11月23日から東京ビッグサイトで開催中の「東京モーターショー2013」は連日大盛況の模様。訪れたアニメファンの間では、三菱自動車ブースの『ガールズ&パンツァー』とのARコラボが話題を呼んでいるが、もうひとつ、忘れちゃいけないところがある。

Hiriko.jp「みらいプロジェクト」ブース

メカニックデザイナーの大河原邦男氏がデザインした、ロボットに変形する超小型EV(電気自動車)を出展している、Hiriko.jpブースの新潟発「みらいプロジェクト」だ。

これが大河原邦男氏デザインの超小型EVだ!

大河原氏といえば、『機動戦士ガンダム』のモビルスーツをはじめ、『装甲騎兵ボトムズ』『蒼き流星SPTレイズナー』などなど、数々のサンライズ作品でデザインを担当し、リアルロボットアニメのブームを巻き起こした立役者。一方で「タイムボカンシリーズ」や「勇者シリーズ」なども手がけ、コミカル系でもヒーロー系でも、メカならなんでもござれの巨匠だ。その大河原氏のデザインが、アニメやプラモの世界から、いよいよ現実の世界へ進出! という訳だ。

さらに、マレーシア人の両親を持つイギリス出身のクール・ジャパン発信者、カルチャー・ジャパン代表取締役のダニー・チュー氏もプロジェクトに参加。彼の生み出した美少女キャラ「末永みらい」のアニメに大河原氏デザインの可変EVを登場させ、新潟から世界へ売り込んでいくという。

そんなこんなで要注目のこのプロジェクト。ブースの展示紹介に、トークショーの様子やHiriko.jp提供の貴重な資料画像もまじえてレポートをお届けしたい。

アニメチックに異彩を放つHiriko.jp「みらいプロジェクト」ブース

今回のモーターショーは東京ビッグサイトの東西全ホールを使って開催されているが、そのうち西4ホールは「SMART MOBILITY CITY 2013 ~KURUMA NETWORKING …くらしに、社会に、つながるクルマたち」というゾーンに設定。新世代の「超小型モビリティ」や「パーソナルモビリティ」の体験コーナーを中心に、大小さまざまなメーカーのEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)のブースが集まっている。

西4ホールは「SMART MOBILITY CITY 2013」のゾーン。中央には超小型EV試乗コーナーが

アニメチックに異彩を放つHiriko.jpブース

Hiriko.jpブースがあるのは、このゾーン内のブース番号"SMC09"の位置。ガンダムやボトムズなど大河原氏の代表作と末永みらいをフィーチャーした空間に、噂の大河原EVがででんと陣取り、小さなスペースながらも大いに来場者の注目を集めている。

大河原氏デザインEVの1/1モックアップ全体像

いわゆるサイドビュー。ブースいっぱいに展示

リアビュー。青い平面部分はディスプレイを搭載する想定。デジタル・サイネージや、後続車へのメッセージ表示に使用する

正式名称は未定だが、ナンバープレートにはどこかで見たような書体で「AEN-001」の表記が? Nは新潟のNだとか。ステッカーにも注目

スペインの「Hiriko」をベースに、ロボモードへ三段変形する超小型EVが誕生!?

そもそも「Hiriko」とは、米マサチューセッツ工科大学とスペイン・バスク自治州のHiriko Partners Consortiumが共同開発した、都市内移動用の2人乗り小型EVのこと。インホイールモーターの搭載により、その場で360°旋回が可能なばかりか、車体を折りたたむことで駐車時のさらなる省スペース化を実現したのが特徴だ。

ブース内のディスプレイでは、元祖Hirikoのビデオも上映。前面がオープンして搭乗するスタイルは今回の大河原デザインにも踏襲されている

Hirikoのコンセプト解説パネル。カフェを拠点としたカーシェアリングをはじめ、走行による各種データの集積・利用も想定されている

「Hiriko」ビデオクリップ。YouTubeチャンネル"TechnologicVehicles"より

「みらいプロジェクト」は、この元祖Hirikoのコンセプトをベースに、新潟県の支援を受け、独自の日本版EVを開発する計画。いわば "Hiriko 新潟モデル" の開発プロジェクトだ。その仕様は、軽自動車と原付自動車の間の新カテゴリとして今年から国土交通省が認定制度をスタートさせた「超小型モビリティ」のレギュレーションに合致させるという。

しかし、ただ走るだけでは面白くない。 "若者のクルマ離れ" が嘆かれる中、日本ならではのキャラクター性を持った、今までにないモビリティを誕生させようという野望(?)がそこにはあった!

実は新潟は、高橋留美子、しげの秀一、小畑健など、多数の有名マンガ家を輩出してきた土地柄。そんな背景もあって、アニメやマンガのコンテンツ、キャラクターをからめたメディアミックス展開を構想し、大河原氏やダニー氏にプロジェクトへの参加を要請したという。

かくして大河原氏が提案したのが、ロボットに変形する超小型EVのデザイン。ロボットといっても、ガンダムのような二足歩行のヒト型ではないが、『ヤッターマン』のヤッターワンのような車輪移動を基本とした、いわば "ロボ・ビークル" へのチェンジが想定されているのだ。

ブースの柱にあしらわれた、大河原氏によるデザインスケッチ群

初期アイデアスケッチ

今回のモックアップ決定案に近い走行モードのスケッチ。傍らに書かれた「mirai」は仮名?

ロボモードのスケッチ。決定案以上にロボットらしい印象

通常の走行モードから、車体中央を軸に四輪が脚のようになって車体を持ち上げ、左右両腕にあたるマニピュレーターも展開。それだけでも実現すれば画期的だが、このガウォーク的な形態からコックピットを前傾させることで、よりロボットらしいフォルムに。シンプルな機構ながらも、各モードでしっかり印象が変わる三段変形のデザインは、さすが巨匠の仕事だ。

通常の走行モード。今回出展された1/1モックアップの状態

ホイール部を立てた四脚モード

運転席全体を前傾させた降着モード兼ロボモード

各モードが一堂に! の図。中央が走行モード。左側がロボモード、右側が四脚モードで、両端がマニピュレータを展開した状態

ロボモードでは、キャノピー上部(カメラ内蔵の予定)が頭部に。これだけでロボットらしい印象に