データ分析のゴールは顧客を理解し、コミュニケーションを実施することにある。すなわち、データ活用で利益を上げるためには、業務データの構造から考えるのではなく、施策を起点にデータを整理し、分析基盤に実装することが重要だ。2014年4月24日に開催されたマイナビニュース主催セミナー「勝つためのビッグデータ~経営の武器となる現実的なデータ活用とは~」では、この一連の流れについてブレインパッドが解説、さらにマーケティングやキャンペーンの自動化を実現するシナリオテンプレートなど、ブレインパッドが持つ豊富な実績とノウハウに裏付けられたソリューションが紹介された。

分析基盤はあくまでも手段 まずは施策を明らかにすることが肝要

株式会社ブレインパッド プロダクトサービス部 熊谷 誠一 氏

2004年の創業以来、ブレインパッドは一貫してデータ分析サービスをコアビジネスとしてきた。その10年間にさまざまなプロジェクトを通じて蓄積してきた豊富なノウハウとナレッジが同社の強みだ。現在、約50名のデータ分析の専門家(データサイエンティスト)を擁しており、インターネットの普及によって大きな環境変化が起こっているマーケティング領域において、そのポテンシャルをフルに発揮。データマイニング技術を活用しながら顧客企業のデータ活用を支援している。

ブレインパッドのプロダクトサービス部 熊谷誠一氏は、講演の冒頭で「勝つためのビッグデータ活用とはいかなるものか」と今回のテーマを提起。「利益を上げるためには、リソース(ヒト・モノ・カネ・情報)を効率的に活用できなければなりません。特に第4の経営資源である情報(データ)をうまく活用することが必要です」と語る。

データをうまく活用できているとは、具体的にどのような状況を指すのだろうか。熊谷氏はそれを、「データから顧客の姿を見ることができ、データを使って施策を実行できること」と示唆する。その根本を徹底して具体化していくところに、ブレインパッドのビジネスアプローチの特徴がある。

これまで多くのデータ活用の取り組みは、既存の業務システムのデータを可視化することから始めていた。あらゆる分析に対応できる高機能な分析プラットフォームの構築を目指すものの、それがどこまで利益に貢献できるかは不透明だ。

これに対してブレインパッドは、施策の仮説構築から着手することを推奨している。「データドリブンの施策展開を実現するためには、分析基盤ありきの考え方ではなく、実施しようとする施策をまず明らかにし、そのための手段として分析を導入するという考え方が肝要です」と熊谷氏は語る。

大量データをマーケティング資産に変えPDCAサイクルを高速化する

データ活用で利益を上げるには、業務データの構造から考えるのではなく、施策を起点にデータを整理し、分析基盤に実装することが必要なのだ。とはいえ、最初の段階からすべての施策を網羅して実装しようとするのは不可能だ。「必要になってから、あとから柔軟に追加できることが重要なのです」と熊谷氏は強調する。

そこでブレインパッドが提唱しているのが、データウェアハウスの中身を「データストア」「セントラルウェアハウス」「データマート」の3つの領域に分け、それぞれの機能に合わせてデータを実装するという方法である。

データストアには、業務システムのデータをそのままのテーブルレイアウトで蓄積する。これをセントラルウェアハウスで整理/統合し、標準化する。さらに、利用目的に合わせてデータマートで絞り込みを行うという仕組みだ。

3層構造DWHのメリット

そして、これらの蓄積データを使って施策を実行するため、ブレインパッドでは「exQuick」というマーケティング・インテリジェンス・ソリューションを提供している。

「従来のBIツールを使った場合でも、標準化/可視化されたデータをドリルダウンすることで、アプローチすべき顧客対象を分析することまでは可能でした。exQuickはそれをさらに一歩進め、抽出した顧客セグメントに対してメールを配信するなど、即座に施策を実行することができます。蓄積された大量データを、直感的なデータ操作で誰もが使えるマーケティング資産に変え、施策立案~実施~効果検証のPDCAサイクルを高速に回すことが可能となるのです」と熊谷氏はいう。

具体的には、異なるデータベース製品やフラットファイルに分散したデータを透過的に取り込む「データ統合」、ドラッグ&ドロップ操作のみで簡単に行えるクロス集計やベン図による条件の絞り込みを行う「分析・集計&条件抽出」、Excelを利用した表現力の高い「レポーティング」といった特徴により、ユーザー自身によるデータをもとにした意思決定を支援。業務効率や施策効果の向上に寄与するのである。

過去に蓄積した実績と事例をベースに短期間で結果の出るシナリオテンプレートを提供

株式会社ブレインパッド マーケティングオートメーションサービス部 部長 東 一成氏

これからのマーケティングに必要なのは、施策の実施を意識したデータの準備である。もちろん、データは大量にあればあるほどよい。ブレインパッドでマーケティングオートメーションサービス部の部長を務める東一成氏は、このように語る。

「従来の統計手法は、データをサンプリングして解析することを基本思想としていますが、それだけでは読み解くことができない事実が多々あります。データを100万件、1000万件と大量に集めることで、初めてさまざまな顧客セグメントに表れる固有の行動パターン(振る舞い)を発見することができるのです」

もっとも、データの量にだけ注目していてもだめだ。データの価値は「目的×量×活用」の3つの軸を掛け合わせた計算式が成り立ってこそ得られるのだ。東氏は「データ活用で重要なのは、目的を理解し、必要なデータを判断することです。これによって、データを有用な情報に変換し、データをマーケティングなどの施策ですぐに役立てることができます」と語るとともに、「それができるのは人間だけ。データからポテンシャルを引き出して成果を出す人材を、もっと育成しなければなりません」と説く。例えば、キャンペーンにおいてはWebアクセス、メール、購買などの行動履歴(ログデータ)を読み解き、リアクティブなマーケティングに活用することが、短期間での成果を勝ち取るための鍵となる。

「結局、顧客の属性や購買、商品マスタなどの既存データを使って、どれだけRFM分析や相関分析を繰り返しても、購入した事実以上のことはわかりません。大切なのは、ユーザーが商品を買う前に、どんな行動を起こしていたかを知ることです」と東氏は強調する。

ブレインパッドは、これまでの豊富な実績と事例から導き出した短期間で結果の出る「シナリオ」をテンプレート化して提供することで、その取り組みを支援している。自社が展開しようとする施策に沿ったシナリオを選択し、指定されたデータをアップロードすれば、キャンペーンオートメーションがスタートするという。「顧客行動」「プロダクトライフサイクル」「顧客ライフサイクル」をベースにしたさまざまなシナリオが用意されており、セグメントやタイミング、レコメンド内容などを全自動で決定する。

さらに、顧客価値の増大、優良顧客の育成を図っていくため、「その道筋となるKGIやKPIの設定はもとより、継続的な最適化や効果の最短化の取り組みまで、ブレインパッドはあらゆるコンサルティングをワンストップで提供します」と、東氏は講演を締めくくった。