Integrated Device Technology(IDT)の日本法人である日本アイ・ディー・ティーは10月26日、都内でワイヤレス給電技術に関する説明会を開催し、標準化の動向や技術の普及具合などの説明を行った。

ワイヤレス給電技術には主に電磁誘導(Magnetic Induction:MI)型、磁界共鳴(Magnetic Resonance:MR)型、電界結合型、電波型などがあるが、それぞれに特長があり、IDTでは技術的な中立な立場をとり、どれかに傾倒するということは行っていない。そのために、2008年に設立され、すでに100社を超す企業がメンバーとして参加し、MI方式を取り入れた「Qi」を推進するWireless Power Consortium(WPC)や、2012年5月にSamsung ElectronicsとQualcommが中心となり設立し、MR方式を推進するAlliance for Wireless Power(A4WP)など複数のフォーラムやコンソーシアムに参加している。

MI方式、MR方式、そして電界結合方式それぞれの概要

デバイスベンダとしてあくまで中立な立場をとるのがIDTのスタンス

「ワイヤレス給電を実現するためにはアナログ半導体技術、デジタル半導体技術、そしてパワー半導体の技術を融合する必要がある。しかも、実際に活用してもらうためには低コストでそれを実現する必要がある」とIDTのVice President/Division GM,Analog and Power Division(APD)のArman Naghavi氏は語る。

そうした技術を融合して開発されたのが、2012年3月に発表された1チップワイヤレスパワートランスミッタ/レシーバ「IDTP9030/9020」である。同製品の詳細は発表当時の記事をお読みいただければ、と思うが、簡単に言えば、これまでトランシーバとして競合ソリューションでは9チップと多数の受動部品で構成されていた送電モジュールを1チップといくつかの受動部品で置き換えることが可能となり、基板面積の縮小とBOMコストの50%低減が可能になることで、普及促進を加速することができるようになる。

1チップワイヤレスパワートランスミッタ/レシーバ「IDTP9030/9020」の概要

また、MI方式のQiは給電パッドのコイルの上に充電したいコイル搭載機器を置かなければいけないが、A4WPが進めるMR方式ではトランシーバの横やある程度離れた上部などに置いても給電が可能である。これにより、例えば床下や壁に給電システムを設置し、少し離れたところに電灯を置いて、配線なしで点灯させる、といったことが可能になる。同社では、どちらの方式に対してもファームウェアの書き換えで対応が可能だとしている。

また、すでにQiの現状の規格である5Wを大きく上回る15W給電に対応するチップの開発も進んでおり、デモを行える状態になっているほか、50W給電に対応するチップも1年以内に提供を開始する計画としている。もし、こうした大容量の給電が可能になれば、ノートPCなどにもワイヤレス給電技術が搭載されていく可能性が高まるというほか、MR方式であれば、ノートPCをバッテリにしてスマートフォンなどを周辺に置いて充電、といった使い方もできるようになるとのことで、A4WP向けの取り組みについても10月29日週のどこかで何らかのアナウンスができるものとの見方を示す。

同氏は「我々IDTは中立的な立場でさまざまなコンソーシアムにも参加し、そこで求められる技術を提供していく用意がある。日本は携帯機器の導入が進んでおり、そうした意味では今後、日本がそうした将来のワイヤレス給電に必要なニーズを提供してくることも考えられる」とコメントしており、日本での携帯機器の普及によりワイヤレス給電技術が進化していくとの見方を示す。

なお、WPCは現在、120Wまで給電できる中電力の仕様を検討しているが、こうした新規格への対応も同社では着々と進めており、システムの中心を担うプロセッサを提供するIntelや機器メーカーなどと協力してソリューションの実現を図っていく方針としている。

実際に「IDTP9030/9020」を搭載したモジュール。右はコイルを3つ配置したものだが、だからと言って複数の機器を同時に充電できるわけではなく、チップ側で充電する機器を判断してどれか1つに対する充電がデモされていた