――蘭を演じはじめてからおよそ18年が経ちますが、演じているうちに何か変わってきたところはありますか?

山崎「すごく長く続いている作品ですが、実は時間的にはほとんど流れてない。新一がいなくなってから、まだ半年ぐらいしか経っていないという設定なんですよね。本来、新一と一緒の期間のほうが断然長くて、コナン君とはたかだか半年くらいのはずなんですけど、それが実際には逆転してしまっているので、そのあたりの関係性には注意しています。たまに新一も出てきてくれるんですけど、そのときに本来の感覚に戻すのがちょっと大変です」

――すごく久しぶりのようで、実は全然久しぶりじゃない(笑)

山崎「そうなんですよ。だから、自分の立ち位置をしっかりと頭に入れておかないと、話がおかしくなってしまうんです。まあ、これは長く続く作品の宿命ですよね。常に最初の気持ちを忘れないようにしています。実際、アニメが始まった頃は携帯もそこまで普及していなくて、ポケベルが証拠になるようなトリックもありましたしね……。やはり、トリックに主眼が置かれてしまうと、どうしてもキャラクターがおざなりになってしまいがちなんですけど、元々『名探偵コナン』が面白かったのは、犯罪が起こるんだけど、どこか人間的な温かさや人間ドラマに魅力があったからだと思うんですよ。ただのパズルのような謎解きだとつまらないじゃないですか。だからそのあたりはちゃんと作っていかないとなって思っています」

――そこはかなり難しいですが、やはり大切なところですよね

山崎「あと、あまりにも殺人事件に遭いすぎているんですけど、それに慣れちゃいけないなって思っています。描かれ方の問題もありますが、蘭は探偵ではなく、あくまでも一般の女子高生なんですよ。だから、そのあたりの感覚は絶対に忘れちゃいけないと思っています」

――その意味では、新一役の山口勝平さんのほうが大変なのかもしれません

山崎「たまに収録に来ると、『新一ぽかった?』って聞いてくるんですけど、自分なんだから自信持てって(笑)。実際、(高山)みなみさんと相談しながらやってます。勝平さんは、『怪盗キッド』役もやってますから、そこの差別化も大変そうです」

――時間軸で苦労するのはやはり長く続く作品の宿命ですね

山崎「そういう意味では、映画があるおかげで、感情の流れがうまく作れている気がしますね。TVシリーズはどうしても事件の解決はメインになってしまいますが、映画だとそれ以外の部分も描けますし、観ている方もうまく感情移入ができるのではないでしょうか?」

――映画といえば、現在『ルパン三世』とのコラボ作品が上映中ですが、最初にテレビ特番でやったときはいかがでしたか?

山崎「最初に話を聞いたときは、本当にできるのかなって思いました(笑)。まず絵柄が全然違うじゃないですか。だから、同じ絵の中に納まったとき、どんなバランスになるんだろうって。でも意外と違和感がなくてビックリしました」

――アフレコ現場の様子もいつもと違う感じですか?

山崎「今回の映画に関しては、みんなのスケジュールがあわず、バラバラの収録になってしまったのがちょっと残念でした。テレビのときはまだ、『ルパン三世』のキャストが変わる前だったんですけど、やっぱり楽しかったですよ。新鮮な気持ちになりました」