2011年3月に発生した東日本大震災以降、日本では電力をよりうまく活用しようという動きが強くなっている。そうした背景から、家電メーカーの中にはスマートフォンで家電を制御できるソリューションを発表するなど、エネルギーの流れを監視することで、快適な生活を維持しながら節電などを実現しようという「エネルギー監視システム(EMS)」への取り組みが盛んに行われている。

このEMSの対象には、「HEMS(Home Energy Management System)」、「BEMS(Building Energy Management System)」、「FEMS(Factory Energy Management System)」、CEMS(Cluster/Community Energy Management System)」、「MEMS(Mansion Energy Management System)」などがあり、それぞれに応じたソリューションが求められている。

中でも一般家庭用向けであるHEMSやMEMSなどでは、さまさまな家電の制御が求められており、それをスマートフォン(スマホ)やタブレットで操作しようというのが最近の流れになっており、すでにそうしたサービスを提供している企業も出てきた。

サーコム・ジャパンが2013年3月から量産を予定しているOEM製品のワイヤレスエアコン制御コントローラ「SF-IRC01」もその1つで、これを使うことにより、外出先からエアコンのオン/オフを実現することが可能となる。

同製品は、スマホなどからの指示を受け、それを赤外線(IR)コードに変換し、赤外線LEDから発することで、エアコンの制御を実現するもの。製品の外観は円形をしているが、内蔵されている基板も円形をしており、そこに赤外線LEDを9個配置することで、360度、どの方向にエアコンがあっても制御が可能になるという特長を持つ。また、温度センサも搭載しており、室内の温度なども測定することが可能となっている。

ワイヤレスエアコン制御コントローラ「SF-IRC01」。温度センサを搭載しているため、それを活用したサービスの提供も可能となる

OEM製品ということで、具体的なカスタマとしてはモバイルキャリアや回線事業者、ケーブルテレビとするほか、MEMSアグリゲータ(各戸を含めたマンション全体のエネルギー管理する事業者)だと同社は説明する。特にMEMSアグリゲータは、高圧一括受電サービスと電力測定ユニットとを組み合わせる形で、居住者に電気代の節約サービスとして提供することを検討しているとのことで、同社ともすでに複数社と話し合いが進められているという。

また、スマホ上での操作画面(UI)は、サンプルサイトは英語だが、OEM供給先が決まった時点で日本語化するとのことで、そのUIのカスタマイズなども請け負う予定だとする。

サンプルUI。国内の主要なエアコンメーカーはカバーしているが、さすがにすべてのIRコードに対応しきれている訳ではないという

なお、同社では2013年下期には高圧一括受電と一緒に既設マンションを対象とした評価を実施したいとしており、今後、カスタマとともにそうした評価結果を受けて、新設マンションなども含めた形での本格展開を図っていきたいとしている。

ワイヤレスエアコン制御コントローラ「SF-IRC01」の試作機。赤外線LEDは放射角45°、到達距離6mで、基板上に9個(+直上空間用に1個)配置されている(背面のRJ-45コネクタの隣にある丸いコネクタは、延長用の赤外線コネクタ)。ダイレクトにスマホからの指示をエアコンに出せず、回りくどい方式を採用しているのは、日本の法律にひっかかる可能性があるからだという。ちなみにすでに海外ではスマホを使って、自由にワイヤレスネットワーク経由でエアコンのオン/オフなどは可能になっている国や地域が増えているとのことで、日本でも法整備が進むことを期待したいとしている