企業が手に入れることのできるデータを分析して上手に活用できれば、コストダウンや売上げアップなど企業を変革するほどのインパクトが期待できる。しかし、いくら高価な分析ソフトを購入したり、分析スキルの高い人間を集めたりしたところで、それだけではビジネスに結果をもたらすことは不可能だ。それでは、“分析力”を武器にできるような企業はどこが違うのだろうか──。その回答を得るべく、大阪ガスのビジネスアナリシスセンター所長、河本薫氏に、同社のデータ分析活用の取り組みと、データを分析する人材に求められる資質などについて話を聞いた。
大阪ガスの河本 薫氏が講演を行う「なぜ、これからは『リアルタイム・ビッグデータ』なのか?~ビッグデータは新たなフェースへ」の申し込みはこちら(参加費無料、9月27日金曜日開催、東京・竹橋) |
大阪ガスが誇るデータのプロ集団「ビジネスアナリシスセンター」
大阪ガス株式会社 ビジネスアナリシスセンター 所長 河本 薫氏 |
“データ分析+ビジネス活用”のプロフェッショナルである「データサイエンティスト」を育成し、データ分析の専門組織としてビジネスアナリシスセンターを運用している大阪ガス。現在、ビジネスアナリシスセンターには9人のデータサイエンティストが所属し、年間約30ものデータ分析プロジェクトを推進、大小合わせて100近い分析ソリューションを提供している。同センターの使命は、ビジネス現場からビジネスに役立つ分析課題を発掘し、ビジネスを意識したデータ分析を行い、そして実際にビジネスに役立つまで現場を支援しながら結果を見届けることだ。
大阪ガスのビジネスアナリシスセンターは独立採算制で運用されている。提供したサービスの内容に応じた対価を各ユーザー部門に請求しているのだ。そうすることで、データ分析を委託する側にも責任感が芽生えるし、データを分析する側も、最終的にどれだけビジネスに役立ったかをより重視するようになる、という狙いがある。
「10年以上データ分析をやってきましたが、長い間なかなかうまくいきませんでした。以前は事業部門から依頼された分析ばかりやっていたので、どうしても意識が“待ち”の状態になってしまうんですね。それではデータ分析の専門組織として“食っていく”ことなどできません。確かに、事業に不可欠なルーチン的な分析──例えば在庫管理の効率化などであれば決められたことのみやっていてもいいかもしれません。しかし、データ分析によってビジネスにイノベーションを起こすのが私たちの使命ですから、その遂行のためには、“やらなくてもいいことをやる”必要があるのです。誰も考えもしなかったデータ活用にまで踏み込んでこそ、新しい価値を生み出すことができるのですから。ようやくここにきて、いい感じにまわり始めたな、と実感しているところです」と河本氏は述べる。
イノベーティブなデータ分析に必要なのはコミュニケーション能力!
これまで大阪ガスのビジネスアナリシスセンターは、緊急車両の最適配置を支援するシステムや、ガス機器の修理・メンテナンスでの推奨携行部品を示すシステムなど、現場の業務の課題に基づいた分析ソリューションを開発し提供してきた。そうしたソリューションは、既にあらゆる部門、業務に行き届いており、ビジネスの意思決定に大いに役立っているのである。
河本氏は、「データを分析する者にとって大切なのは、問題を見つける力です。そのためにも、ビジネス現場とのコミュニケーション力、社内外のデータに関する見識、そしてデータ側からではなくビジネス側から発想するという意識が欠かせません」と主張する。
そんな河本氏が、これからデータ分析に取り組むことを検討している企業に対して送るアドバイスは、次のようなものだ。
「データの分析方法や他社の事例などはセミナー等で聞く機会が多いかもしれません。そうした情報収集ももちろん大事ですが、より重要なのは、会社の中で誰がどんなアクションを起こせばうまく行くのか、ということです。“こういう分析をすればビジネスを革新できる”と提案したいと思ったら、まずキーパーソンを見つけて現場へのスムーズな導入を促す──それができるようになるには、やはりコミュニケーション能力がカギを握るのです。ビッグデータやデータ分析というと、一見ロジック一辺倒に思われるかもしれませんが、むしろ他のどんな仕事よりも心のつながりが求められる仕事だということを理解することが、成功への第一歩なのではないでしょうか」。
大阪ガスのデータ分析にかかわる具体的な取り組み内容と、優れたデータ分析者を育成する秘訣については、9/27日に開催されるセミナー、「ビッグデータは新たなフェーズへ なぜ、これからは『リアルタイム・ビッグデータ』なのか?」での河本氏の講演で知ることができる。講演の中で“河本流”リアルタイム・ビッグデータ構想も明らかにされる予定なので、データ分析に少しでも興味のある人にとっては必見の内容となるに違いない。