キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)およびキヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)は、東京・西東京市に建設していた次世代データセンター「西東京データセンター」で、10月17日よりサービスを開始する。今回、内部を取材する機会を得たのでレポートする。

サービスを開始する西東京データセンター

「西東京データセンター」は、東京から20km圏内という利便性と、武蔵野台地の強固な地盤という好立地が特徴のデータセンターだ。標高は60m以上あり、海岸線から十分な距離があるため津波・高潮のリスクが少ない。

建設に際しては、固い地盤まで敷地を13m堀り、その上に建物の基礎を構築。免振装置やオイルダンパーなどの耐震設備も備える。また、日本データセンター協会(JDCC)が定めるファシリティ・スタンダードのティア4レベルに対応し、床耐荷重は1.5t/平方メートルで、最大2,300ラックのサーバを収容可能だ。

基礎免震構造

免震装置

横揺れ防止のためのオイルダンパー

縦揺れ防止のための制震ダンパー

給電は異なる変電所の2系等、データセンター内部の電気系統や空調、制御サーバ等はすべてニ重化され、セキュリティ面でも、ボディースキャナーやX線手荷物検査装置による持込・持出検査を実施。サーバ室入り口は生体認証付ローターゲートにより共連れを防止するほか、ICカード認証対応や生体認証など7段階のセキュリティを実装する。監視カメラシステムは最大で470台設置可能だという。提供するのは、契約者自身がサーバなどの機材を持ち込み利用するハウジングサービスだ。

データセンター内部の廊下

サーバルーム

キヤノンITS ITサービスマネジメントセンター センター長 秋葉俊幸氏

キヤノンITS ITサービスマネジメントセンター センター長 秋葉俊幸氏は、「計画から4年の歳月を経て、西東京データセンターは10月17日からサービスを開始する。西東京データセンターのサービス開始により、キヤノンとしては、本格的なデータセンター事業の開始となる。このデータセンターは、都心から20km圏内、武蔵野台地の強固な地盤上にあり、立地面で優れており、80箇所の候補から選択した。手前味噌だが、すばらしいファシリティだ」と、立地面へのこだわりや充実した設備をアピールした。

IDCの調査によれば、2011年の国内データセンター数は461箇所(50平方メートル以上の事業者のみの数字。企業内のデータセンターは含まず)だといい、関東地方が70%、東京が40%を占め、首都圏に集中する。東日本大震災直後は、関東を離れる傾向も見られたが、東京近郊でのデータセンターの供給が増えてきたことから、関東回帰の傾向があるという。理由としては、利用する会社が首都圏に集中していることと、IX(Internet eXchange)に直接接続できる点などがあり、この傾向は今後も続くという。

2011年の国内データセンターの数(50平方メートル以上の事業者のみの数字。企業内のデータセンターは含まず。出典:IDC Japan)

キヤノンが東京の立地にこだわった理由はこのあたりにありそうだ。

すでに、金融系や旧型データセンターからの乗り換えなどを中心に、最大収容の2,300ラックを超える3,000ラック以上の引き合いが来ているが、同社では、現在の建物のとなりに同規模のデータセンターを建築できる用地をすでに確保。今後の需要をにらみながら増床する計画だ。

同社では、これまで東京で2箇所、沖縄で1箇所の計3箇所のデータセンターを運用してきたが、西東京データセンターのサービス開始により、提供規模は一気に10倍になる。

では、なぜキヤノンがデータセンター事業を始めるのか?

キヤノンITS ITサービスビジネスセンター プラットフォームサービス企画部 部長 滝口直樹氏

これについて、キヤノンITS ITサービスビジネスセンター プラットフォームサービス企画部 部長 滝口直樹氏は、「キヤノンMJでは、2015年に売上高を8,500億円にする経営目標を掲げており、その重点戦略の1つとして、サービス事業会社化がある。既存製品の低価格化が進む中、新たにストック型ITサービスを提供することにした」と説明。

キヤノンMJグループでは今後、データセンター事業で養ったノウハウをベースに、システム管理に関するさまざまなサービスメニューを開発し、事業を拡大する方針だ。

秋葉氏は、「設計、構築、運用、保守というSI事業を営むお客様のライフサイクルでトータルでサポートしていきたい」と、単にシステムの運用・保守だけでなく、設計、構築までを含めたサービスを一気通貫で提供することが狙いである点を強調した。

キヤノンMJおよびキヤノンITSは、西東京データセンターを中核として活用し、グループのクラウドサービス基盤「SOLTAGE」やBPOサービスを強化することで、アウトソーシングサービス事業を拡大。キヤノンMJグループは、アウトソーシングサービスと保守サービスで構成されるストック型ITサービス事業全体で、2015年に約500億円の売上を目指す。