映画館で上映されるような大作映画は、何億円もの製作費がかかっています。では、そういった商業映画ではなく個人で自主製作映画を作った場合は、コストはどれくらいかかるのでしょうか? 実際に自主製作映画を作っている方に聞いてみました。
業者から演者を呼ぶと大出費
――自主映画を製作するにはどれくらいのお金がかかるのでしょうか?
製作する映画の内容や時間によってピンキリですが、私の場合、30分~1時間の実写映画を作るのにだいたい10万円ほど使っていますね。もちろん、役者やスタッフを増やしたり、撮影地などにこだわった場合はもっと必要になります。
――思ったよりも安い印象を受けるのですが、10万円というのは自主製作映画としては高いのでしょうか?
映画の尺を考えればかなり安い方ですよ。出演者を知り合いで固めてギャラを節約しているので。普通はもっとお金がかかると思います。ただ、私は普通のサラリーマンなのでがんばっている方だと思いますよ。少しずつお金を貯めて撮影して、お金を貯めて撮影して、という感じですので(笑)。
――なるほど(笑)。他の個人ベースで映画を製作されている方も、だいたいそれくらいの費用がかかっているのでしょうか?
「趣味」として映画を作っている知り合いと同じくらいですね。10分~15分の短い作品を作っている知り合いは、毎回数万円で収まっているそうですが。
――製作にかかる予算は具体的にどんなものなのでしょうか?
自主映画の場合は機材さえあればあとはシンプルですよ。私の場合、大まかに言うと「演者さんのギャラ」と「ロケ関係の費用」、これだけです。
――本当にシンプルですね。
商業映画はもちろん、劇場で上映してような映画だと、もっと多岐に渡りますが、個人ベースで製作する分にはこの2つに主にお金がかかりますね。
――出演者の方のギャラですが、どれくらいかかるものなのでしょうか?
拘束時間や内容、派遣元の会社で色々変わってきますが、だいたい1人頭で1日1万円前後は必要と考えておいた方がいいですね。もちろん有名なタレントさんを出演させたい場合はもっと値段はアップします。
――ということは、10人出演させたい場合は1日で10万円必要ってことですか……。
簡単な計算だとそうですね。中には「10人で4時間6万円」といったパック料金があるプロダクションもありますが。
――そう考えると、ギャラってかなり高いんですね。個人だとやすやすと出せない金額です。
そうなんですよ。なので私は友人や知り合い達に、「ご飯をご馳走するから!」と、お願いして出演してもらっていますよ。完成してもどこかの映画館で上映するようなものではないですからね。経費の節約です。
――なるほど(笑)。
意外とかかるロケ費用
――ロケ費用というのはどれくらいかかるのですか?
ロケ費用もけっこうお金がかかりまして、出演者の交通費やロケ先での飲食費などかなり飛んでいってしまうんです。往復600円でも、10人で移動したら交通費だけで6,000円必要ですからね。そこに全員の飲食費を合わせると1回のロケで20,000円近く必要になります。
――飲食費も全部支払っているんですね?
協力してもらっているので、ロケ先で必要なものは全部出していますよ。
――でも、ロケも1箇所じゃないですよね?
そうなんです。10分やそこらの作品でも内容に凝ればあちこちでロケしますし、1時間作品だとそれこそあっち行ってこっち行って……ですよ。クオリティを上げるためには必要なことなんですが、お金がどんどこ消えていきます(笑)。あとはロケをする際に、施設などの使用料金がかかることがありますね。
――使用料金ですか?
そうです。例えば、国や市が管理する建物や大きな公園で撮影をする場合、一応撮影許可の申請や利用料金が必要になる場合があるんです。他にも、イメージに合うようにハウススタジオなんかも借りたりするので、そういった部分でもお金が必要になりますね。そうなるとまたロケの費用が高くなるんですよ。ロケ費用だけで10万、20万円必要になったりしますからね。
初期投資さえクリアすれば映画は撮れる
――そういえば、「先ほど機材さえあれば」とおっしゃいましたが、撮影・製作に必要な機材はどんなものがありますか?
必要なのは撮影用の「カメラ」、「マイク」、「照明」、編集用の「パソコン」の以上4つですね。最低でもこれらがあれば映画は作れます。
――パソコンは今ではほとんどの家庭にありますけど、カメラやマイク、照明などはいくらぐらいするのですか?
カメラは市販のデジタルビデオカメラで十分です。30,000円とかそれくらいで買えるものでいいと思います。ステレオマイクは10,000円ほどでそれなりのものが買えますし、照明は5,000円ほどのハンディライトを使っています。必要に応じてダンボールで囲ったりいろいろ工夫はしていますが。また、キーライトだけでは十分ではない時は自作のアルミのレフ版を使ったりしていますね。パソコンは……まぁピンキリなので映像編集ができる最低限のものでいいと思います。
――ということは、カメラとマイク、照明だけだと50,000円ほどで済むんですね。
上を見ればキリはありませんけど、まぁそんなもんで揃うと思います。ただ、機材や編集ソフトにこだわり始めるとものすごいお金がかかるのは言うまでもありませんが(笑)。
――なるほど(笑)。
まぁそこまでこだわらなくてもいいと思いますよ。昔と違ってフィルム現像や手作業での編集がいらないのでそんなに難しくないですし。
――そういえば昔はいちいちフィルムを現像に出さないとダメでしたね。
やっぱりフィルムは味がありましたからね。今でもデジタルで撮影したものを白い布に投影し、その投影されている映画をもう1回デジカメで撮影することによってフィルムっぽくしたりしていますよ(笑)。
――そんなやり方があるんですね(笑)
昔、大阪市立大学の映画部がやっていたのをマネしています(笑)。ともかく、自主製作でも映画を作るにはそれなりの費用が必要ですが、最低限の機材と費用でも、工夫次第で斬新な映画や演出ができたりするので、単純に映画を作ってみたいという人はとりあえずやってみればいいと思いますよ。
やはり映画製作は簡単ではないようで、個人でもちゃんとした映画を作るにはそれなりのお金が必要になるようですね。ただ、パソコンとカメラさえあれば簡単な作品は作ることはできるみたいなので、興味のある人はまず手近なところで撮影して作ってみてはいかがですか?
(貫井康徳@dcp)