10月26日封切られた映画『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』は、公開3週目を終えた11月15日の時点で累計観客動員数100万人を突破。興行成績ランキングでも上位に留まっており、この勢いはまだ続きそうだ。

『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』より

『魔法少女まどか☆マギカ』は不思議な作品だ。キャラクターデザインがほんの少し違うタッチだったら。魔女や結界の表現が別の形になっていたら。たぶん、作品の与える印象は全く違っていただろう。キラキラして、危うくて、でも可愛くて、目が離せない、そうした微妙なバランスで作られた緊張感の上に、『魔法少女まどか☆マギカ』という作品はある。

キャラクターの激しい感情と、それを「ワケガワカラナイ」と言う論理。ファンは両方の間に立たされ、大きく揺さぶられた時、否応なくそこへ巻き込まれる。作品やキャラクターに対して当事者意識を感じることは、熱心なアニメファンにとって珍しいことではないが、『魔法少女まどか☆マギカ』はどうもその閾値が低いのではないか。反面、作品を理解するハードルは低くないが、ファンはそれを乗り越える労力を厭わない。

TVシリーズの衝撃からさらに二歩三歩先へ行く物語、新しい表現と圧倒的なクオリティが積層した映像。どんな力がここまでの勢いを産んだのか。作品誕生のキーパーソン・岩上敦宏プロデューサーにお話を伺った。

魔法少女の"譲れない戦い"

――本作における岩上プロデューサーのお仕事はどのようなものだったのでしょうか?

岩上氏:『魔法少女まどか☆マギカ』でいえば、監督と脚本家とキャラクターデザイナーに声をかけ、この作品をつくりましょうと最初に旗を振った人ではあります。でも、逆に言うとそれ以外はやっていないかもしれません(笑)。

――以前、魔法少女とロボットものがアニメーションの面白さを最も活かせるとお考えである、と話していらっしゃいました。

岩上氏:ビジュアル的にもいいじゃないですか。アニメオリジナルを手がけるならその2つのどちらかをやりたいと思っていました。

――『魔法少女まどか☆マギカ』は、かわいいだけで終わらせたくないという意図があっての作品だったのでしょうか?

岩上氏:魔法少女というジャンルに対するアンチテーゼという意味で始めたわけではありませんでした。ただ純粋に、虚淵さんが『Fate/Zero』で描かれたような、登場人物たちがそれぞれにいろいろなストーリーを背負っていて、譲れない戦いがあって……という世界を魔法少女でやったら面白そうだなと思っていました。