株式会社アイ・ティ・アール プリンシパル・アナリスト 金谷敏尊氏

仮想化といえば、一昔前までは"大規模企業向け"と相場が決まっていたが、最近では中堅・中小企業のニーズも高まっている。これは、マイクロソフトが2012年11月に「Windows Server 2012」の小規模企業向けエディションとして「Windows Server 2012 Essentials」を提供開始したことでも明らかだろう。「マイナビニュース仮想化セミナー」では、ITRのアナリストである金谷敏尊氏が、2月8日(金)に開催される【Day 2】の基調講演で仮想化技術とクラウド市場の動向を交えて解説する。本稿ではその概要をお伝えしよう。

コストリダクションと管理の柔軟性を実現

仮想化といえば、一昔前までは"大規模企業向け"と相場が決まっていたが、最近では中堅・中小企業のニーズも高まっている。これは、マイクロソフトが2012年11月に「Windows Server 2012」の小規模企業向けエディションとして「Windows Server 2012 Essentials」を提供開始したことでも明らかだろう。 企業のIT戦略アドバイザーとして豊富な実績を持つアイ・ティ・アール プリンシパル・アナリストの金谷敏尊氏は「中堅・中小企業がサーバ仮想化を行う場合のメリットは大きく2つあります。ひとつがコストリダクション、そしてもうひとつが管理の柔軟性です」と語る。

最近では中堅・中小企業といえども、会計やグループウェア、ファイル保管などで複数のサーバを使っていることが少なくない。こうした複数台のサーバを仮想化により1台に集約すれば、当然ながら従来と比べてコストが抑えられる。また、余剰リソースを有効活用できたり、物理的な設置スペースが空けられたりするのも企業にとって嬉しい部分だ。

一方で管理の柔軟性という観点でも、サーバ仮想化は大きな役割を担ってくる。従来の物理サーバと比べて、仮想化環境はプロビジョニングやクローニングが少ない作業工数でスピーディーに実行可能。また、事業規模の拡大・縮小などに応じたスペック増強も、リソースの割り当てを変えることで柔軟に対応できる。さらに、システム全体が冗長化構成となるためシステムの動作継続性が高まったり、開発環境の統合が行えたりするのもシステム管理者の負担軽減につながるポイントといえるだろう。

仮想化は目的意識を持って取り組む

「仮想化は中堅・中小企業においても、今後のビジネスを展開する上で非常に重要です」と語る金谷氏。ただし注意点として「仮想化は"トレンドだからやる"のではなく、しっかりとした目的意識を持って行うことが重要です」とも続ける。

例えば、小規模のサーバを仮想化により統合する場合、環境によっては期待通りのコストメリットを得られないケースもある。実際、今までの物理サーバ環境にはなかったハイパーバイザーという層が加わったことにより、かえって管理コストが増えたり、うまく使いこなせなかったりするといった課題を抱える企業も少なくない。

このように「当初の予定とまったく違った」ということがないよう、自社になぜ仮想化が必要なのか、どのような改善効果を求めるのかなどを明確にし、その目的に向かって導入を進めることが重要だ。

目的を明確にしたら、その目的に向かってベストな仮想化環境を構築していく。ソフトウェアについて製品とOSSのどちらを使うかで大きく変わってくるし、製品を選ぶにしても独立した専門のハイパーバイザーにするのか、バンドル製品にして垂直統合性が高いものにするのかといった選択肢がある。さらに、社内のシステム管理者ではなく外部のSIerに依頼するのか、パブリッククラウドを使うのかといったことでもかなりの違いが出てくるだろう。

黎明期から成長期へと向かう仮想化

最後に「現在、仮想化は黎明期をようやく越えた段階で、まだまだ成熟途上にあります。今後は企業のコアサーバや基幹系システムなど、より大がかりなものを仮想化環境で動作させるという傾向が強まっていくでしょう」と、仮想化の傾向について語る金谷氏。

一口に"仮想化"といっても、その実現方法には数多くの選択肢が存在しており、どのような形で実行するか、何を選択するかによっても効果の度合いが大きく変わってくる。企業にとっては、その中から"失敗しないための選択基準"をいかに見つけ出すかが気になるところだろう。

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マイナビニュース仮想化セミナー 仮想化環境に最適なIT基盤とは!?」では、【Day2】今こそ仮想化基盤を再考しよう! ~次世代仮想基盤に新たな可能性をもたらすWindows Server 2012~で、今回インタビューした金谷氏が登壇する。アナリストの視点から、仮想化において企業が抱える課題、仮想化基盤の構想化や構築に求められるスキル、製品評価のポイントなどについて、仮想化技術とクラウド市場の動向を交えて解説する。