説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりが正しく理解していないこともあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は、「高層階で"圏外"になる原因と対策は?」という質問に答えます。

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ビルの高層階では"圏外"になる、これがiPhoneを含む携帯電話における現状です。携帯電話の基地局は、ビルの屋上や鉄塔など地上40メートルあたり、階数でいえば13階付近に設置されることが多く、しかも下向きの場合が大半です。これが、ビルやタワーマンションの高層階で携帯電話がつながりにくい理由です。

その問題を解決する方法のひとつが「小型基地局の設置」です。一般的な基地局は、半径数百メートルから十数キロメートルという広い範囲をカバーしますが、ビル・マンションといった高層建築物や、地下など遮蔽物の多い場所では電波強度の低下が避けられません。そこで、インターネット回線につながった小型基地局を設置するというわけです。

その小型基地局が実現する通信エリアは「フェムトセル」と呼ばれます。エリア半径は数十メートル程度と狭いものの、基地局と携帯電話の関係はほぼ1対1となるため、輻輳(ふくそう:通信が集中して平常時のデータ送受信が困難になる状況)の心配がありません。

小型基地局などのフェムトセル機器は、LAN回線(Ethernet)を利用し、ふだん使用しているブロードバンド回線経由でインターネットに接続します。iPhoneなど携帯電話機側には、特別な機器やアプリを導入する必要はありません。ただし、ハンドオーバー(通信を維持しながら基地局を切り替える機能)に対応しないため、フェムトセルで通信中に移動を開始した場合には、通信が切断されます。

日本でiPhoneをサポートするソフトバンクとau/KDDIは、それぞれ「ホームアンテナFT」と「auフェムトセル」というフェムトセル機器を用意しています。どちらも機器レンタル費は無料ですが(固定ブロードバンド回線の通信費は利用者負担)、3G通信のみ利用可能です。そのため、iPhone 5の場合、フェムトセル機器経由で接続する屋内ではLTEをオフに、外出する場合はLTEをオンにしなければ、ベストな通信速度とはなりません。

写真で解説

ソフトバンクとau/KDDIのどちらも、フェムトセル機器は3G通信のみ利用可能です。そのため、屋内使用時はLTEをオフに切り替える必要があります(画面はau版iPhone 5)