実物のお薬手帳

多くの人が一度は耳にしたことがあるであろう「お薬手帳」。私たちがふだん使用している薬の種類や量などを本人や医療従事者が把握することができる便利なアイテムだが、あまり医療機関を利用しない20~30代の人には、その特性を正しく理解できていない人もいるのではないだろうか。

そこで、今回から3回にわたってお薬手帳の特性やメリットなどを詳しく紹介する。初回のテーマは「お薬手帳とは何か」だ。

お薬手帳って購入する必要はあるの?

そもそもお薬手帳とは、文房具として市販されている通常の手帳と異なり、購入する必要がない。調剤薬局で希望すれば、無料でもらうことが可能なのだ。

各県や各市町村の薬剤師会や調剤薬局などが発行しており、ハガキ大ほどのサイズで、厚さは3mm程度の物が多い。表紙のデザインは、キャラクターがあしらわれた物から、シンプルにまとめられた物までさまざまだ。

表紙を開くと、所有者が自身の名前や住所、連絡先、アレルギー歴、主な既往歴、副作用歴などを書き込むページが必ずある。さらに約30~40ページにわたる空白ページのほか、お薬手帳の種類によっては、薬に関する豆知識や注意事項などを明記したページなどもある。

どのように使うの?

では実際に、どのように活用すればいいのだろうか。まず、調剤薬局でこの手帳を渡すと、処方箋を出した病院名と医師名、さらには処方された薬の名称や量、日付を明記したシールを、この空白ページにペタッと貼りつけてくれる。

これまでに処方された薬の情報を「記録」することによって、旅行先などでふだんとは違う病院・薬局に行くときに「おくすり手帳」を提示しても、医師・薬剤師らが患者の服用中の薬を確認できる。そうすることで、同じような薬を重複して飲んでしまうことや、飲み合わせの悪い薬を飲んでしまうというリスクを回避できるのだ。

患者によっては、同時に複数の医療機関で受診することもあるだろうが、医療機関ごとに複数のお薬手帳を使っていては、薬の情報を1冊に「集約」するというメリットを最大限に発揮できない。「命に関わる情報」をコンパクトにまとめるためにも、1冊のお薬手帳を使用し続けるようにしよう。

どれだけの人が活用しているの?

お薬手帳の利用率はどれぐらいだろうか。厚生労働省が発表した「平成26年度調剤報酬改定及び 薬剤関連の診療報酬改定の概要」によると、どの年代においても半数以上はお薬手帳を活用している実態が伺える。特に65歳以上の患者は、慢性疾患を抱えて日常的に薬を服用している人も多いためか、利用率は80%以上とかなり高くなっている。その一方で、診療機関を訪れる頻度が少ないであろう39歳以下の人たちは、活用状況が全年代で唯一、6割を下回っている。

年齢が低くなるにつれ、お薬手帳を利用している割合が低くなっていることがわかる

一人で旅行や外出をしたときに意識を失って医療機関に搬送されたときなど、お薬手帳を持ち歩いているか否かが生死を分けるケースもある。「いざ」というときに困ることがないよう、免許証や保険証などと同様、お薬手帳を常に持ち歩く習慣を持っておいた方がよさそうだ。

記事監修 / 日本調剤広報部・櫻井琢也部長、弓場鉄雪次長

日本全国にて保険調剤薬局チェーンの経営を手がける日本調剤にて、広く国民に最良な医療サービスを提供するための情報を発信している。