1月30日、デジタルハリウッド大学にて「アニメ・ビジネス・フォーラム+2013」が開催され、アニメビジネスの現状と今後の展望に関する講演が行われた。

今回はその講演プログラムの中から、「進化するスクリーンメディアの戦略とアニメ産業」「niconicoのアニメ戦略」「サンライズの海外展開について」の3つの講演をレポートする。

進化するスクリーンメディアの戦略とアニメ産業

エー・ティー・エックス岩田氏

かつて、アニメといえばTVモニターで見るものだった。しかし、近年ではPCやスマートフォンの普及により、アニメのスクリーンメディア戦略に大きな変化の波がおしよせている。

エー・ティー・エックス岩田氏によると、スクリーンメディアは「デバイス軸」と「時間軸」「場所軸」の3つで分類されるという。たとえば「自宅で(場所)テレビをつけて(デバイス)ライブ鑑賞する(時間)」と、「移動中に(場所)スマホで(デバイス)好きなときに見る(時間)」とでは3つの軸がまったく異なっているため、アニメビジネスにおいても同列には語れないというわけだ。

もっとも、メーカーとしてどのスタイルが望ましいというわけではない。重要なのは作品に適した鑑賞スタイルを提案していくことだと岩田氏は語る。そのために考えなければならないのが、アニメの分類だ。アニメにはグッズなどの版権で稼ぐ「ライツ型」と、そうではない「コンテンツ型」の2つがあり、同じアニメでもビジネスモデルは異なっている。

キャラクターグッズなどの販売で収益を上げる「ライツ型」の場合、とにかく多くの視聴者に簡易に見てもらうことが重要だ。また、作品のメインターゲットがキッズ層になるため、保護者とともに楽しめて操作も簡単なテレビが最適なデバイスとなる。ライブ視聴かディレイ視聴かは問わないが、クリスマス商戦などマーチャンダイジングとの相関性の高さから、リアルタイムであることは重要な要素だ。

一方で、コンテンツ型のアニメは、ある程度限定されたターゲット層が能動的にコンテンツサーチして視聴しにきてくれる。アニメ視聴自体が消費の対象となるため、リアルタイムでもディレイ視聴でも楽しめるスマホやタブレットもテレビに続く第二のデバイスとして候補になりうるのだ。逆にPCは番組をじっくり楽しむにはスクリーンが小さく、持ち運びに便利ともいえないため、時間軸・場所軸の観点から現状では不利なデバイスだといえる。

こうしたコンテンツ分類とスクリーンメディア戦略を考える上で、海外事情にも目を向ける必要があると岩田氏は主張する。

岩田氏によると、アメリカでは今、高すぎるCATV代を嫌って解約する動きが出てきており、視聴者はCATVのセットトップボックス越しにネット接続してVOD(ビデオオンデマンド)視聴するのがトレンドになってきているのだという。これにCmcast等の大手CATVも独自にVODサービスを提供するなど、有料TV市場のサービス競争が加熱しているのが欧米市場の現状なのである。

この流れは、概ね2年から3年程度遅れてアメリカの流れに追随する日本にも押し寄せてくるものと思われる。ではそのとき、ライツ型アニメとコンテンツ型アニメにはどんな影響があるのだろうか。

まずライツ型アニメについては、スマートTVの普及によりグッズなどの購入意欲を後押しする可能性がある。欲しいと思ったとき、スマートTV環境であればすぐにその場で購入することができるからだ。さらにアニメ関連のアプリやデジタルアイテムの商機も増えるため、ライツビジネスモデルにとっては追い風になると予想される。

一方でコンテンツ型アニメについては不透明な部分も多い。最速放送を好み、ネット実況で楽しむファンにタイムシフト視聴はなじむのか、また無料放送を当たり前と捉えているファンに有料視聴のVODは受け入れられるのか。……等々、先の見えない状況ではあるが、スクリーンのスマート化によりアニメファン層に対するコンタクトと消費のチャンスを拡大できることは確実だろうと岩田氏は述べている。

いずれにしてもアニメ業者にとって重要なのは、"いつどこで誰が何をどう見ているか"というスクリーントレンドを常にキャッチアップしておくことであり、スクリーンごとの強みと弱みを把握しておくことである。

2006年のピーク以降、減少していたアニメ総制作量は2012年で底を打ち、今年からは増産体制に入っている。スマートTVとスマホ・タブレットの普及が進む中、アニメ視聴環境のトレンドの変化をいち早くつかむことが次のアニメビジネスで勝利する条件になりそうだ。……続きを読む 「niconico」編