携帯電話をかざして買い物をする「おサイフケータイ」は、日本国内ではすっかり一般的になった。普通のサイフを忘れて出かけても、携帯さえあれば買い物もできるし電車にだって乗れて生活できてしまうのだから、もはや手放せないという人も多いだろう(私もそうだ)。

このおサイフケータイが海外でも利用できれば…… というのは誰しも思うこと。これまでは国内のおサイフケータイを、海外に持っていっても「おサイフ」としては使えなかった。それが、使えるようになった。今回、この「海外でおサイフケータイ」を体験しに、米国はハワイを訪問してみた。

ハワイでおサイフケータイが利用可能に!! さっそく使ってきた

iDを使って世界中でおサイフケータイ

国内のおサイフケータイには、iDやQUICPayといったポストペイ式のサービスと、SuicaやEdyといったプリペイド式のサービスとがある。これらのサービスを利用することで、スマートフォンなどでおサイフケータイが利用できるようになる。

おサイフケータイは、技術的には非接触ICチップの「FeliCa」を使っているが、海外の同種のサービスではNFC(TypeA/B)を使っており、互換性はない。ただ、最近のスマートフォンはNFC(TypeA/B)チップも搭載しているモデルがほとんどで、対応アプリをインストールしてサービスに登録すれば海外のサービスも利用できた。しかし、その場合は普段使っているおサイフケータイとは異なるサービスになってしまい、わざわざ新たなサービスを使わなければならなかった。

そうした中、NTTドコモが提供するケータイクレジットサービスの「iD」が、大手クレジットカードブランドのMasterCardと提携。同社が提供する非接触式の決済サービス「PayPass」対応レジでiDが利用できるようになったのだ。つまり、普段国内でiDを利用しているユーザーであれば、そのまま海外に行ってもおサイフケータイで支払いができるわけだ。対応するカードは現時点ではドコモのDCMXだけとなっている。すでにDCMXでiDを利用している人なら、簡単な設定だけで海外でも使えるようになる。

PayPass対応店舗は、2013年12月時点で世界約60カ国約160万カ所。iD対応店舗は、2013年8月時点で国内約50万カ所。つまり、世界中の約170万カ所でiDによる「おサイフケータイ」が利用できるようになるというわけだ(ちなみに国内にもPayPass対応店舗があるが、現時点ではそちらでは利用できない)。

ホノルルのiD/PayPass対応店舗に掲示されていた「iDが使えます」表示

ハワイでおサイフケータイ

このiDとMasterCard PayPassの連携は、2014年2月5日から本格的にサービスが開始される。それを前に、2013年12月からは米国・ハワイのホノルルにおいて開催された「JALホノルルマラソン2013」にあわせて先行サービスが開始され、同時に「iD/PayPass ハワイでおトク!キャンペーン」が2014年1月13日まで実施された。

この先行サービスでは、キャンペーンサイトからPayPass対応のiDアプリをダウンロードしてインストールし、アプリから海外利用設定を行うだけで、iD/PayPass対応店舗で日本と同じようにスマートフォンで支払いが可能。使い方も日本と同様、レジに設置されたリーダーにタッチするだけだ。

このキャンペーンサイトからは、1月31日までアプリをダウンロードできるので、それまでにダウンロードして設定しておけば、2月5日の本格サービス開始前に、ハワイでおサイフケータイを体験できる。2月5日以降は、通常のdメニューやGoogle PlayからPayPass対応iDアプリをダウンロードできるので、普段のようにアプリをアップデートして設定すれば、それでPayPassに対応できる。同時に本格サービスが開始されるので、ハワイ以外でもおサイフケータイが使えるようになる。

実際におサイフケータイを使ってみた

前述の通り、まずはキャンペーンサイトからPayPass対応iDアプリをダウンロードし、海外利用設定を行う必要がある。もちろん、DCMXに加入していて、iDが使えることが前提だ。また、ドコモの場合、NFC(TypeA/B)での決済を利用するためにはピンク色のドコモminiUIMカードに交換しておく必要があるので、この準備もしておく。こちらは、ドコモショップで対応してくれる。

アプリをインストールして起動したら、画面上部のクレジットカードが表示されているボタンの隣に「海外利用設定できます」と表示されたボタンが追加されているので、これをタッチ。設定画面になるので、暗証番号を入力して各設定を行う。先行サービスでは利用可能になるまで2日間ほど待つが、本格サービス開始後は即時利用可能になるとのこと。念のため、渡航前に設定しておくのがいいだろう。

画面イメージ。「海外利用設定できます」のボタンをタッチする

「PayPassを有効にする」ボタンが表示されるので、ここから設定を行う

有効になると、ボタンがPayPass表示になる。この状態になれば利用可能だ

設定は、実はこれだけ。あとは、実際にPayPass対応店舗に入って買い物をすればいい。海外のPayPass対応店舗では、クレジットカード用の読み取り機に非接触IC対応のリーダーが取り付けられている。だいたい「PayPass」の表記があるので、それを目印にすればいい。ハワイでは、一部の店舗で「iDの利用が可能」という掲示もあり、そういった場合には特に安心して利用できる。

利用する際には、「MasterCard PayPass」と言ってから読み取り部にタッチする。リーダーによっては「PayPass」ボタンがあるので、タッチの前にこれを押す。米国では、自分でクレジットカードを読み取り機にスライドさせて支払いを行うタイプの読み取り機があり、PayPassはこうした読み取り機に非接触ICのリーダーが付いている。そのため、「クレジットカードで支払う」と言ってからリーダーにタッチしても使えるようだが、「PayPassで支払う」ことを伝えた方が確実だろう。

これはMacy'sにある読み取り機。上部の赤い部分が非接触ICのリーダー

ここにタッチするだけ。ランプが光り、音が鳴るので、あとは店員がレシートを打ち出して支払いは終了

国内のおサイフケータイと同じく、支払った際にも特に画面上に変化はない。ちなみに、iDアプリを表示しているが、実際はアプリを起動していなくても、画面がオフの状態でも利用できる

ただ、たまに「PayPass」自体が通じない店もあった。日本とは異なり、まだ非接触タイプの支払いが一般的ではないからだろう。しかも「スマートフォンで支払う」と言うと、さらに通じないことがあった。この辺りは、おサイフケータイが一般的になっている国内とは違う感覚だが、当初の日本もそうだったので、すぐに通じるようになるだろう。今回試した限りは、店員の誰かしらは「PayPass」や「スマートフォンで支払い」のことを知っている人がいて、最終的には問題なく支払いができた。

試した店舗の一部では、店員が「初めて使われたよ」と言っていたので、まだまだ現地での利用度はそれほど高くなさそう。ただ、なんといっても日本人に人気のハワイ。本格サービス開始後は、多くの日本人観光客が使い、すぐに知れ渡るだろうから、店員の戸惑いもすぐになくなるだろう。

サーフ系を始めとしたスポーツファッションのZumiez(左)と同店舗の読み取り機。中央の青いボタンでカードを選択するので、まずPayPassボタン(左端)を押してからディスプレイの辺りにタッチする

シェラトンワイキキホテル内にあるThe Cookie Corner

こちらはクッキーショップThe Cookie Cornerの読み取り機。ディスプレイ付近にタッチした後、ゆっくりと下にスライドさせるよう指示されたので、そのようにしたところ、認識された

今回筆者は複数店舗で試したが、PayPassでの支払いが店員に通じれば、あとはスマートフォンをタッチするだけと簡単。今回は特にサインも暗証番号の入力も不要だったが、仮に必要な場合は、通常通り操作をすればいい。いちいちサイフを取り出してクレジットカードを取り出してカードを端末にスライドさせて…… といった操作よりもはるかにスマート。おサイフケータイを頻繁に使っていて、普段からあまりサイフは取り出さないため、それと変わらない感覚で海外でも買い物ができるのは嬉しい限りだ。

最後に人気のスムージー屋「JumbaJuice」でもおサイフケータイにチャレンジ。中央の写真のリーダーにタッチするだけ。実に簡単

ホノルルではマクドナルド、ドラッグストアのLongs Drugs、靴屋のFoot Lockerをはじめ、さまざまなショップがPayPassに対応している。2月5日以降の本格サービスでは、こうした店舗でiDを使った支払いができるようになるはずで、さらに利便性が向上する。

日本での使い勝手をそのままに、海外でもおサイフケータイが使えるiDの新サービス。試してみると国内と変わらない快適さで、おサイフケータイのユーザーならぜひ体験してみて欲しい。なおサービスの詳細は、iDサイト内のiD/PayPass紹介ページで確認できる。