3月22日、将棋のプロ棋士とコンピュータ将棋ソフトが戦う「第3回将棋電王戦」第2局、佐藤紳哉六段対やねうら王の一戦が、両国国技館で行われた。対戦形式は5対5の団体戦で、第1局は将棋ソフト「習甦」が制している。プロ棋士側は連敗すれば早くも後がなくなる重要な一戦である。
将棋電王戦の第1局が行われていた日、筆者は将棋のタイトル戦のひとつ「棋王戦」の前夜祭の取材で富山県にいた。現地ではもちろん電王戦が話題の中心で、関係者の誰もがプロの勝利を期待していた。だが、第1局はプロが敗れた。内容的にも完敗である。
「この敗戦は痛い。もしかすると全敗するんじゃないか」と、がっくり肩を落とす関係者たち。筆者も同じ思いだった。しかし、それから1週間経って第2局を迎えてみると、関係者の雰囲気は変わっていた。「菅井五段の敗戦はプロ側にとって痛いが、勝負はこれから」と前向きになっていた。
菅井五段は生粋の振り飛車党だが、実は振り飛車という戦法が対コンピュータ戦の相性が良くないことは、昨年の「第2回将棋電王戦」のときからプロ間では噂されていた。また、菅井五段は踏み込んで切り合う棋風だが、それも対コンピュータ戦ではリスクが高いと見られていた。
それでも「菅井五段ならば――」という期待感は当然あったが、結果は完敗。予想されていたリスクが、いずれも悪いほうに出てしまった形である。しかし、第2局の佐藤紳哉六段を始め、以降に登場する棋士はいずれも居飛車党だ。そして切り合うよりも、じっくりとした戦いでねじり合う棋風の持ち主ばかりである。
「居飛車でじっくりとした戦いになれば、プロ側に勝機はある」
関係者はそう期待して、第2局の開始を見守った。ただし、懸念される材料はほかにもあった。一時は第2局の開催すら危ぶまれた例の一件である。