ソフトの進化で端末の機能が向上

iPhoneに否定的だった当時の論調と比べて、現在のスマートフォン市場はどうだろう。Androidや廉価版のスマートフォンに押されてiPhoneのシェアそのものは下落傾向にあるが、先進国では引き続き40~60%の販売シェアを誇り、モバイル産業全体の利益のおよそ60%をAppleのみで占めるほどの高収益性を維持している。

2008年に発売されたiPhone 3Gでポリカーボネイトのボディに変更され、以降2年おきにデザイン変更が行われるようになった。2010年に発売されたiPhone 4ではメタルフレームと両面ガラスのデザインが採用され、2012年のiPhone 5では初めて画面サイズを4インチに拡大し、アルミ削り出しの薄型軽量ボディを実現した

Appleは2013年まで、ハイエンドモデルのiPhoneのみを毎年リリースしてきたが、2014年からはハイエンドのiPhone 5sとカジュアルモデルのiPhone 5cという2つのセグメントをリリースするようになった。ハイエンドより価格を抑え裾野を広げている。こうした施策によって、四半期ごとに5000万台以上を販売するAppleのメインビジネスに成長している。

対照的なのが、iPhoneが登場した際に懐疑的だった日本の携帯電話端末メーカーだ。スマートフォンが全盛の時代となり、撤退が相次ぐ結果となった。

ケータイはハードウェアと機能が一体となって進化してきた。携帯電話会社が企画に参画し、ベースとなる技術や標準機能を策定し、その仕様に沿ってメーカーが端末を作る、という体制で、新しいハードウェアで新しい機能が使えるようにしてきた。

しかしスマートフォンの時代になり、OSはAppleかGoogleが握り、ソフトウェアの進化によって端末の機能向上が進むパラダイムへとシフトした。ユーザーは新しい機能を、端末を買い換えずに使えるようになった。販売形態上、2年ごとに端末を買い換えるユーザーも多いと思うが、2年たっても最新OSにさえ対応すれば、遜色なく使えるようになった。

一方で、端末メーカーの撤退と機種数の減少から、機種を選ぶことによる自分らしさや特別感の演出が、しにくくなったかもしれない。