サイオステクノロジーは、システムの信頼性を向上させるためのHA(高可用性)クラスターソフトの最新版「LifeKeeper for Linux v8.3」で、従来より対応しているOracle LinuxのRed Hat Enterprise Linux互換カーネルに加え、新たにUEK(Unbreakable Enterprise Kernel)をサポートした。これにより、Oracle Linux UEKのスケーラビリティの高さや機能を生かしたシステム基盤の可用性を高めることが容易に実現できるようになる。

LifeKeeper利用者の4分の1が、Oracle Databaseを利用

サイオステクノロジー株式会社 事業継続ビジネス 事業統括補佐 小山 恵一氏

サイオステクノロジーが提供するLifeKeeperは、稼働機に障害が生じた際に自動的に予備機に切り替えを行うことで、復旧時間の短縮と運用リソースの削減を可能にするHAクラスターソフトである。「24時間365日の稼働が要求されるミッションクリティカルなシステムの可用性を担保するLifeKeeperは、データベースとしての用途が多い」と語るのはサイオステクノロジー事業継続ビジネス 事業統括補佐の小山恵一氏だ。

「LifeKeeperをご利用いただいている企業の半数強がデータベースで使用しており、さらにそのうちの半分程度が、Oracle Databaseを利用中です。また、Oracle Databaseの中でも、近年OSにOracle Linuxを利用する企業が増加していることもあり、今回LifeKeeperをOracle Linux UEKにも対応させました」

ここで、Oracle Linuxについて、簡単に紹介しておこう。

Oracle Linux は、2006年の提供開始以来、世界で1万社以上、日本国内においても数百社を超える導入実績を有するLinuxだ。Oracle Databaseをはじめとするオラクル製品に最適化されたプラットフォームとして提供されており、Red Hat Enterprise Linux互換カーネルと、オラクル製品のようなミッションクリティカルなエンタープライズ製品に必要な、スケーラビリティを最大限に高めることのできるUEKという2つのカーネルを選択することができる。これまでLifeKeeper for Linuxでは、Red Hatカーネルのみに対応してきたが、7月末にリリースされる予定のv8.3で、新たにUEKもサポートすることとなり、より多くのOracle Linuxを利用するシステムに対応するようになった。

「オラクルとサイオステクノロジーのグローバルな関係の中で、LifeKeeperの稼働に必要なモジュールをUEKに組み込んでいただきました。UEKに対応しているクラスターソフトが少ない中、今回の対応によって、LifeKeeperを利用した高可用性システムをUEKの上でも構築できるようになります」(小山氏)

最新のカーネル技術を先取りするOracle Linux UEK

今回Lifekeeperが対応したUEKは、Red Hat Enterprise Linux互換カーネルと比べて、どのような利点があるのだろうか。日本オラクルの製品戦略事業統括本部 Oracle Linux & Oracle VM営業部の面和毅氏は、常に最新のカーネル技術を先取りしているのがUEKだと説明する。

日本オラクル株式会社 製品戦略事業統括本部 Oracle Linux & Oracle VM営業部 Principal Sales Consultant 面和毅氏

「例えば、Red Hat Enterprise Linux 6互換カーネルとUEK 3を比較すると、UEKを使った場合にはpNFSやXFSの拡張、またBtrfsの採用など、スケーラビリティに優位性があります。また、UEKは最新のカーネル技術をいち早くキャッチアップしているため、より最新の技術を使えるというメリットが期待できます。技術的優位性は常に追いつかれていくものですが、UEKではメインカーネルのバージョン自体を必要に応じて上げていけますので、Kernelの新機能にも常に対応していけます。」

また、Mainline kernel version 3.8をベースに開発されたUEK 3は、物理ハードウェアのエミュレーションによる仮想マシンの設定が不要になるコンテナ型仮想化技術「Linux Container」をサポートするほか、システム情報をリアルタイムで分析する「DTrace」機能のサポート強化など、Red Hat Enterprise Linux 互換のカーネルにはない新しい機能を搭載している。

「UEK 3は、セキュリティ面も強化されています。従来、Linuxサーバー上でアンチウイルスのオンアクセススキャンを実行する際、カーネルパニックが発生するケースがありました。しかしUEK 3のベースとなっているカーネルでは、ファイルシステムの状態変化を通知する機構である『fanotify』が実装されているため、アンチウイルスを使用している場合には、安定度が向上されます。」(面氏)

こうしたUEKの持つ拡張性や機能面での優位性に加え、LifeKeeper for Linux v8.3のUEK対応により、高い可用性を担保できるシステム構築が容易に行えるようになるわけだ。

Oracle LinuxとLifeKeeperで信頼性の高いシステムを構築

Oracle Linuxは近年、企業のミッションクリティカルなシステムでの採用事例も多い。その信頼性は、オラクルのOracle DatabaseやFusion Middlewareの開発部門が “標準プラットフォーム” として採用していることからもうかがい知れるだろう。また、Oracle Databaseを使わない場合でも、例えば大規模なファイルシステムや「SSDを有効に使いたい」というシステムなどにも多く使われている。

このように市場でのOracle Linux の存在感が増すなかで、LifeKeeperがUEKをサポートしたことの意味は大きい。

「LifeKeeperとの連携を通して、オラクルがカバーできていないサイオステクノロジーが得意とするユーザー層に対して、Oracle Linuxの裾野を広げていきたいと考えています」(面氏)

「Oracle Linux UEK上で稼働するさまざまなシステムに対して、導入しやすく実績の高いHAクラスターとしてLifeKeeperの提案を進めてまいります」(小山氏)

Oracle Linux UEKとLifeKeeper。Linux上で可用性の高いミッションクリティカルなシステムを構築したい企業にとって有力な選択肢と言えるだろう。