神は細部に宿る――ディティールをつき詰め、パーツも新設計

――なるほど……創刊号にまず目のパーツが付いたのも、高橋さんの目に対する想いが反映されていた訳ですね。

高橋氏:目だけとってもそんな感じなので、ちょっとしたディティールでも、動作でも、全てを抜かりなくデザインしてあげないといけないんですよ。ディティールの集合が全体の雰囲気を作るので……まさに "神は細部に宿る" ということですよね。そこにたとえば、量産部門だとかコスト管理部門だとか、いろんな人の思惑があれこれ入ってくると、絶対にどこか抜け落ちる部分が出てきて、結果的に全体が台無しになってしまう。それでは、人のハートをつかむ製品はできないと思うんです。アップル製品がそこをできていたのは、やっぱりあの、うるさいスティーブ・ジョブズがいたからで。きっと、いちいち面倒くさい感じだったんでしょうけど、そういうのが大事だと思うんですよね。僕もデアゴスティーニさんとやっていく中で若干面倒くさい人になりつつも(笑) そうしないと、というのがあります。

――(笑) そうした甲斐もあってか、ロビには高橋デザインそのままの量産モデルがついに登場! という感慨があります。

高橋氏:今回は外観だけでなく中の設計から全部やりましたからね。関節をまっすぐにせず、肘を曲げた形での基本姿勢などは昔からやってきたんですが、ロビでは自分の中でもさらに新しい取り組みをしています。軸数(サーボモーターの数)を減らしたかったので、脚の付け根のヨー軸(左右への旋回軸)はないんですけど、その分、脚が元々左右に開いた、わざと歪めた形で付けてあったり。

「ロビ」のフロントビュー&リアビュー。両脚は付け根の軸が省略されているが、元々少し "ハの字" 状に付いている

――最初からガンダムのデザイン画のような立ち姿になる訳ですね。

高橋氏:そうです。歩かせる上での制御は少し面倒になるんですけど、今回はユーザーがそこまで意識しないで済むようになっているので。一方で、首には表現力を持たせるために3軸入れてあったりします。

――なるほど、左右に首をかしげることもできると。

高橋氏:パーツも今回のために新設計しているんですよ。CPUボードはヴイストンの前田さん(ロボット格闘大会「ROBO-ONE」でも活躍する開発者)に文句を言われながら、無理やり半分のサイズにしてもらいました。サーボモーターも、今までは不満があってもなかなか直してもらえなかったんですが、今回は、デアゴスティーニさんで数が出るのをいいことに(笑)、双葉電子工業(ラジコン総合メーカー)さんに全部直してもらっています。配線もしやすくしたし、出力軸に対してパーツが一方向にしか付かないようにしたので、誰でも同じように仕上げられる。あと、サーボの余分なモールドをなくしてツルッとさせ、カバーなしでそのまま露出させてもキレイに見えるようにしてもらっています。

――高橋さんのオリジナル・ロボットで使われていたスリム化の手法が、サーボ自体で実現されている訳ですね。

風になびくスカーフのような首のパーツはハンドルにもなっていて、動作中でも軽々と持ち上げることができる。電源スイッチもここにあり、片手でオン/オフが可能

高橋氏:とにかく相当コンパクトになるよう作りこんであります。ロボットのサイズが大きくなると、またそれだけ力のあるモーターが必要になって重くなる。転ぶと壊れるし机はへこむし……そういうモノになってしまうんですよね。だから必要のない軸数も減らして。

――いま見せていただいているロビはプロトタイプですよね? 製品版も完全にこれと同じように組み上がるんでしょうか。

高橋氏:これは頭だけ量産品なんですが、塗装と成型色で違いがわからないぐらい近い色合いになっています。プロトタイプは3体用意したんですが、何万人もの方が楽しみにしているロボットが実はまだその3体しかいないんですよね。量産用の部品はこれから順次でき上がっていくので、自転車操業です(笑)。基本的に、部品は僕が手作業で作ったものをシリコンで型取りしているので、寸法もほぼこのプロトタイプのまま仕上がりますね。

――そもそも、ロビのプロジェクトは大体どのくらい前からスタートしたんですか?

高橋氏:3年前からですね。構想2年、開発で1年ぐらいです。まぁ、ヴイストンさんや双葉さんにもいろいろと無理を言いつつ(笑)、それでもプロトタイプの完成はかなりギリギリでした。でも、せっかくやるなら、今までロボットが抱えてきた問題をまたズルズルと引き継いでしまうのは嫌だったので、とにかく不満点はすべて殲滅させてしまえ、ということで。……続きを読む