作家・岩崎夏海氏。ブロガー「ハックルさん」としても知られる

こうしたプラットフォームのあり方が、そこでコンテンツを展開するユーザーの収益や将来性に大きな影響を与えることは間違いない。しかし、だからといって単一のプラットフォームに依存するのは危険であり、「Amazonアフィリエイトも利率を下げられるとそれだけで収益全体ががくんと下がる。メルマガに人生を賭けて食おうとするなら、リスクは分散しなければならない」と田端氏は主張する。

川上氏、夏野氏はこの意見に同意しながらも、「それまで食えなかったジャーナリストがメルマガで食えるようになった」(川上氏)、「知識があるのに発信の場を持っていなかった人が山ほどいて、そうしたセミプロの領域がメルマガで広がった」(夏野氏)と、メルマガプラットフォームについては肯定的な見方を示した。

トークセッション後半は、プラットフォームからコンテンツへと話題が移り、津田氏が「人は何に対してお金を払うのか」と問いかけた。川上氏によると、人がネットのコンテンツにお金を払うのは、そのコンテンツに払うというよりも習慣の問題なのだという。

自らもブロマガを出しており、売行きも好調な夏野剛氏

例として川上氏が挙げるのが、ホリエモンこと堀江氏がかつて行っていたというライブチャットサービスだ。女性と2人で話ができるライブチャットは1分いくらという課金形態だが、実はここで課金しているユーザーは、そうでないユーザーに比べて、エロ以外に対する課金も多くなる傾向があったのだ。

川上氏は「エロだから払うというわけではなく、習慣の問題が大きい。お金を払うということに慣れているかどうかが重要」だと述べ、津田氏もこれに賛同、「メルマガの解約率は5~10%と低い。これは自動的に課金が継続するから、習慣になっているのでは」と意見を述べた。

……と、ここで会場に顔を見せていた著名ブロガーの小飼弾氏に壇上から話が振られ、岩崎氏との一触即発のトークが展開した。

プラットフォーム論を展開するドワンゴ会長・川上量生氏

実は小飼弾氏は、岩崎氏が「敵」だと明言する3人の著名人のうちの一人(あとの2人ははてな代表・近藤淳也氏と、ブロガーのちきりん氏)。しかし小飼弾氏は「なぜ敵視されるのかわからない」と困惑の表情を浮かべ、「岩崎さんに敵が必要だったときにたまたま僕が通りかかっただけでは」と語る。

これに岩崎氏は憤慨した様子で、小飼弾氏の過去のブログ記事に言及しながら激しく非難。さらに話は岩崎氏の代表作『もしドラ』にまで及び、「『もしドラ』がミリオンセラーになったのは読まない人が買ったから。読まれなくても売れるのは商売としては最高」(小飼弾氏)、「読者を馬鹿にしすぎ。それはちきりんと同じで馬鹿をだましてどれだけ買わせるかという考え方。俺は読者を馬鹿にしない」(岩崎氏)と、お互いに一歩も弾かぬ舌戦を繰り広げた。

また、会場に姿を見せていたIT戦士こと岡田有花記者も、過去の記事でもしドラのパロディーを行ったことをつっこまれるなど岩崎氏のオールレンジ攻撃に巻き込まれ、この予想外の展開に会場とニコ生視聴者は大盛り上がりとなっていた。結局、議論そのものの結論は出ないままトークセッションは終了となったが、イベントとしては大いに盛り上がった面白い会になったのではないかと思う。

最後に岩崎氏がつぶやいた、「僕の被害妄想が激しいのは、不遇の時代が長かったから。僕は上の人から認められなかったという思いが強い。……まあ、僕が僕を見たら認めないと思うんだけど、だけどそれでも認めてほしかった」という言葉が印象的だった。