お手軽なレジャーのBBQ(バーベキュー)。肉と野菜を買い込み、金網と炭火でワイワイと焼く。いいですよねー。でも、最近はやれるところが少なくなってきました。なぜでしょう? 煙? 騒ぐから? ゴミ? いろいろありますが、炭についての誤解もその1つのようです。

もうすぐ夏。大勢、金ない、肉食いたい(よだれ)となると、BBQですねー。田舎育ちの私などは、叔父たちが庭にブロックならべ、金網渡しただけの、簡易コンロでBBQをやったのを覚えております。ソーセージばっかり食っておりました。

最近でもBBQは人気だそうです。火起こしが大変だったのが、着火剤が登場し、コンロもお手軽価格になり、スーパーやホームセンターでも大売出しをやるような状況です。ともかくたらふく食べるとみんな幸せになるのですから、こんなよいことはないですな。

ところがですよ。最近、町を歩くとほうぼうに「BBQ禁止」の立札がたっているのです。まあ、銀座の路上でBBQをやるとかいいませんけど、海辺とか河原ではだめなのかなあというと、ダメなんですね。

なんでかな? というと、ゴミをまき散らす、騒ぐといった理由がまずあがります。うん、そりゃわかりますけど、マナーの問題ですよね。最近は、その辺心得ている人もいるし、ちゃんと注意すればいいんじゃないかなと思います。まあ、住宅地の近くだと煙やにおいを嫌がる人もいるとも聞きました。まあ、ごもっともですね。最近は、たき火もやらなくなりましたし、そんなものかなと思います。

しかし、それだけではないのだそうです。「炭」も問題なのだそうです。これは、マナーの良い方もやってしまうことだとのこと。話を聞くと、そこにはサイエンスが、ちょこっと入りこんでいました。

BBQは、ガスでやる場合と炭でやる場合があります。備長炭などの高級炭も使われるとのこと。で、終わったら? 熱々の炭や灰をどうします? 実は、その辺に捨てちゃう人が多いのだそうです。これが問題になっています。そういう人でも、食べ物くずから、コンロから、空き缶から、ちゃあんと持ち帰り、掃除もして…しかし、炭は水をかけて捨てる。なぜか? 多くの人は「炭は自然に帰る」と思っているからなのだそうです。でも、炭は自然に帰りません。分解されません。そのままそこに黒いものが残ったままになります。汚れはとれないのです。だから、炭は専用の捨て場がない場合は、「火消しつぼ」などで酸欠させて消し、それを持ち帰る。その辺に捨てない。これが正解です。あ、日本バーベキュー協会さんの受け売りですけど。

燃え残りの炭を入れるための「火消し壺」(出所:日本バーベキュー協会Webサイト)

さて、なんで、炭は「自然に帰らないのか?」。ここで炭とは何か、思い出してみましょう。炭は、木などを蒸し焼きにして炭化させたものです。炭化すると、ほぼ炭素の集まりになります。成分だけでいうと、グラファイトとかダイヤモンドと同じですね。

炭素は元素の1つです。元素ということは、それを分解しても、別のものに変化しないということですね。砂もほとんどがケイ素でできていて、ずっと変化しません。それと同じで、炭素はそれ以上変化しない物質なのです。太古の火事のあとがそのまま地層にのこっちゃうくらいですからね。っていうか、石炭なんか何億年残っているわけです。

だから、炭で汚したら、それはそのまんま残ります。それをアートにしたのが「水墨画」であり「書道」ですよね。ものすごい大昔の「書」がそのままのこる。炭は安定している強力な物質なんですね。

ということで、自然界に炭をおくのは、巨大な消えない落書きをするようなものってことになります。炭の安定性を人類は活用してきました。炭との付き合いは長いのですが、たまに使うとその辺わすれがちです。っと、お説教みたいになっちゃいましたが、最後に、回収した炭はそのまま着火剤になります。売っている着火剤よりよっぽどいいですよ。

炭とうまくつきあって、楽しいBBQを。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。