「『くさやパン』あります」って!?

日本が世界に誇る珍味「くさや」。くさやは鮮度のいい魚を「くさや汁」と呼ばれる発酵液に漬けた後に天日干しする干物の一種で、新島や大島、八丈島などの伊豆諸島の名物になっている。地元の人でも、「ちょっとあの臭いは……」と敬遠する人もいるのだが、八丈島には「くさやパン」なるものがあるのだ!

観光シーズン限定の名物パン

「くさやパン」を展開している「ブーランジェリー」は、もともとケーキ屋さんだったそう。現在は店名の前に「コンビニ・パン・ケーキ・酒」とあるように、なんでもある便利な店として島の人たちの生活をサポートしている。営業時間も7:30~24:00と長く、深夜に小腹がすいてしまっても安心だ。

先に言ってしまうと、「くさやパン」はいつでもあるわけではない。八丈島の観光シーズンに当たるGWや夏季休暇の季節に「『くさやパン』あります」という看板が目に入れば、というところだ。ちなみに、前日まで予約も受け付けており、店員さん曰く「お土産もそうですが、日常的に楽しむために、地元の方が予約するということも多いですね」とのこと。

元・ケーキ屋さんということもあり、ちょっとメルヘンな「ブーランジェリー」

店の奥は工房になっており、筆者が店を訪れた時はちょうど「くさやパン」を袋詰めしているところだった。袋詰め前の姿、特ににおいをうかがってみたが、あの独特なにおいは漂ってこない。「くさやパン」はくさやをマヨネーズであえた"ノーマルタイプ"と、そこに青唐辛子を加えた"青唐辛子入り"の2種類がある。価格はともに280円。もっちりとしたパンの中はどうなっているのか、気になって仕方がない!

これが噂の「くさやパン」。現時点、特にあのにおいはしない

なお、店内には様々な惣菜パン・菓子パンがあるが、中には「おやつパン」(250円)なるものもある。食パンを横にではなく縦に切れ目を入れてジャムをたっぷり挟んだ「おやつパン」は、この店オリジナルのパン。「見るからに『おやつ』って感じがあっていいかと」、とほほ笑む店員さんに癒やされる。

袋詰めされたばかりの「くさやパン」たち

「おやつパン」のような菓子パンのほか、惣菜パンも種類が豊富

店の奥は工房になっている

ケーキは全体的にちょっと大きめ

パンを割ると隠し切れない存在感が!

あらためて「くさやパン」を見てみると、長さは15cm強とボリュームの一品だ。パンを割ると、においとともにくさやがしっかりとした存在感を放つ。とはいえ、マヨネーズとあえているのでにおいはやや緩和されており、くさやを初めて食べる人には"初めの一歩"にちょうどいいかもしれない。

味はというと、これもしっかりとくさやの味。筆者は青唐辛子入りをチョイスしたのだが、くさやの塩味とマヨネーズの酸味のいい相性に加えて、青唐辛子が後から効いてくる。店員さんにうかがったところ、パンを半分に割ってチーズを載せ、チーズがとろける程度にさっとトーストすると、酒のつまみにぴったりなんだとか。

ふっくらとふくらんだ「くさやパン」を横から見てみる

パンを割るとあのにおいも登場! 思いの外、青唐辛子もしっかり入っている

地元の方に「『くさやパン』を食べたことがありますか?」と聞いたところ、「観光で訪れた人なんかは食べているね」「たまに食べたくなる味」「くさやそのものがダメだからちょっと……」などという回答をいただいた。気になる方はぜひ、八丈島で確かめていただきたい。

●information
ブーランジェリー
東京都八丈島八丈町三根1687
営業時間 7:30~24:00

※記事中の情報・価格は2014年5月取材時のもの