宇宙航空研究開発機構(JAXA)の油井亀美也宇宙飛行士が、2015年6月ごろから国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在すると決まった。ISSへはロシアのソユーズでおもむき、第44/45次長期滞在クルーのフライトエンジニアとして、約半年間にわたってさまざまな任務を行う。

ISSに滞在する日本人宇宙飛行士は油井飛行士が9人目となる。ISS滞在の決定にともない10月5日に記者会見が開催され、油井飛行士はヒューストンからのテレビ会議で喜びと意気込みを語った。

ヒューストンからテレビ会議で記者会見に臨んだ油井宇宙飛行士。最初は緊張した面持ちだったがやがて笑顔も出た。油井飛行士は「宇宙飛行士候補に選抜された当初は笑顔も引きつっていたが3年半でうまくなったかも」と語っていた

油井飛行士は1970年、長野県生まれ。1992年に防衛大学理工学専攻を卒業し、防衛庁(現在の防衛省)航空自衛隊に入隊した。パイロットとして勤務したのちJAXAの宇宙飛行士候補募集に応募し、2009年2月に候補に選抜された。その後宇宙飛行士になるための訓練を経て2011年7月、ISSに滞在する宇宙飛行士の認定を受けている。

JAXAの宇宙飛行士に認定された時点で40代に入っていたのは油井飛行士が初めてである。油井飛行士は、この年齢から新しいことにチャレンジしてもまだのびしろはあると強調した。ゼロから始めたロシア語は今では日常会話ならスムーズにこなせるようになったし、各種のトレーニングの結果、体重は学生時代と同じくらいに絞られたという。さまざまな訓練の中ではときに足踏みすることもあったが、周囲の励ましや期待に応えようと毎日努力していくことで壁を乗り越えてきたと語った。

そんな油井飛行士はたびたび「中年の星」というフレーズとともに紹介されてきた。本人は今はまだ中年の星としては6等星くらいで、やっと肉眼で見えるかどうかだと謙遜する。3年後の長期滞在に向けて今後も訓練を重ね、立派にミッションをやり遂げて、空に明るく輝く中年の星になりたいと語った。

油井飛行士と同時期に宇宙飛行士に認定された同僚には、大西卓哉飛行士と金井宣茂飛行士がいる。1970年生まれの油井飛行士に対して、大西飛行士は1975年生まれ、金井飛行士は1976年生まれである。3人の中で油井飛行士が最初に長期滞在クルーに決定したことについては、「同じような訓練を受けてきて、誰が選ばれてもおかしくなかった」としつつも、「年齢が上であれば人生経験も豊富だと思われたのかもしれない」と自信のほどものぞかせた。

ISSには現在、星出彰彦宇宙飛行士が長期滞在中である。今年11月に星出飛行士が帰還してから約1年後、2013年の年末から半年間、若田光一宇宙飛行士がISSのコマンダーとして約半年間滞在する予定となっている。油井飛行士のISSへの搭乗は、若田飛行士の帰還から約半年後である。

2009年に若田飛行士がISSに長期滞在して以降、ISSには毎年日本人宇宙飛行士が長期滞在している。この記録は今回の油井飛行士の選出によって、2015年まで続く予定となった。

ISSの運用は2020年まで続く予定である。油井飛行士の同僚である大西飛行士と金井飛行士も、遠からずISSでのミッションが決まるだろう。

油井飛行士はTwitterでも日々の訓練や家族のことなどを飾らない言葉でつづっている。Twitterでさまざまな意見を聞くうち、どんな話が求められているのかわかってきたという。国民の期待に応えられるよう長期滞在に向けて訓練を続けていくとしつつ、「国民の皆さんの理解があってこその日本の有人宇宙活動ですから」と、今後も一般からの意見を求めていきたいと語った。

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