今こそ、IT基盤の可用性向上に踏み出すチャンス!

東日本大震災以降、多くの企業で事業継続への関心が高まっており、ディザスタリカバリ(DR)システムの構築やシステム冗長化の取り組みにかかわる事例をよく見聞きするようになった。またそれと同時に、仮想化の普及も急速に進みつつあり、仮想化技術を使ったIT統合基盤の構築は昨今のITトレンドとなっている。

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC) ITエンジニアリング室 プラットフォーム技術部 の山下朋宏氏

こうした背景を受けて、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC) ITエンジニアリング室 プラットフォーム技術部 の山下朋宏氏は、今こそIT基盤の可用性を高めて事業継続に資するチャンスだと説く。

「可用性と事業継続というのは不可分のテーマ。あらかじめIT基盤の可用性を高めておかなければ、事業継続性も高めることはできない。いわば可用性の向上というのは事業継続における足もとの大事な部分なのだが、経営者にとっては直接利益に結びつくものではないので、これまで議論が後回しにされがちだった。大体は、何か問題が発生して初めてその重要さに気づくというパターンが多かったのだ。しかしここにきて事業継続が非常にホットなテーマとなっているので、IT基盤の可用性の向上をIT部門から経営者に訴える良い機会が訪れたと考えるべきだろう」(山下氏)

また山下氏は、仮想化が定着したことで、IT基盤のつくり方が変わってきている点について次のように指摘する。

「かつてはさまざまなシステムが乱立しており、個々のシステムは個別最適の視点で構築されていた。しかし仮想化技術を採用したIT基盤を構築する際には、全体最適の視点からアーキテクチャをしっかりと検討することが肝となる。具体的には、いくつかのシステムを統合基盤上にのせてゆくときに、それらの受け皿となる"リソースプール"の可用性をどうするのかが課題となる。どこまでを同じリソースプールに置き、どこから別のリソースプールに分けるのか、そしてそれぞれのリソースプールにはどこまで冗長性を持たせるのかといった事柄だ」

カギは、全体最適の視点でアーキテクチャを描くこと

仮想化技術を採用したIT基盤の可用性を高めようとした時に、目先のコスト減に惑わされないよう山下氏は注意を促す。

「仮想化技術はコスト削減を実現しやすい一方で、IT基盤の可用性レベルが意図せずアンダースペックに傾きがちになる。そうなるとシステム全体のバランスがとれない危険性が高まる。万が一システムが止まったとしても許容できるというコンセンサスを得た上でならよいが、通常は何か問題が起きてシステムが止まった時に、あらためて適正なスペックを見直さねばならないといった後手間が発生することになる。これでは実質的なコスト増となってしまう」

システムの利用率についても、ただ高めればそれで良しとするのでは問題があるという。可用性を吟味した上での適正な利用率を目指す必要があるのだ。

そして、実際に仮想化を用いたIT基盤を構築するとなったならば、可用性についてのレベル分けをしっかりと定義した上で、搭載しようとしている個々のシステムがそれぞれどれに当てはまるかをマッピングする必要がある。

「これができていないと単なる個別最適のシステムとなってしまう。それではなんのための仮想化なのかわからない。やはり、全体のアーキテクチャがしっかりと描けていることが大事なのだ」(山下氏)

こうして特に高い可用性が求められるシステムについては、クラスター化により冗長性を大幅に向上することになるわけだが、山下氏はクラスタリング製品を選定するポイントとして次のようにアドバイスする。

「コストや機能も確かに大事だが、ベンダーのサポートの品質が高いかどうか、多くの企業への導入実績/経験があるかどうかといった点に特に着目すべき。いざというと時にベンダーもまた適切に対処できるかも含めて可用性に結びつくことを忘れないで欲しい。IT統合基盤のような話になると、実際の利用シーンまで想定しておかなければ、可用性向上とコスト最適化は実現できない」

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IBM、CTC、サイオスがわかりやすく解説
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