日本オラクル 代表執行役社長 最高経営責任者 遠藤隆雄氏

日本オラクルは10月30日と31日の2日間、東京・恵比寿のホテルでプライベートイベント「Oracle Days Tokyo 2012」を開催。初日の10月30日には、「What's Next for Oracle Database ?」と題して、米Oracle データベース・サーバーテクノロジー担当 シニア バイス プレジデント アンディ・メンデルソン氏が講演し、同社の次世代データベース「Oracle Database 12c」(以下、Oracle 12c)の新機能を紹介した。

冒頭、挨拶を行った日本オラクル 代表執行役社長 最高経営責任者 遠藤隆雄氏は、「日本のイノベーションをもっと進めなくてはならない。その原動力は間違いなくITだ。ITを活用したイノベーションをお客様に起こしてもらいたい。そのためには、標準化されたもの使うなど、シンプルがなものがいい」と述べ、同社が掲げるビジョンである「SIMPLIFY IT」がITイノベーションにとって有効であることを強調した。

米Oracle データベース・サーバーテクノロジー担当 シニア バイス プレジデント アンディ・メンデルソン氏

そして、続いて登壇したアンディ・メンデルソン氏は、同社の次世代のデータベースである「Oracle 12c」の新機能を紹介。

同氏は現在のデータベースの課題として、サーバ統合によりコストを削減したい、データベースの数を減らしたいという課題があり、これらをデータベースアプリケーションの独立性と現状を維持したまま実現したいというニーズがあると指摘。そして、「これらを課題を解決するためにOracle 12cの開発を行った」と述べ、Oracle 12cの最大の新機能である「Pluggable Database」を紹介した。

Pluggable Databaseは、これまで、それぞれが独立したITリソースを利用していたデータベースを、コンテナ・データベースに統合するソリューション。これにより、バックグラウンドのプロセスやメモリを共有化し、ITリソースの効率的な利用を促進する。同社では、Pluggable Databaseを利用することにより、利用するリソースを1/6にできるとしている。

統合するにあたっては、Oracleの異なるバージョンのデータベース同士を統合することも可能だという。同氏はPluggable Databaseを「いわば、データベースの仮想化だ」と説明した。

Pluggable Databaseでは、それまで個別に動かしていたデータベース(左)を、コンテナ・データベースに統合するソリューション(右)

基調講演では、80%越えていたCPUの使用率を、統合により40%程度まで下げることができる様子をデモ

また、Pluggable Databaseでは、パッチやアップグレードを簡素化し、1回の操作で、コンテナ・データベース内すべてのDBに適用することが可能。また、DBごとにパッチを適用するか、しないかを区別したい場合は、適用したいDBのみを新しいコンテナ・データベースに移行することにより可能になるという。

同じコンテナ内のデータベースには、1回の操作ですべてのデータベースにパッチを適用できるが、適用したくないデータベースがある場合、コンテナを分離することによって可能になる

また、Pluggable Databaseでは、システムの優先度によって、同じコンテナ・データベースであってもITリソースを割り当てる優先度を変更することができる。

システムの優先度によって、同じコンテナ・データベースであってもITリソースを割り当てる優先度を変更することができる

そのほか、バックアップはコンテナ単位でまとめて行うことが可能で、復旧はデータベース単位で任意のポイントで行える。また、スタンバイ・データベースを構築することができ、テスト用にスナップショットを取ることが簡単に行えるという。

バックアップはまとめて可能

ストレージのコスト削減に貢献するヒートマップ

続いて、アンディ・メンデルソン氏は、Oracle 12cの新機能として、ストレージコスト削減に効果ある「ヒートマップ」を紹介。

ストレージコスト削減に対しては、データを圧縮して、ストレージに格納できるデータ量を増やすことが重要だが、一方で、アーカイブするとアプリのパフォーマンスに影響がでることが懸念される。

ヒートマップは、データの利用状況を赤、黄、青の3色で表示し、データの利用頻度が低いデータほど圧縮率を上げ、ストレージの容量を圧縮できる機能。

ヒートマップ

また、ヒートマップは、企業のポリシー(どれくらいアクセスしていないデータを圧縮するか)に基づいて圧縮率を変更でき、データのライフサイクルを自働化できる。同社では、データを圧縮することにより、データをメモリ上に搭載し処理できるという新たなメリットも生まれるとした。

データの利用頻度により圧縮率を変更し、マフォーマンスへの影響を回避する

アプリを変更せずに行えるデータマスキング

そして、アンディ・メンデルソン氏は最後に、Oracle 12cの新機能としてデータの動的マスキング機能を紹介した。

これは、コールセンターでの機密個人情報保護を目的にしたもの。コールセンターでは、問い合わせのあった顧客情報を参照するが、その際、クレジットカード番号など、機密個人情報がオペレータに見られてしまうという問題がある。

動的マスキング機能は、このような機密個人情報の一部あるいは全部をマスキングする機能。このような機能は通常アプリでの対応が必要だが、Oracle 12cでは、データベースの設定を変更することで可能にする。また、アクセスするユーザー権限によって、マスキングするかどうかを指定できるという。

データのマスキング

マスキングの設定

なお、Oracle 12cは来年度以降提供される予定だという。