原発
原発問題は言うまでもなく次の選挙の大きな争点であり、日本の将来を決める重大な問題だ。ニコニコ動画のコメントを見る限りではユーザーには原発賛成派が多かったように感じたが、各党首の意見はどうだったのだろうか。
このテーマで口火を切ったのは、日本未来の党・嘉田代表。原発に反対する嘉田代表は、「原子力発電所を卒業しよう」というキャッチフレーズを強調し、10年後に原発ゼロを目指しているというドイツを例に挙げて、「代替エネルギーの開発と、エネルギーの節約」が急務であると主張する。みんなの党・渡辺代表、社会民主党・福島代表、日本共産党・志位代表、新党日本・田中代表、新党大地・鈴木代表の5人も原発には反対の姿勢を示しており、渡辺代表は「徹底した電力の自由化」、志位代表は「再生可能エネルギーの普及に取り組む」、田中代表は「電力の消費量は火力と水力だけでまかなえている」、鈴木代表は「サハリンからパイプラインを引いて北海道にエネルギーの備蓄基地を造る」と、原発ゼロの根拠、および代替エネルギー案について意見を述べた。
また、福島代表は安倍代表に対し「40年間、政官業癒着で原発推進してきた責任はどう考えるのか」と言葉を投げかけ、さらに野田代表に対しては「2030年代原発ゼロを目指すのであれば、なぜ大間、島根3号、そして東通の原発建設を進めるのか。大飯原発は活断層の疑いが強く、やめるべきではないか」と迫った。
これら反対派の党に対し、原発問題に「その他」(賛成ではないことに注意)の姿勢を示すのが自民党・安倍代表、公明党・山口代表だ。
安倍代表は「原発問題は◯か×かではないし、言葉遊びでもない。足元の電力需要にどう応えていくか、中長期的にどのように原発依存度を低減させていくか、その具体性で評価してほしい」と述べ、福島代表からの問いかけに対しては「福島の事故については、我々、自由民主党も安全神話の中にあったということは深刻に反省している。しかし、原子力政策を推進してきた結果、廉価で安定的な電力を得て我々はこの経済成長を勝ち得てきた。我々は『なぜあの事故は起こったのか』をもっと徹底的に調査をするべきであり、その上で3年以内に動かすかどうかを決めていく」と回答した。
同じく、「賛成」でも「反対」でもなく「その他」と回答し、「原発に依存しない社会を目指す」とするのが公明党・山口代表だ。山口代表は、「いずれ原発はゼロにならざるをえない」としながらも、「事故を教訓にして新しい厳格な安全基準を原子力規制委員会で確立し、国民の皆さんの理解を得て、再稼働の是非を判断していく」と、再稼働については言葉を濁した。
さて、福島代表が述べたように「2030年代に原発稼働ゼロを目指す」と主張するのが民主党・野田代表だ。野田代表は「新設・増設は認めない。安全基準は規制委員会がしっかり作った上で、安全性が認められたものだけ再稼働を行う」としながらも、「震災前までに30%近く原発依存しておいて、すぐにゼロとか10年とか言うのは私は困難だと思っている」と原発の"即時ゼロ"は難しいとの考えを示している。しかし、基本方針としては「ぶれずに2030年代にゼロを目指す」と繰り返し強調するなど、原発問題に苦慮している様子をうかがわせた。
冒頭で述べたように、今回の討論会は特に目新しい意見も出ず、討論というよりも各党の考え方を改めて確認する場であったように感じた。むしろ今回の重要なポイントは、アングラ動画サイトとして2006年に登場したニコニコ動画に、主要政党の党首がこれだけ集まったというその事実だろう。時代は着実に動いているということを強く認識させられた放送であった。