはすべてが絵で構成されているため、実写では描きにくいことも含めて、頭の中を映像化できるのが強みだとも語った。

■美術設定

流子たちが通う「本能字学園」の設定資料

美術設定は、アニメの中の「世界」を作る役割の呼称・および工程を指す。キャラクターたちがどんな場所、どういう時代に生きているのかということについて、土地からとれる資材なども含め考えていく。背景としての見た目だけでなく、そうした部分も含めて決定するため、「時代考証や建築のセンスも必要となる」とのこと。

■小物設定

ここでは武器の設定資料が公開されているが、日用品や服なども「小物設定」の領域だ

「小物設定」は、作中に登場するあらゆる"小道具"をデザインする仕事および役職の呼称。この役職については、プロップデザイナーという別名もある。主人公たちの武器や拳銃、食器、服など、日用品から武器までデザインする。衣服や雑貨はそれによって人々の生活レベルを示したり、生活感を出すことができ、こうした部分のデザインによっても、作品の厚みが増していくのだという。