――日本で上映するにあたり作品のチューニングを行ったとのことですが、やはり震災をきっかけにストーリーが変更になったこと等も、日本にメッセージを向ける決意をされたことに影響しているのでしょうか?

ちょうどこの映画を制作している時に、「五百羅漢図」という100mの絵画作品を描いていたんです。それは「羅漢」という架空のお坊さんたちが、阿鼻叫喚の世の中を生きているという作品なんです。「お坊さん」というところはまさにくらげ坊と同じなんですけれど。

これらのふたつの作品は、アウトプットと絵面は全然違います。けれど、"震災後の世界を生きる日本人の阿鼻叫喚図"という意味では同じ座標の中にいるんです。『めめめのくらげ』の登場人物たちで言えば、大人は責任を果たさないし、子供ばっかり辛い目に遭っている。それに音響は大音量で、見ていると頭がガンガンするような感じになっています。この映画は、今の欺瞞に満ちた、短絡的な日本の構造みたいなものをうまく表現できればと思って作りました。

――確かに、映画を拝見したところ、大人と子供の対比が非常に印象に残りました。この作品は、日本のどんな人々に対して発しているものなんでしょうか。

基本的には子供に見せたいなと思っていたんですけれども、それと同時に、僕と同じ世代のオタクの人にも見てもらって、真価を問いたいという欲もありました。

――これだけ長期にわたり映画制作を行い、監督業からキャラクターのデザインまで手がける中で、集中力や創造力を持続させるために行っていた工夫や、気分転換の方法などあればお教えください。

一日を半分に分断して、半分は映画、半分は絵画制作にあて、それ以外は寝る時間、食事の時間などです。朝の4時~9時までは絵画制作で、昼くらいから夜の20~21時までは映画の仕事という流れで生活していました。ただし、映画の撮影の時は朝から撮影ばかりでしたが。本当はもっと映画に集中したい時もあったんですけど、仕方なく(制作時間を)分断され続けて2年間過ごしました。気分転換もへったくれもないですね(笑)

絵画作品の制作にとっても、映画を撮っていることはすごくポジティブに働きました。脳みそが分断されることによって、右脳で考えている間に左脳のアイデアが出てきたりとか。精神衛生上よかったですね。ずっと映画を撮りたいと思っていたので、夢が叶って本当に幸せでした。辛いことは辛かったですけど、基本的には自分は幸せ者だと思って制作にあたっていました。

――今回、村上さんのキャリアの中で初めて映画という形で作品を発表されましたが、今後、絵画・彫刻とは異なる形態の作品発表に取り組むとしたら着手したいものはありますか?

以前、六本木ヒルズの公式キャラクター「ロクロク星人」を作った時に着ぐるみショーをやりまして。子供達が熱狂してくれたし、僕自身も着ぐるみが動くのは大好きなので、とてもハッピーな気持ちになりました。なので、(映画の次は)ディズニーランドやサンリオピューロランドで上演されているみたいな、着ぐるみショーがやりたいですね。

――ありがとうございました。

映画『めめめのくらげ』は、現在、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほかで全国順次公開中。