2010年にTeridian Semiconductorを買収し、同社が開発・製造していたエネルギー関連向け半導体技術を取得しスマートメーター関連SoCの提供を本格的に開始したMaxim Integrated。北南米、欧州、アジアの主要各国と幅広くビジネスを手掛ける現在のビジネスの動向、ならびに今後のスマートメーターに求められる技術などを、同社のアジア・太平洋地域のシニアビジネスマネージャーであるAndy Wang氏に話を聞いた。

すでにスマートメーターとされる機器は世界各所にて用いられるようになっているが、その多くが、アナログフロントエンド(AFE)、メーター処理用プロセッサ、スタック/アプリケーション用マイコン、通信トランシーバなどの個別部品を組み合わせて作られてきた。また、近年、本格的なスマートメーターの普及により、通信のセキュア性を担保するセキュリティコプロセッサも搭載されるようになり部品点数が増大してきたことから、SoC化による部品点数の削減が求められるようになってきた。同社でもAFE、メーター各種の処理、セキュリティなどを1チップ化したSoCと通信トランシーバをセットにしたプラットフォームとして提供し、そうしたニーズに対応を図っている。

「こうしたプラットフォームの活用により、従来4チップ構成だったものを2チップ構成にできるほか、シャント抵抗を利用できるため、さらにコストダウンを図ることも可能だ」と自社のメリットを同氏は説明する。また、その精度もダイナミックレンジ10000:1にわたり0.1%の精度を実現しつつ、楕円曲線暗号、AES、WELMEC、セキュアブートローディングといった複数レイヤにおけるセキュリティをサポートし、PRIME、G3-PLC、GPRSなどの各種スマートメーター向け通信規格に対応する次世代のフラッグシップスマートメーター向けリファレンスプラットフォーム「Capistrano」の提供も進めている。

「我々の考え方は、一度スマートメーター製品を設計した後は、地域などに応じて柔軟に設計資産を再利用したシステムを構築できる手助けをすること。エンジニアリソースに限りがあるため、一からの作り直しをしたくないというのが企業の本音。また、短期間で市場に機器を投入したいというニーズもあり、そうしたニーズをこのプラットフォームを活用することで、実現することができるようになる」(同)とする。

Capistranoを用いたデモ。左がメーター1、右がメーター2、中央がコンセントレータ。コミュニケーションポートを2つ持ち、片方をAルート用ポート、もう片方をBルート用ポートといった使い方が可能。デモではそれぞれ独立に動かし、ブラウザ上でどの程度電力を使用していたか、といったことをチェックしたりできる様子が見て取れた。また、IPv6に対応しており、アドレスを割り振ることで、遠隔地のブラウザ上から電力料金未払い者に対する電源供給オフなどの設定を行うことが可能。また、メーターの電力監視タイミングは任意のタイミングで設定することも可能なほか、センサも3入力が可能なため、それぞれ専用用途で動かしたり、メーターを取り外そうとした際にアラームを発したりといった仕組みを搭載することも可能

現在、世界的なスマートグリッドにおけるトレンドとしては、いかに家電製品や産業機器などにインテリジェント性を持たせるかという点がある。リアルタイムでエネルギー消費を監視することができるようになれば、従来以上に効率よくエネルギーを活用することが可能になるためだ。同社としては日本でもCルート(第三者経由で電力情報を受け取るルート)が今後重要になってくると見ており、現在、同ルート向けデバイスの開発を進めている段階にあるという。

また、プラグやスイッチなどに手がるに搭載できる絶縁型計測サブシステム「Sonoma」の提供を2013年初頭より開始している。ダイナミックレンジ2000:1で1.0%の精度を実現しつつ、抵抗式センサ、ガルバニック絶縁、不揮発性メモリおよび特定アプリケーション向けファームウェアを備え、通信モジュールやヒューマンインタフェース用に求められる複数の電源または絶縁方式を代替することを目的に開発された。出荷時に較正済みなため、システム内での較正コストなしに高精度のAC計測を可能としているほか、カレントトランス(CT)の代わりにシャント抵抗を使用することができるため、システムの基板サイズを小さくすることも可能だ。

絶縁型計測サブシステム「sonoma」

今後のニーズとしては、さらなる機能の統合が求められることになるだろうが、カスタマ側のニーズが固まっていないのが実情だ、と説明する。ただし、同社は暗号通信などに対する強いIPを保有していることから、そうしたIPを活用してもらうソリューションが提供されていくことに代わりはないという。また、通信まで1チップしたらさらに基板サイズを小さくできるのではないか、という質問をしてみたところ、「国や地域で必要とされるニーズが異なり、そこまで統合してしまうとかえってフレキシビリティが損なわれてしまう」とのことで、この部分はオープンにやっていくとしており、当面はオープンな部分とクローズの部分をうまく組み合わせたソリューションとして提供していくことで、カスタマの製品投入ニーズに柔軟に対応を図っていく予定としていた。