ドイツ・ベルリンで開催される家電関連イベント「IFA 2013」の会場でソニーモバイルコミニュケーションズは、日本の報道関係者向けにラウンドテーブルを開催。シニアバイスプレジデントでUXデザイン・企画部門長である田嶋知一氏が、スマートフォンビジネスなどについて質問に答えた。

ソニーモバイルの田嶋知一氏

フラッグシップモデルは定期的なリリースで

ソニーモバイルは、今回のIFA 2013でスマートフォンのフラッグシップモデルとして「Xperia Z1」を発表した。同社では、2012年1月に米国で開催されたInternational CES 2013で「Xperia Z」を発表しており、約半年でのモデルチェンジしたかたちとなる。

これについて田嶋氏は、「主要な他社は年1回(端末を)アップデートするが、ソニーの最新技術を入れること、最新のデザインにすること、最新のチップを入れること、これを合わせて、さらに彼ら(主要他社)に対してどう戦うかを考えた結果、6カ月でフラッグシップを進化させる方針にした」と話す。状況やその時の戦略など、さまざまな要因で前後する可能性はあるが、6カ月でのモデル更新を狙って動いているようだ。

これは、1月にCES、2月にスペイン・バルセロナでMobile World Congressが開催されるタイミングで発表し、9月のIFAで後継機種を発表することができるため、グローバルへ発表もしやすいほか、小刻みに端末を進化させることで、「他社に対してワンツーパンチができるし、(新機能などで)やられたらそれにかぶせていく」(田嶋氏)ことができるというメリットもある。

Xperia Z1

グローバルでも1年の商戦は2回あり、それに合わせる形で新端末をリリースできるので、販売機会の意味でも重要になる。また、「特にアジアでは、ユーザーがハイエンド端末に飽きる曲線、旬の時期がどんどん短くなっている」ため、それに対応するには値下げを続けるしかなくなる。これに対して、短いサイクルで刷新することで、価格をできるだけ維持して、値崩れしない状態を確保できる、としており、リリースタイミングの重要性を強調する。

それでも「設計は大変」と田嶋氏は認めるが、「デザインランゲージやユーザーエクスペリエンスのコンシステンシー(一貫性)は着々と守っていく」と強調し、「毎回手を変え、品を変えではなく、着実に進化させようとトライしている」と話す。ただし、「小刻みに進化」といっても「小出しにしているわけではない」と田嶋氏。「手加減して勝てるような業界ではないので、その時点で最新・最高の、ソニーがモバイルに適用できる全てを惜しみなく入れないといけない状態」として、常に最大限の力を入れているという。

しかし、今回日本ではXperia ZのあとにXperia Aが登場するなど、リリースタイミングがグローバルと異なる形になっている。これに対して田嶋氏は、「(スマートフォンの)普及度が上がっているマーケットで、フォロワーが扱いやすいという視点で商品を企画した」とコメント。ただ、「Xperia ZとAでブランドとしてのメッセージが分かりにくかった」と認め、「秋以降はそれを踏まえて整理する」としている。それでも、幅広いユーザー層に向けたミドルレンジの商品は、今後も継続し、フラッグシップとは別に用意する。その中で、「コンセプトの整合性はもうちょっときちんとする」(同)考えだ。

このフラッグシップとミドルレンジの端末は、グローバルでフラッグシップを1機種、ミドルレンジを複数用意する方向。「スクリーンサイズと筐体(きょうたい)の持ちやすさはユーザーの好みもあり、スクリーンサイズのスイートスポットは、全世界的にも探っている状態」(同)であり、さらに市場によってそのスイートスポットは異なるため、それに対応するためにも複数端末は用意する計画だ。それでも、Xperiaシリーズで実現できる「エクスペリエンスのコアは共通させる。サイズによって特徴あるアプリも入れたりするが、共通性と特異性のバランスを担保するようにしている」(同)という。

「Z0」から「Z1」へ

今回のXperia Z1は、Zの後継機種となるが、「Zは始まりの序章という思いがあった」と田嶋氏は言う。Zの開発が始まったのは、まだソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズの時代で、カメラやディスプレイなど、最終的なチューンナップはソニーとしてやっていたが、「デバイスから(ソニーとして)仕込むことをやりたかった」と田嶋氏は強調する。Xperia Z1では「リードタイムが十分にあってカメラデバイスを1年半前から(ソニーのカメラ部門と)一緒にやって仕込んだ」とのことで、当初からソニー全体で開発を行ってきたことを同氏は強調する。これは、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズからソニーの100%子会社になったことでこうしたことが可能になったという。