近年、ヨーロッパでは日本のラーメンがブームだ。その店舗数の広がりはここ数年で堅実に伸びているという。ドイツには今、ベルリン、フランクフルト、デュッセルドルフを中心に、ラーメン店が34件ほどあるといわれている(※新横浜ラーメン博物館調べ 2014年5月現在)。ドイツのラーメンブームの余波が肌で感じられる今、ドイツのラーメン事情に迫ってみた。
ドイツ発祥のラーメン店としては、「無垢(MUKU)」や「なにわ(NANIWA)」、「匠(TAKUMI)」、「夢谷(YUMEYA)」などが有名だ。なお、日本から進出した「Ramen Bar TAKEZO」というラーメン店もドイツにある。このほど、日本の新横浜ラーメン博物館に1年半の期間限定で出展したのが、その「無垢-muku-ツヴァイテ」。まさに"ラーメンの逆輸入"なのである。
「ザワークラウト」をラーメンに
「無垢-muku-ツヴァイテ」では、ドイツの郷土料理「ザワークラウト」をワインで煮込んで合わせたスープを開発。しかも、麺はピザ用の小麦とパスタ用のデュラム粉を配合しているという。この「無垢ツヴァイテラーメン」(税込1,200円、ドイツの本店では12ユーロ)はドイツ人にも大好評らしく、「まさしくドイツの食文化と日本の食文化が融合した画期的なラーメン」と言われているそうだ。
やや強めのしょっぱさを好むドイツ人
ドイツのラーメン事情に詳しい新横浜ラーメン博物館の広報・宣伝担当中野正博さんによれば、ドイツ人は"味噌ラーメン"をもっとも好んで食べるという。ドイツ家庭の卓上には、塩や醤油はあるものの味噌はないことから貴重さ・物珍しさがあり、また、"味噌=ヘルシー"だという考え方もあるという。
また、ドイツにはもともと豚などを塩漬けする保存食文化が根付いていることから、「しょっぱさ」については慣れているという。実際、ドイツで提供されるラーメンは、一般的な日本人の感覚よりもやや強めのしょっぱさに仕上がっているそうだ。
さらに、ドイツ人は辛い味を好む傾向があると言われている。「夢谷」のチリラーメン(9.4ユーロ)のような、見るからに辛そうな真っ赤なラーメンもウケがいいという。辛い料理が食べたくて、わざわざチリラーメンを食べに来るドイツ人もいるそうだ。
ビール&枝豆が前菜、ラーメンが締め
ドイツを含めて欧州では今、日本の大衆食が注目されている。と言うのも、外国人が好きな日本食と言えば寿司だが、ドイツの高級寿司屋でディナーに寿司を食べるとなると、1回の食事につき1万円~2万円ほどはかかってしまう。そこで、「もっと気軽に日本食を」という観点から、1食1,000円~3,000円程度で済むラーメンやかつ丼、やきそばなどの日本の大衆食が注目を集めている。
それも、ドイツにおいてラーメンは日本のようにファストフードではなく、レストランで食べるものという感覚なんだとか。予算は3,000円くらいで、先にビールと枝豆などの前菜を頼み、締めにラーメンを食べるというのが定番スタイル。ちなみに、ドイツでは枝豆がヘルシーな料理として評判で、特に人気を博しているという。なんと外皮も食べるそうだ。
ドイツをはじめ、欧州や世界で愛されている日本のラーメン。もはや日本のラーメンの枠を超えた驚きのラーメンが、世界のいたるところに存在していてもおかしくないのである。
※記事中の情報は2014年7月取材時のもの