こちらが高村氏の仕事机。初公開とのこと

――漫画というのは、一枚の絵でストーリーを内包した世界を描くイラストとは、また違った表現になりますが、苦労した事や楽しかった事はありますか?

イラストには感情は込められても、ストーリーに基づいた感情の流れはなかなか表現できませんし、漫画はイラストのようにモチーフで暗号のように曖昧に伝えるというより、言葉ではっきりと伝える必要があるなど、イラストと漫画はまったく別物だと思うので、それぞれ苦労も楽しみも違いますね。

――イラストと漫画、どちらが描いていて楽しいのでしょうか?

絵を追求するならイラストの方が慣れもあってやはり描きやすいのですが、漫画はイラストでは伝えきれない物語や感情が描けるので漫画も素敵だなぁと思うと、なかなか選べません。だからこそどちらにも挑戦したいと思ってしまいます。

――どちらもそれぞれの良さがあるということですね。では、画集に収録されている他の作品についてお聞きします。今回は『beatmania II DX』シリーズと『Zektbach』などの作品が収録されているのですが、それぞれの作品での気をつけて描いた部分や苦労した点などを教えていただけますか?

どちらも楽曲にそれぞれ世界観があるので、気を付けるというより楽曲を大切にどっぷり浸からせていただいて描いています。苦労とは少し違いますが、ムービーは作っているうちに次にやりたい課題点が自分の中で浮上してしまってキリがないのが難点でした。一人で時間内に作るには限りがあって、新しい挑戦はムービー一本につきひとつ程度にしていました。

――作品によって違いはあると思うのですが、1点仕上げるのにだいたいどれくらいの時間がかかるのでしょうか。

作品によりますが、イラストの場合は数時間で仕上がるものもあれば、何日もかけて描くものもあります。完成目前にわざと日を置いて数日後に改めて仕上げるなんてことも結構あります。……納期に余裕があるとき限定ですけれど。ムービーは本当にまちまちで1週間で作ることもあれば、2カ月かけたこともあります。

――なるほど(笑)。イラストを描く際は、構図などの完成図が浮かんでから描き始めるんですか? それともラフを何点か描きながら……というスタイルなのですか?

代表作のひとつ
『The Epic of Zektbach』のイラスト

イラストの依頼内容を伺ったら大体「こういうのにしようかな」というのはすぐに浮かぶので、それをすぐラフにして描き始めます。「これだ!」っていうのが出てこなくて「こんなのもいいなぁ、でもこういうのも描きたいなぁ」というときはラフを2~3点描いて選んでいただくこともあります。

――これらの作品はデジタルとアナログ、どちらで制作していますか?

イラストはデジタルで、Painterで描いています。

――なるほど。ではすべての作業はデジタルで行っているのですね?

いえ、時間のないときは最初からデジタルで始めることありますが、構図やキャラのラフは紙に描くことも多いです。マルマンクロッキーSS2にユニボールシグノ極細を使って描くのが気に入っています。画集にラフスケッチのページもあるのですが、そこに載っているラフはすべてこのクロッキー帳にこのペンで描いたものになります。……続きを読む