PC市場の縮小を示す数字が各調査会社から出される中、PCベンダーの米Dellは強気だ。創業者兼CEOのMichael Dell氏は8月28日、中国・北京で開催されたイベント「Dell Solutions Summit」で、「PCは今後もビジネスで大切な端末」と述べ、改めてPCへのコミットを示した。

Dell Solutions Summitの会場で、Dellの副会長でPC事業を含むエンドユーザーコンピューティングソリューション担当プレジデントを務めるJeff Clarke氏が報道陣の質問に応じ、PC、タブレットなどの端末やBYODなどについて話をした。

DellのエンドユーザーエンドユーザーコンピューティングソリューショントップのJeff Clarke氏。2012年に撤退したスマートフォン市場への再参入は「当面計画はない」と述べた

ーーPC市場が縮小傾向にある。今後の成長要因は何になるのか?

我々はPC分野の長期的な将来に強気だ。今年に入り確かにPC市場は縮小したが、長期的には成長の方向にある。PCの受け入れ比率は世界全体では増えている。PCの普及率は成長国では80%に達しているが、普及率30%を下回る地域に60億人が住んでいるのだ。タブレットを入れるとコンピュータの販売台数は増えている。

PC市場では縮小が激しいのは、コンシューマー向けだ。Dellは幸い、コンシューマーに大きな比率を置いていない。我々は過去2四半期でシェアを伸ばしている。前四半期比と前年同期比の両方でシェアを増やしたのは、主要ベンダーでは我々だけだ。アジア太平洋・日本地区では、中国、インド、日本などの市場でシェアを増やしており、ビジネスPC事業は成長した。フォーカスはビジネスノートPCで、今回のイベントでは、ビジネス向けノートPC「Latitude」の最新ライン7000/5000/3000を発表した。

最新のLatitude 5000シリーズ。画面サイズが14インチのE5440と15インチのE5540の2機種。5000シリーズは10月に発売を開始する

我々が感じているのは、利用方法の変化だ。Dellはフォームファクタで新しい利用方法をサポートしていく。タブレットにもノートPCにもなる「XPS 12」「XPS 10」を投入した。このカテゴリは"2in1"といわれており、タブレットだけでなく、これまでと同じようにノートPCとして使える端末のニーズに応えるものだ。これは明らかに新しいトレンドだ。

Dellの差別化は、セキュリティと高度な管理性。買収を通じてソフトウェアを強化しており、DellのPCは最も安全で管理性が高い。今後もこの分野への投資を継続する。顧客とタブレットについて話をすると、顧客からの要望は画面サイズや解像度ではなく、セキュリティ機能だ。セキュリティはビジネスにおけるタブレットの最大の懸念となっており、我々は安全性と管理の両方の機能を統合している。

さらには、Dellのタブレットだけでなく、AndroidやAppleのタブレットの実装や管理もサポートで提供する。我々のソリューションを利用して顧客は自社のニーズにあった環境を構築できる。このように、Dellは単に端末を販売しているのではなく、サービスとしても端末事業をサポートする。

ーーWindows 8の受け入れペースが当初の予想を下回っているといわれている。Windows 8の本格的な離陸はいつになりそうか? Chorome OSを採用する計画は?

Windows 8の将来に楽観している。MicrosoftのWindows 8.1リリースにより受け入れが加速するだろう。

ーーBYODのトレンドなどにより、ITマネージャーは管理に苦心している。

Dell全体の戦略は、企業とIT部門がビジネスの問題のみにフォーカスできるように支援することだ。これを、PC製品とユーザーコンピューティングに当てはめると、BYOD環境に適したDell製品の提供、生産性にフォーカスできるためのサポートの提供となる。2in1型であれ、タブレットであれ、ノートPCであれ、IT管理者向けの安全性と管理機能の提供にフォーカスしている。今日発表したLatitudeの最上位となるLatitude 7000シリーズは容易に実装が可能で、ソフトウェアのアップデートなどの管理性も優れる。これらの機能はタブレットでも提供する。PCやタブレットなどの端末だけではなく、ソフトウェアとサービスにも投資している。セキュリティにフォーカスしながら生産性を最大限に得られるようコンサルティングも提供する。

会期中発表、発売を開始したビジネスノートPC「Latitude E7240」。12.5インチのタッチ画面は、PCとしては初めてCorningのノートPC向けガラス「Gorilla Glass NBT」を採用した

IT管理者はエンドユーザーがほしがっている端末のニーズに応じる必要がある。タブレットが人気でも、引き続きコンテンツの作成はノートPCでというユーザーが多く、2in1は期待できるカテゴリだ。2in1であれ、これまでのノートPCであれ、タブレットであれ、DellはIT管理者向けに安全にし、高い管理機能を提供することにフォーカスする。これらの機能をタブレットでも提供する。このように、タブレットをより安全に、管理しやすくするよう取り組んでいる。

ーータブレットでのOS戦略について教えてほしい。現在Windowsを採用しているが、タブレットではWindowsのシェアは少ない。Androidを採用する計画は?

タブレットではWindosを採用する。現在、どちらかというとコンシューマー向けのXPSではWindows RTを、ビジネス向けのLatitudeではWindows 8を採用している。

Windowsを採用する理由は、Windowsタブレットの方がiOSやAndroidと比べると安全性と管理性に優れるからだ。ビジネスでは安全性が高く、容易に管理できるタブレットが望まれている。これを実現できるのはWindowsだけだ。Windowsタブレットにより、ITマネージャーはコストと管理を削減できる。

もう一つ重要な点として、ビジネスで使われるアプリのほとんどがWindows向けだ。このような理由から、我々は継続してWindowsをサポートする。

ーー他のタブレットメーカーと比べると機種数が少ないように見える。7~8インチの画面サイズの投入予定は?

今年後半に複数の端末を発表する予定だ。まだ発表していないことについてはお話できないが、楽しみにしてほしい。