企業を引っ張るCEOは楽な仕事ではない。知識や頭脳だけではなく、時として勘も要求される向き・不向きのある職種と言えるだろう。

特に大企業のCEOには大きな責任が伴い、社員や株主、さらにはマスコミと、各方面から常にプレッシャーを受けている。ビジネススクールの研究者、米ダートマス大学の経営学大学院Tuck School of Businessの学部長Sydney Finkelstein氏がCEOとして最も高く評価できる人5人と評価の低い人5人のリストを発表した。

まずはベストCEOから見てみよう。Finkelstein氏によると、ベストCEOを選ぶにあたって、以下の2点を指標にしたという。

  • 株価、キャッシュフロー、市場シェアなどの財務指標からみて業績が大きく改善しているか

  • 会社の成功はCEOの功績とみなすことができるか(戦略変換が正しかったなど)

その結果、トップに輝いたのはAmazonのJeff Bezos氏だ。Bezos氏のイノベーションの方式は「途切れのなさ」とする。書籍の販売にはじまり、電子書籍「Kindle」、有料サービス「Amazon Prime」、オリジナルコンテンツの生成、パブリッククラウドのデフォルトになりつつあるクラウド事業。

これらを総評して「Amazonはユビキタスになった」とし、失敗を恐れないBezos氏の姿勢を評価した。起業家であり、非情な競合好き、McKinsey的な執行へのフォーカスの3つを併せ持つ比類なきビジネスリーダーという。

続いて2位に選ばれたのは日本が誇るトヨタ自動車のCEO、豊田 章男氏だ。米国で2009年頃に持ち上がった大規模リコール問題などの危機を乗り切り、信頼性があり無難な車を作るのではなく、人々が好きと思うエキサイティングな車を製造したと評価している。

また、組織をスリムにしたことや、北米と南米担当に米国人を起用したこと、ボトムアップではなく迅速で柔軟性のある意思決定による舵取りなども高得点につながったようだ。

3位は中国TencentのPony Ma氏、4位はMichael KorsのJohn Idol氏、5位はNetflixのReed Hastings氏が選ばれている。

一方で、ワーストCEOはどのような面々が並んでいるのだろうか。選出にあたっては以下のポイントをみたという。

  • その会社が苦境にあるか、苦境にひんするリスクにあるか、業績が急降下したか

  • 間違っていると知っている/知っているべきなのに正しいステップをとることができなかった責任があるか

  • とった行動、あるいは行動をとらなかったことが企業のガバナンスなどに大きな悪影響を与えたか

1位はブラジルEBXグループのEike Batista氏、2位は元Apple幹部でJ.C.PenneyのRon Johnson氏(2013年4月退任)、3位はBlackBerryのThorsten Heins氏(2013年11月退任)、4位はSears HoldingsのEddie Lampert氏、5位はMicrosoftのSteve Ballmer氏(2014年に退任予定を発表している)。

日本に馴染みが薄い企業のCEOが並ぶ中、MicrosoftのSteve Ballmer氏については知っているという読者は多いのではないだろうか。

5位のBallmer氏については、年に200億ドルの収益を挙げていることを評価しつつも、そのほとんどを「Windows OS」と「Office」が占めていることに触れる。

「iPod」対抗として登場した「Zune」や「iPhone」「Android」対抗の「Windows Phone」、「Google」対抗の「Bing」と、カテゴリリーダーを追いかける立場が続いていることも指摘し「次々と市場のシフトを逃した」と手厳しい評価をしている。