7月10日から東京都現代美術館にて開催される企画展「館長 庵野秀明 特撮博物館 -ミニチュアで見る昭和平成の技-」の開会式が、9日行われた。このたび開会するこの展覧会は、映画監督の庵野秀明氏がこの博物館の"館長"となり、数々の作品で活躍したミニチュアやデザイン画、そしてそれを生み出した人々の技を展示した、凄まじいまでに気迫のこもったものだ。

開会式のテープカット。左から大久保好男氏・樋口真嗣氏・庵野秀明氏・鈴木敏夫氏・髙嶋達佳氏(左) 開会式は、庵野氏の創作の原点となった特撮作品への強い思いから始まった(右)

同展覧会の副館長は、映画監督の樋口真嗣氏。企画制作協力については、スタジオジブリの鈴木敏夫氏が行った。また、同展の主催者である東京都現代美術館、日本テレビ放送網のほか、東宝、円谷プロダクション、角川書店など、今回の展示に様々な形で協力・協賛した企業・団体の代表者などか参列した。

開会式では東京都現代美術館館長・髙嶋達佳氏、日本テレビ放送網代表取締役社長執行役員の大久保好男氏に続き、庵野"館長"が挨拶に立った。

庵野館長「次の一歩のため、結果を残したい」

特撮博物館館長として挨拶に立つ庵野氏

同展の企画が生まれたのは、2009年。「(庵野氏が、樋口氏や特撮の第一線で働く方々から)ミニチュア(撮影)や、特撮の現場を取り巻く状況を聞かされ、ものすごく危機感を持った」ことがきっかけになったという。「自分一人ではどうにもならないと気付き、ジブリの鈴木プロデューサーに相談したことが幸いでした。そのおかげで、3年後にはこの形になってくれました。本当にありがとうございます」と、鈴木氏への謝辞を述べた。

展示について、庵野氏は口で説明するよりも「そこにあるものを自分の眼で見て感じてほしいものが詰まっています」とコメント。また、同展のために制作された特撮短編映画『巨神兵東京に現る』については「樋口監督のおかげで素晴らしいフィルムになってます。メイキングも含め、特撮の現場が持っている面白さも詰まっています」と、内容への自負を述べた。

庵野氏にとってこのテーマは、一回の企画展のみで終わるものではない。「これは、僕らのプロジェクトの中ではほんとにほんとに大きな第一歩です。次の一歩に繋げるためには、これで結果を残したいと思います」と、同展が数字という形で成功を見せることの意義を掲げた。

庵野氏は、映画製作の仕事と同展の準備が重なったため、「ホント大変だったんですよ」と語る一幕もあった。挨拶の最後は、「大変な時に、僕を支えてくれた最愛の妻に、心からお礼を言います。ありがとうございます」と、安野モヨコ氏への感謝の言葉で締めくくった。

樋口監督「文化祭の前日が永遠に続けばと」

続いて、会場中央に運ばれてきたのは今回の映画のために作られた巨神兵の頭部。撮影に使われたものと同じ型から、頭部のみが再製作された。

巨神兵の頭部は、同展の入り口前に展示される (c)2012 二馬力・G

ここからは、司会からの質問に、各氏が回答する形式で進められた。

―今回の映画が製作された経緯は?

鈴木氏:特撮の展示会なら、短くてもいいから新たに今の特撮技術を使って映画を作ったほうがいいんじゃないかという話が持ち上がったんです。ちょうどジブリの中で関係者で打ち合わせをしていた時、唐突に彼(庵野氏)が「巨神兵で作ったらどうか」と。それなら、許諾をもらおうと二人で宮崎監督の所へ行き、こういう経緯で庵野が映画を作りたいと言うんです、と話したんです。彼は絵を描いていたんですけど、ふっと顔を上げて「いいよ」と。話が持ち上がって宮崎駿の許諾をもらうまで、5分から10分くらいで決まりました。

宮崎監督にこの映画をいつ見せるか悩んでいるという鈴木氏

撮影は「非常に順調にいきました」と樋口氏

―映画の見所は?

樋口:特撮はなぜミニチュアを作って撮らなくてはならないのか、という疑問があると思うんです。それを解消するように、出来上がった映画を見て、それをどう作ったのかというプロセスを、ぜひ順を追って見て頂きたいと思います。

―展示全体の手応えは?

樋口:本当に大勢の方の協力のもと、素晴らしい展示を作っていただきました。私も最後の追い込みで参加させて頂いたんですけど、これはホントに楽しかった! まるで……プロの方の前で言っちゃいけないでしょうけど、文化祭の前日のような楽しさがありましたね。永遠に続けば良いなと何度思った事か(笑)

巨神兵の頭部を前に、映画についてのトークが行われた

―庵野館長、映画の率直な感想は?

庵野:樋口に頼んでよかったと思います。本当に、よくできてます。いろんな事情も知っている中で、よくここまでと思います。ありがとう、真ちゃん!

―来場される方へメッセージを

庵野:映像の枠の中の面白さもありますが、枠の外にある、現場の持っている面白さもあります。技術や想像する力も、この中に可能な限り詰め込んでいますので、ぜひご覧ください

樋口:(同展覧会の)最後に写真を撮影できるコーナーがあるんですけど、ぜひ大勢の方で来て、みんなで写真を撮ってください!

撮影現場のイメージを再現したミニチュアは、来場者が撮影することができる

同展覧会は7月10日から10月8日まで。特撮短編映画『巨神兵東京に現る』は、展示会場内の上映スペースで観ることができる。