ウルトラマンは、1966年の放送開始から45年以上に渡って愛されている、日本を代表する特撮作品シリーズだ。今年の9月にはギネス世界記録「最も派生テレビシリーズが作られたテレビ番組」として認定されるなど、現在まで数多くの作品が作られてきた。いつの時代も子どもの憧れのヒーローとして存在し、大人になっても魅了し続けるウルトラマン。

数多の作品群の中から、今回は「M78星雲」、「ウルトラ兄弟」といったその後のウルトラマンシリーズの世界観を定着させた第2期ウルトラマンシリーズ(1971年~1975年)を取り上げて紹介する。昭和ウルトラマンシリーズの中でもバラエティに富みつつ、鋭いメッセージも内包するストーリーとしてコアなファンを魅了するその理由をひも解いていこう。

(写真左より)「帰ってきたウルトラマン」(ウルトラマンジャック)、「ウルトラマンA」、「ウルトラマンタロウ」、「ウルトラマンレオ」 (C)円谷プロ

シリーズ史上最もアナーキーなウルトラマン

ウルトラマンの基本的なストーリーは、怪獣や宇宙人によって起こされる災害や超常現象を科学特捜隊とM78星雲光の国の宇宙警備隊員であるウルトラマンの活躍を描くというもの。

円谷プロが制作した第1期ウルトラマンシリーズ(1966年~1967年)では、戦争や政治的な問題までも取り扱い、高い文明を作ってきた人間を批判するようなテーマがストーリーに取り入れられてきた。その2年半後に放映を開始した第2期ウルトラマンシリーズ「帰ってきたウルトラマン」「ウルトラマンA」「ウルトラマンタロウ」「ウルトラマンレオ」では、いわゆる絶対悪との戦いの中に人間の醜さ、愚かさをあぶり出して視聴者の価値観を問いただし、希望や理想の模索を呼び掛けるような人生哲学的なテーマが描かれている。

例えば、「帰ってきたウルトラマン」(1971年~1972年)第33話「怪獣使いと少年」では友好的な宇宙人を一般の市民が侵略者と偏見視して虐殺するという、これまで常に被害者だった人間たちが、醜い加害者として描かれている。また、「ウルトラマンA」の第3話「燃えろ!超獣地獄」では、子どもに化けて村の人々を騙す異次元人ヤプールが言い放った「子どもが純真だと思っているのは人間だけだ!」という子ども向け番組にはありえない真理を突いた強烈なセリフが飛び出す。その背景には、「文部省が推薦するようなドラマは作らない」という当時のプロデューサー橋本洋二氏の方針があったそうだ。

放映開始時は、60年安保闘争の反体制の空気が残っていた時代。子どもたちが観たがるウルトラマンが怪獣をやっつける単純明快な活劇路線に終始せず、大人たちの固定観念や古い価値観を破壊しようとする反骨精神が第2期ウルトラマンシリーズの独特の物語を作り上げているのかもしれない。

帰ってきたウルトラマン(ウルトラマンジャック) (C)円谷プロ ウルトラマンA (C)円谷プロ