Amazonが日本でサービスを開始して13年。その間、日本の書店店舗数は約3割、6000店舗も減少した。地方の書店が次々とシャッターを下ろしていくなか、右肩上がりに売上を伸ばしているのがジュンク堂だ。Amazonの売上ランキングはゲームの攻略本やコミック、雑誌が目を引くが、丸善&ジュンク堂のネットストアの売れ筋はビジネス書や小説、新書である。忙しいはずのサラリーマンがあえて丸善ジュンク堂で本を買う理由はどこにあるのか。ジュンク堂のインターネット事業を一手に担う株式会社HONの代表、工藤淳也氏にその秘訣をインタビューした。

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“編集された書架”でビジネスマンに支持される丸善ジュンク堂

丸善ジュンク堂がビジネスマンに支持される秘訣は、徹底した売り場管理にある。丸善ジュンク堂は書架ごとに担当者が決まっており、本の配置や並びは担当者が自分で決める。毎年7万点以上の新刊が出るなか、「ぱっと見てわかりやすい書棚」を実現させるにはその棚専任のスタッフに任せるのが一番という考えからだ。また、店舗入り口にショッピングカートを置くのも丸善ジュンク堂ならではの工夫。こうした独自の施策を行うことで順調に業績を伸ばしている。

だが、工藤氏は危機感をつのらせてきた。「自社の売上は順調に伸びていましたが、書店業界としては閉店数が激増しています。それにともないAmazonに対する危機感も増していったのです。ですがAmazonの台頭は脅威であると同時に“本のECサイト”の成功事例でもありました。実はジュンク堂も2000年頃からネットサービスを展開していましたが、カート機能はなくて、本の検索ができるくらいで。電話やメールで本の注文を受けて、お届けして……要はネットサービスというよりも書店への連絡手段がふえただけのものでした。書店業界が打ち出すサービスについて、お客様が期待していることは何だろうか。そこからネットストアの存在意義を再検討して、“在庫がわかるネットストア”を実現したいと考えたんです」(工藤氏)。

リアルタイム在庫表示で「O2O」。問題は各店舗をつなぐ巨大システム

この“在庫がわかるネットストア”について検討したときに、工藤氏はあることに気づいたという。「ジュンク堂書店は、北は北海道旭川から南は沖縄那覇まで全国に100店舗あり、各店舗の倉庫や書架を含めればトータル2万㎡を超える巨大な倉庫になります。しかもリアル店舗では絶版になった本が書架に眠っていることがあります。Amazonの場合、こうした希少価値の高い本は高値になりやすいですが、リアル店舗ならば定価のままです」(工藤氏)。

お客様に素早く届けるために日本全国の店舗を倉庫にするというアイデアはさらに発展した。各店舗の在庫数をシステムで統合管理しネットストアに表示するということは、各店舗にどの本が何冊あるかをもリアルタイムでお客様にお知らせできるのではないか。リアルタイム表示が実現できれば、「店舗に本がある=すぐに購入できる」という強みを最大限に発揮できるサービスとなる。しかし、店舗同士をつなぐ巨大ネットインフラを作り、在庫検索においていろいろな店舗(倉庫)を引き当てさせるという仕組みを構築するには既存のシステムでは不可能だった。

「いざ巨大インフラを作ろうとすると予算の問題が出てきました。そんな折にエスキュービズムさんのEC-Orangeというパッケージを知りました。パッケージ自体にブランド性があり、成功事例も多く安心感がありましたね。膨大な予算を確保していたわけではなかったのですが、できあがってきたMARUZEN&JUNKUDOネットストアのシステムは自信を持ってお客様にお勧めできるものになりました」(工藤氏)。

MARUZEN&JUNKUDOネットストアは、店舗取り置きが便利と好評。2クリックで予約でき、外回りや帰宅時に確実に受け取れる仕組みが高い評価を得ている。「MARUZEN&JUNKUDOネットストアの仕組みは、丸善ジュンク堂書店だけでなくほかの多くの書店様にもご利用いただけるインフラとなるポテンシャルを秘めています。お客様が自分の家に近い書店で取り置きサービスを利用できるような、そんな書店インフラの未来を思い描いています」と工藤氏は語った。

このO2Oのビジネスモデル構築のために工藤氏は何を考え、どのような工夫を施したのか。10月24日(木)に開催される「実践企業トップが語るO2O最前線セミナー」において、工藤氏の口から詳しく語られる。興味を持った方はぜひ参加してみてはいかがだろうか。