SIMロック解除義務化はバラ色の話ばかりではない

とかくバラ色の未来ばかりが語られがちなSIMロック解除義務化の話題だが、実際にはメリットとデメリットの両方がある。ここで両者で考えられるポイントを箇条書きしてみる。

【メリット】

  • 携帯キャリア間の移動が容易になり、安い料金プランを選びやすくなる

  • クーリングオフ導入によりサービス契約に関するトラブルの減少

  • 手持ちの端末を海外へと持ち出し、現地でSIMを購入して安価なデータ通信プランを契約可能に

【デメリット】

  • 端末購入価格の引き上げや契約条件の複雑化の懸念

  • クーリングオフを含む対応窓口(キャリアショップなど)での事務手続きの混乱やトラブルの増加

  • 別キャリアのSIMを挿入しても各種サービスを利用できないというトラブルの発生懸念(対応周波数やソフトウェア/ハードウェアの設定問題など)

一番大きな問題は対応周波数や設定に関するものだ。例えば、あるキャリアの端末が別のキャリアの特定周波数をサポートしておらず、SIMを差し替えただけではどうしようもないというケースも存在する。

また海外できちんとすべての機能が利用できるかどうかは端末やソフトウェアに依存しており、ある程度スキルのあるユーザーでなければ対応できない可能性が高い。当然、現地でSIMを購入できるだけの語学や交渉のための知識も必要だろう。

ゆえに多少高価ながらも、きちんと検証が行われて料金もきちんと明記されている携帯キャリア謹製のサービスのほうが使いやすく安全だったりする。ユーザーとしてはそこそこの料金で手軽に使えることが重要で、端末の機能やサービスをフルに活用することがメインではない。その意味で、総務省の意図したほどにはSIMロック解除サービスは活用されない可能性も十分に考えられる。

一方で変化に期待する面もある。日本ではiPhoneを含めて最新のハイエンド端末ばかりが売れ、アジアや欧州地域で人気のミッドレンジ以下の低価格端末の市場がほぼ存在しないに等しい。

だがSIMロック解除義務化で「最新ハイエンド端末0円」のサイクルが崩れ、ミッドレンジ以下の端末市場が存在する余地ができた場合、もう少し製品バリエーション豊かな市場が醸成される可能性もある。市場が硬直しつつあるなか、メーカーの新たな可能性が見られれば、それはそれで面白いだろう。