KDDIは国内の通信事業者として初めて、イギリスにおけるLTE国際ローミングサービスを8月13日より開始する。これにより、国内通信事業者としては最多の22の国と地域でLTEが利用可能となる。

13日に提供を開始する国は、イギリスのほかにフィリピンとオーストリア。利用可能端末は、イギリスとフィリピンがiPhone 5~5sとKDDIが提供するiPad、LTE国際ローミング対応のAndroid各端末で、オーストリアはiPad AirとiPad mini Retina ディスプレイモデルのみとなる。

いずれも、海外ダブル定額の適用対象となっており、約24.4MBの通信量までは一日最大1980円、それ以降は最大2980円で使い放題となる。なお、一日は現地時間ではなく日本時間の0時~23時59分のため注意が必要だ。PCとの接続についても定額の対象となる。

イギリスのローミング対象事業者はEE、オーストリアはA1、フィリピンはGlobeとなっている。

技術的に大変なこともあるLTE国際ローミングサービスの裏側

KDDI サービス企画本部 ネットワークサービス企画部 グローバルサービスグループ マネージャー 油井 伸久氏(左)、同グループ マネージャー 岡田 章宏氏(右)

NTTドコモがLTE(Xi)サービスを開始してからもうすぐ4年が経つ(2010年12月スタート)。日本においてはLTEで繋がることが"当たり前"になる中で、諸外国においても、急速にLTEサービスは拡がりを見せている。

今回、KDDI サービス企画本部 ネットワークサービス企画部 グローバルサービスグループでマネージャーを務める油井 伸久氏と、同グループで同じくマネージャーを務める岡田 章宏氏に、国際ローミングサービス提供の"難しさ"について話を伺った。

――LTE国際ローミングサービスを拡充する中で最も重要視している点は何なのでしょうか?

岡田氏: 今回発表したイギリスでは、法人客が多く、一般観光客も多いです。22の国と地域までLTEローミングが拡がりましたが、日本人渡航者が多いところを優先的に拡げています。渡航者数で上位20カ国の多くをカバーできています。お客様が行くところにLTEを拡げていくことが私たちの使命だと思っています。

――LTEローミングを実現するにあたって、最も大変だったことは?

岡田氏: 一番大変だったことは、技術的なところの問題でしょうか。10年以上にわたって使われてきた3G(UMTS)と違って、LTEはサービスインしてからまだ数年。技術が"こなれていない"ので、ベンダーさんや事業者さんによって仕様の微妙なクセがあります。

「こことここを繋げば繋がるだろう」と普通にやっていても、何故か繋がらないケースがあることも。

――それは、無線区間(LTE電波)でも問題があるのでしょうか。

油井氏: いえ、無線区間での接続はほとんど問題ありません。バックエンドのシステムで、事業者間のデータを流す区間での交換機の接続で、調整が必要になっています。LTEのシステムは国際標準があっても、まだまだベンダーさんによって違いがあるんです。

海外でもLTEを当たり前に

LTEの商用サービスを開始している国・地域は111カ所にのぼり、全世界で318キャリア(ともにKDDI調べ)がすでに運用を開始している。あまたのキャリアから接続先を探す際に最も重要なものが「周波数帯」だ。

3Gでは、ある程度使用されている周波数帯が限られていたが、LTE世代ではその周波数帯が細切れになっており、世界中のキャリアがあらゆる周波数帯、バンド幅を使用している(3GPPでバンド1~44が規定されている)。

岡田氏: 私たちの周波数帯にあわせた端末が使えるキャリアと接続しなければならない。だから、海外事業者の動向を把握することが重要になります。3GPPなどの技術的な国際会議だけではなく、海外ローミング担当者のGSMにおける会合、そして個別に事業者と話し合いをするなど世界中を飛び回っています。(飛行機に乗り続けて)お陰で腰が痛いです(笑)。

油井氏: 現状を確認するだけではなく、周波数オークションなど、各国の状況を先々を見ています。LTEという高速通信をお客様が使えてこそのサービスなので、端末に合致する周波数を第一に考えています。

LTEで通信速度の高速化を体感しているユーザーは多いと思うが、それを海外でも体験できるスポットを拡大することが、自分たちの最優先事項だという。

岡田氏: お客様がLTE端末を使って「LTEから3Gには戻れない」と思っているであろう点で、「海外のどこでもLTEが使えるように」ということを重点的に考えています。皆さん日本品質を期待して利用されると少し残念に思われることもあるかもしれませんが(笑)、その一方で日本以上に高品質なLTEサービスを提供されているケースもある。私たちとしても現地に飛んで品質確認を行なっています。国内ではLTEを高速化するキャリアアグリゲーションを提供していますが、技術面では将来的に海外ローミングでも提供できると考えています(※技術的には可能だが、現時点で提供する計画はないとのこと)。

油井氏: どこでもどんな状況でもLTE国際ローミングサービスを提供できることが重要です。そして、ユーザーに「使える」「使えない」を意識させては駄目だと思っています。私たちは、iPhone以外にも多くのAndroid端末でLTE国際ローミングサービスが利用できるようにしてきました。日本と同じ環境を世界でも、LTEを使ってしまうと3Gに戻れないユーザーに対して「普段、LTEを使ってるんだから海外でもLTE」を当たり前にしていきたいですね。