KDDIは8月24日と25日の2日間、埼玉県・ふじみ野市のKDDI研究所において「夏休み親子体験ツアー2012」を開催した。同イベントは親子で情報通信の世界を体験学習できる催し。両日で、計60組120名の親子連れが招待された。

KDDI研究所で行われた「夏休み親子体験ツアー2012」

KDDI研究所 夏休み親子体験ツアーは通信の歴史や携帯電話のつながる仕組み、未来の通信技術などを体験学習するプログラムを通じて、親子で「通信」に関する認識を深めてもらおうという試み。KDDI広報部の主催によるもので、小学3年生~6年生とその保護者を対象に募集が行われた。参加費は無料。告知はホームページやSNSのほか、自治体の協力により地域の小学校に対しても行われたという。

開催に先立ち、KDDI研究所 代表取締役所長の中島康之氏から挨拶があった。同氏によれば、KDDI研究所は国際通信を研究する場として今から60年ほど前に設立された機関が母体となっているという。中島氏は「この施設で研究した成果が、皆さんの携帯電話やスマートフォンに活かされています。夏休みも残り1週間になりましたが、今日はたくさん学んで帰ってください」と話した。

開催に先立ち挨拶するKDDI研究所の中島康之氏(写真左)。参加者の子どもたちには、ツアー内容が分かりやすくまとめられたオリジナルのパンフレットが配られた

参加者は10名程度にグループ分けされ、スタッフの先導により研究所内の複数の拠点を周った。光海底ケーブルの紹介ブースでは、ケーブルの種類の紹介や敷設方法の説明が行われた。説明員によれば、国際電話をかけたり海外のホームページにアクセスしたりする場合の90%以上は、光海底ケーブルを経由しているという。身近な通信の、光海底ケーブルへの依存率が予想以上に高かったことから、子どもだけでなく保護者からも驚きの声があがっていた。

光海底ケーブルの太さは3種類あり、浅い所ほど頑強なカバーで覆われたものが使われている(写真右)。漁船の底引き網や錨(いかり)などからケーブルを守るためだという

会場には、ケーブルを敷設する際に使われる船の模型や、水中ロボットの実機が展示されていた。日本と外国を光海底ケーブルで繋ぐ場合、いくつもの深い海溝を越える必要がある。そうした困難な場所でも効率よく作業するために、KDDI研究所では「アクアエクスプローラー2」という水中ロボットを開発した。同ロボットはプログラミングにより動作をコントロールできる設計で、GPS機能を利用して海底の調査やケーブルトラブルの発見をすることが可能だという。

ケーブルの敷設や保全の際に使われる専用船「KDDIオーシャンリンク」(写真左)と、海底の調査やトラブルの早期発見にも利用されるアクアエクスプローラー2(写真右)

地下に案内された参加者たちは、携帯電話が繋がる仕組みについて説明をうけた後に、身の回りのあらゆる電波をシャットアウトする「電波実験室」(無響室)へ入室した。ここではひとつの実験が行われた。

トゲ状の電波吸収体に覆われた電波実験室の様子。KDDIでは、この部屋を利用して携帯電話の電波やアンテナの仕組みを研究している

電波実験室は電波シールドで覆われており、外からの電波が入らないようになっている。また、部屋内で発信した電波は敷き詰められた電波吸収体に全て吸収されるという。実験では、まずはじめに携帯電話と計測器の間で通信ができることを確認した。次に携帯電話と計測器の間に電波吸収体を入れて、通信を遮断。その後、近くに反射板を設置して、計測器で電波を受信できるか試してみた。すると、反射板の角度を調節すれば通信が行えることが確認できた。これは反射板に当たった電波が、計測器の方向へ進路を変えたことによるものだ。