日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)のクラウド部会は3月12日、品川のコクヨホールで「JAIPA CLOUD CONFERENCE 2014(Cloud Con 2014)」を開催。当日は各分野の有識者によるセッションが行われ、その締めくくりとなったのが「国産クラウド事業者のトップが語る『2014年のクラウド市場』」だ。

同セッションでは、さくらインターネット 代表取締役社長の田中邦裕氏がモデレーターを担当。パネリストとして、インターネットイニシアティブ プラットフォーム本部 本部長の立久井正和氏、NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部 ホスティングサービス部門 サービスマネジメント担当 担当部長の奥平進氏、GMOクラウド 代表取締役社長の青山満氏、ニフティ クラウド事業部 クラウド事業部長の上野貴也氏が登場した。"国産クラウド事業者のトップが語る"と銘打つだけに、そうそうたるメンバーが集ったといえる。

「国産クラウド事業者のトップが語る『2014年のクラウド市場』」の登壇者

クラウドだけで利益は出ているのか?

モデレーターを務めたさくらインターネット 代表取締役社長の田中邦裕氏

まずはパネリストとして参加している各社の簡単な事業紹介を行った後、田中氏からの質問を順番に答える方式でパネルディスカッションがスタートした。

田中氏からの最初のお題は、本セッションの前に行われたライトニングトークで印象に残ったこと。続いてTwitterのハッシュタグ「#cloudcon」で寄せられた、「いま、クラウドだけで飯は喰えていますか?」という質問。

これに対して立久井氏は「IaaSがメインですが、正直言って今は利益が出ていません。改めてIRを見直したら『今年度末には黒字化を期待』と、上手いこと書いてますね」と冗談交じりに語る。

たとえば、ある設備に投資して、利益が出たら次の投資を行う方法もある。しかし同社では、新しい設備や開発に投資をしなければ既存顧客も離れてしまうという考えから、常に投資を続けているそうだ。

「儲かるからやる、儲からないからやめるではなく、自分たちの存在価値を認識するためにやり続けます」と語った。

NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部 ホスティングサービス部門 サービスマネジメント担当 担当部長の奥平進氏

奥平氏は、「今年度の実績についてはまだ言えない状況ですが、パブリッククラウドサービス「Cloudn」はデータセンターやネットワーク機器といった設備関連はもちろん、契約書を省いた約款サービス、個別オーダーを一切受けないメニューベースだけのサービス提供、電話サポートの廃止など、徹底したコスト削減を行っています。来年度になれば、この場で皆さんに良いお話ができると思います」と、低コスト化による回収率の高さを語った。

青山氏は、「粗利ベースでは、1年前はとんとん、今はきちんと利益が出ています。ただ、販売管理費を含めるとまだ赤字なので、今年度末には黒字にしたいですね」と語る。

一方、現在はクラウド事業の比率が高まっているが、従来から取り組んでいるホスティング事業では、昔と比べて1人あたりの顧客単価が上がってきているのだという。これまでのレンタルサーバは5年経ってもあまり変わらなかったのに対し、最近は大半のユーザーが積極的にリソースを使い、ディスク容量やメモリを追加。今は利益が薄いものの事業としては確実な成長を実感しているそうだ。

ニフティ クラウド事業部 クラウド事業部長の上野貴也氏

上野氏は、「弊社の場合、ISPとWebサービス、そして自社内のインフラも含むクラウドという事業があります。自社サービスが非常に多いため、損益分岐点を比較的短期間で超えられるのが特徴です。実際に今年の初頭くらいから損益分岐点を超えてきました」と、ニフティならではの強みを語った。