Tizenの開発者サミット「Tizen Developer Summit Korea 2013」が11月11日と12日に韓国・ソウルの「ザ・リッツ・カールトン ソウル」で行われた。このサミットはTizen開発者だけではなく、アプリケーション開発者やハードウェアベンダーなどTizenに携わる全ての開発者のために開催されており、Tizenカンファレンスとしては3回目、アジアでは初めての開催となった。

サミットではTizen端末の発売時期についてなんらかの発表が行われると期待されていたが、正式な発表は行われなかった。しかし、地元紙の話ではTizen端末は2014年第1四半期中に発売されるとのことで、2月末にスペインで行われる世界最大級の携帯電話関連展示会MWC(Mobile World Conference)辺りまでにはなんらかの発表が行われる可能性がある。

続けて、Tizen OSの進捗状況であるが、まず最新バージョンのTizen 2.2.1が12日にリリースされた。次期バージョンのTizen 3.0については2014年第3四半期にパブリックリリースする予定となっており、こちらは先日、日本で行われたインテル ソフトウェア・イノベーション・フォーラム2013の発表内容から時期が少しズレている。

Tizen 3.0で実装される機能としては、「64bit CPUのサポート」や「マルチユーザー対応」「3D UI Framework」「ダイナミック・アニメーションライブラリ」「Waylandベース表示フレームワークの利用」「Crosswalkプロジェクトによる新規のHTML5ランタイム」などが挙げられる。

Tizen OSのロードマップ

Tizen 3.0の実装される機能

3D UIのフレームワーク提供も

ほかにも新たなHTML5ランタイムなどが提供される

64bit CPUのサポートは、若干の性能向上のほか、メモリ空間が拡張され、3GB以上のRAMメモリを取り扱うことができるようになる。現在、高価格帯のスマートフォンは2GB搭載のものが多いが、Tizen 3.0ではそのような性能レンジの端末の登場も期待される。なお、64bit CPUはARMとIntel双方のCPUに対応するため、Tizenを推進するIntelのCPUを搭載した端末がより登場しやすい環境になったとも言えるだろう。

マルチユーザー対応は、Androidが4.2 Jellybeanで対応したOSの基本機能であり、こういった面でも着実に機能をキャッチアップしている。特に様々な機器にプロファイルを分けて提供するTizenは、生活家電などユーザーに応じた使い勝手を提供する場面が今後多くなると思われる。そのため、このような機能を搭載することは、ある意味当然の結果だろう。

ほかにも細かいチューニングにより、マルチメディア再生周りの機能アップを行ったほか、「ファイル暗号化」や「スクリーン録画機能」「ストリーミングの高画質化」なども行われる。

Tizen自体の高機能化だけではなく、開発者側のツールもプラットフォームを育てるためには重要な要素だ。SDKについても様々な機能が追加されるといい、「Open NFSシミュレータ」や「WebベースUI構築ツール」「仮想グラフィクスシステム」「シングルサインオン」が主な追加要素として挙げられていた。こういった開発者支援については、TizenのWebサイト上や、インテルの開催する開発者向けセミナーで引き続き情報を発信するとしている。

Tizen 3.0 以外に低価格帯を狙ったTizen-Liteも提供

Tizen 3.0により、高機能化だけに目を向けがちになるが、成長市場であるミッドレンジ~ローエンドスマートフォンをカバーしなければ、モバイルOSの覇権戦争で勝ち残ることはできない。同サミットの中ではメインストリームのTizen 3.0以外にも「Tizen-Lite」を提供するという話も流れていた。

どの時点でリリースされるか公表されていないものの、ハードウェアの必須要件が緩和され、通常512MBのRAMメモリが256MBに、1GBのROMストレージが512MBに、HDやWVGA解像度のディスプレイがHVGA~QVGA程度に抑えられている。こちらは日本市場への投入はないものの、プラットフォーム全体の展望を考えると非常に良い戦略ではないだろうか。

また、スマートフォンではないものの、サミット内ではすでにサムスンが「NX300M」というTizen OSを搭載したカメラ製品を発表した。NX300MはTizen 1.0を搭載しており、2000万画素のCMOSセンサーを搭載している。会場では"Company A"と称した「NEX-5R」とのスペック比較を行っており、連写性能や起動時間が勝っていることをアピール。Tizenが製品の性能を最大限に引き出せるOSであると高らかに宣言していた。

チョイVPはほかにも「Tizenスマートフォンを発表後、TizenベースのスマートTVも提供する予定」とも語っている。

NX300M

競合製品とされるNEX-5Rよりも高速起動/連写が可能

キーノートや個別発表とは別に「Info Pod」の展示スペースでは20社以上のTizenパートナーがTizen 開発ツールやアプリ、Web サービス、IVIプラットフォームに関する展示を行っていた。

アプリコンテストの開催も

36企業が新たにTizen Associationのメンバーに

フランスの携帯キャリア「Orange」が開発したTizenアプリも公開されていた

冒頭の通り、今回のサミットではTizen端末の発売時期についての発表は無かった。次期バージョンのリリースやTizen-Liteの存在が明らかにされた今、Tizen OS搭載端末の正式発表が待たれることだろう。