カナダのResearch In Motion (RIM)は1月30日(米国時間)、昨年末の予告通り米ニューヨーク市内においてイベントを開催し、新プラットフォーム「BlackBerry 10」ならびに、同OSを搭載した新デバイス「BlackBerry Z10」と「BlackBerry Q10」を発表した。今回はイベントのハイライトならびに、新OSと2つの新デバイスについてスクリーンショットを交えて紹介する。

米ニューヨークで1月30日(現地時間)に開催されたBlackBerry 10のローンチイベント

重大アナウンスとしてResearch In Motion (RIM)の社名を製品ブランドと同じ「BlackBerry」に変更すると表明。NASDAQ等のティッカーサインも「BBRY」とBlackBerry準拠のものに

QNXをベースに1から作り直された「BlackBerry OS」

BlackBerry 10について概要を簡単に復習しておくと、同OSは従来のBlackBerry OSとは異なり、RIMが2010年に買収したカナダのQNX Software Systemsの「QNX」というリアルタイムOSをベースに新たに開発されたものだ。QNXは車載システムなど組み込みの世界ではそれなりに実績を持っているが、このリアルタイムOSを基に新たにプラットフォーム構築を図ったというのが過去2年間のRIMの軌跡だ。QNXベースとして最初にリリースされたのは2011年の「BlackBerry PlayBook」というタブレット製品で、その後ここでのノウハウや開発ツールの実績を移植する形でBlackBerry OSが再構築され、BlackBerry 10となった。これについてRIMのCEO兼プレジデントのThorsten Heins氏は「2年間の成果が結実したもの」と表現している。

またBlackBerry 10のローンチに合わせ、RIMは1つ重大発表を行っている。それは社名を「Research In Motion (RIM)」から製品ブランドの「BlackBerry」に変更するというものだ。RIMはもともとページャー(ポケベル)開発で生計を立てていたメーカーであり、そこでのメッセージングサービスの開発・運用経験を活かして作られたのが「BlackBerry」だ。発売当初は一部のマニアや企業に着目された程度で100万ユーザー到達まで時間がかかったが、昨今のスマートフォンブームの先駆けとして2000年代半ばには「BlackBerry」の会社としての知名度が上がっていった。現在ではむしろ「RIM」という名前よりは「BlackBerry」のほうが一般での認知度が高いと思われ、「1つのブランドに統一する」との考えで会社名をヒット商品に合わせたのは、ある意味で自然な流れかもしれない。

社名変更は同日より行われ、従来の同社ドメインだった「www.rim.com」は、製品紹介ページとして利用されていた「www.blackberry.com」へと移行することになる。また同社は米NASDAQとカナダ証券取引所(TSX)の2つに上場しているが、それぞれのティッカーサインも「BBRY」と「BB」に変更するという念の入れようだ。なお、ティッカーサインの変更は2月4日より行われるという。

タッチ端末の「Z10」とQWERTYキーボード搭載の「Q10」

BlackBerryといえば「QWERTY」キーボードを搭載した端末を思い浮かべる方も多いと思うが、こうした先入観を変えようとしたのか、同社が新しく発表したBlackBerry 10搭載端末のメインは、4.2インチの高精細液晶を搭載した全面タッチスクリーンパネルの「BlackBerry Z10」だ。過去には何度もリーク画像や新聞広告等で宣伝されていたため、その意味での真新しさはないのだが、タッチスクリーン専用端末をメインとしてフィーチャーしてきたあたりにBlackBerryの新たな意気込みがうかがえる。デザイン的にはプラスチックのような新素材を用い、やや角張ったソリッドなデザインの仕上がりとなっている。

BlackBerry 10 OSとともに発表された2つの新デバイス「BlackBerry Z10」と「BlackBerry Q10」

全面タッチスクリーンの新端末が「Z10」。4.2インチで356ppiのタッチスクリーンに、新素材を使ったソリッドなデザインが特徴

また従来のQWERTYキー搭載モデルに期待するユーザーの声にも応え、「BlackBerry Q10」が用意されている。こちらは3.1インチのタッチスクリーンとQWERTYの物理キーボードを備え、比率的には画面部分がやや大きい従来のハイエンドBlackBerry端末に近い外観となっている。素材的にはZ10と同じものを用いているが、こちらはやや丸みを帯びたデザインだ。BlackBerry 10ではタッチスクリーンを前提にした操作体系となっており、それに合わせて従来の光学トラックパッドではなく、一回り大きいタッチスクリーンを全面に打ち出した形になったとみられる。このあたりはBlackBerry Bold 9900シリーズの正統後継を期待していたユーザーには賛否両論かもしれないが、OSを含めたプラットフォーム全体の評価で見直されてくるかもしれない。

もう1つの新端末「Q10」は3.1インチで330ppiのタッチスクリーンに加え、従来のBlackBerryの特徴である物理キーボードを装備。使用する筐体素材はZ10と同じだが、より丸みを帯びたものになっている

BlackBerry 10全体の特徴として高速Webブラウジングとソーシャルメディア機能統合等が特徴になっている

タッチスクリーン向けにアレンジされたBlackBerry 10の新機能

イベントではBlackBerry 10を使った複数のデモが行われ、新機能が紹介された。そのスムーズな操作性を象徴するのが「BlackBerry Flow」と「BlackBerry Peek」と呼ばれる2つの機能で、Flowでは複数起動したアプリをスムーズに切り替え、Peekでは「Notifications」という通知バーを画面左右からタッチ操作で素早く呼び出して目的の機能にアクセスすることができる。BlackBerry 10では個々のアプリは完全にマルチタスクで動作しており、バックグラウンドにまわったからといってサスペンドされることはない。デモ画面にあるように、Peekで通知バーの機能を呼び出しつつも、背後に見える動画は再生をそのまま続けている。QNXをリアルタイムOSとして取り込んだ成果だと思われるが、このあたりがiOSやWindows Phoneとの大きな違いだ。

BlackBerry Flowではスムーズなアプリ切り替えが可能に。個々のアプリは完全に独立したマルチタスク動作を行っており、バックグラウンドにまわってもサスペンドされることはない

BlackBerry Peekは「Notifications」のバーを画面左右から引き出してすぐに次のアクションに移れるというもの。コミュニケーションツールとして発展してきたBlackBerryをさらに進化させた形となる