完全にベクトルデータでアプリのUIがスケールできればいいのだが、実際にはドット依存の部分が依然として大きく、複数の異なる解像度のディスプレイを想定して開発者はアプリをデザインしなければならない。場合によってはディスプレイサイズごとに複数の画像アイコン等を用意せねばならず、デメリットにしかならないと筆者は考える。その意味では9 to 5 Macの出している「1704×960」という数字のほうが自然だ

一見すると、ものすごく中途半端な「1704×960」という解像度だが、実は初代iPhoneの解像度のちょうど「3倍」サイズにあたる。初代は480×320ピクセルだが、これを3倍すると1440×960ピクセルとなる。「1704×960にはならないんじゃない?」と一瞬思うが、iPhone 5時代の16:9化で縦方向の解像度が増えており、Retina時で1136ピクセル、非Retinaと仮定すれば568ピクセルとなる。568×3=1704ピクセルとなり、つまり3倍ピクセルモードというわけだ。UI設計は従来のものを踏襲できるため、旧Retinaと比べて1.5倍の解像度にはなるものの、開発負担はこちらのほうが少ないだろう。

問題は、仮に3倍モードのほうが適切だとして、4.7インチモデルと5.5インチモデルの両方で同じ解像度を採用するのかという点だ。同じ解像度だとして、両モデルではppiが異なってくる。そのため、同じアプリであっても出力される画像やテキストのサイズは異なる。もし9 to 5 Macの提唱する「3倍モード」が採用されたとして、アプリ開発者は「端末によってiPhoneも表示される画像のサイズが異なる」ということを意識しなければならなくなる。

初代iPhoneからiPhone 5sまで、Retina化やアスペクト比変更という工程があっても、「旧アプリが表示する画像やテキストのサイズは一緒」だったからだ。サイズの大型化に合わせて利用シーンも変化してくるとみられ、9 to 5 Macの提示する「‘No man’s land’: How a bigger iPhone 6 will require developers to rethink their app designs」というのは、いま改めて検討するのになかなかいいテーマだと思う。