【レポート】

超小型衛星「雷神2」 - 2013年度打ち上げ予定の「ALOS2」への相乗りが決定

東北大学と北海道大学は4月13日、都内で会見を開き、両大が共同開発を行ってきた超小型衛星「雷神2(RISING-2)」が2013年度に打ち上げられる予定である陸域観測技術衛星「だいち(ALOS)」の後継機となる「ALOS-2」の相乗り衛星に決定したことを明らかにした。

雷神2の外観(提供:東北大学/北海道大学)

雷神2のプロジェクトマネージャーを務める東北大の坂本祐二 助教

雷神2の前世代機「スプライト観測衛星(雷神)」のミッションは、地球の夜の部分で生じる発光現象(スプライト)の観測を宇宙から行うことだった。しかし、打ち上げ10日過ぎに電源部に異常を感知、現在も軌道を周回しているが、監視運用が継続して行われているのみの状態となっている。ちなみに雷神2に関しては「1号機の失敗を加味して、実際に長期運用ができるところまできたのではないかと判断している」(プロジェクトマネージャーを務める東北大の坂本祐二 助教)と自信を覗かせている。

今回の雷神2は、500mm×500mm×500mmの超小型衛星(重量43kg)ながら高度約628kmの太陽同期軌道を約97分で周回(運用年数は1~5年を予定)し、高解像度地球撮像ミッションである搭載された高性能カメラによる地球撮像のほか、雷神のミッションでもあった「スプライトなどの高高度放電発光の撮像」と、新たに「超多波長望遠撮像」の2つを最先端理学観測ミッションとして、全地球規模での災害監視や積乱雲の構造とゲリラ豪雨のメカニズム解明、高高度放電発光現象(スプライトなど)のメカニズムの解明などに挑む。

スプライト観測の概要

各ミッション用センサとしては、「高解像度望遠鏡」、「ボロメータアレイ(非冷却型サーモグラフィ)(あかつきが初めて宇宙で使用。雷神2では民生品を応用したものを利用する)」、「魚眼CCD撮像カメラ」、「広角可視近赤外CMOS撮像カメラ」の4つが搭載される。

さまざまな観測を4つのセンサを活用して行う

高解像度望遠鏡は軽量・高剛性化に向けて、日本セラテックやナガセインテグレックスと協力して、複数の炭素化合物を混ぜ合わせることで低熱膨張率(0.0@23℃)を実現したセラミックス(ZPF)ミラーを加工することで、低熱膨張性を確保、これにより直径10cm、焦点距離1mと小型ながら5mの地上分解能を実現した。

セラミックス(ZPF)ミラーの各種性能

開発中の雷神2.黒い筒状のものが高解像度望遠鏡(提供:東北大学/北海道大学)

また、液晶波長可変フィルタ(LCTF)を世界で初めて衛星に搭載し、技術実証を行う。これは青森県のアスミタステクノロジーにより開発された多層液晶セルによる400色の波長可変干渉フィルタで、波長範囲650-1050nmにおいて1nm刻みで中心波長を制御することが可能なものとなっており、日本の液晶技術を活用した新たなデバイスとしても期待される。

LCTFの概要

このほかにも、雷神2にはさまざまな試みが施されている。特に姿勢制御システムとしては、大学生および大学院生の手によって開発された磁気コイルによるスピン抑制制御のほか、スターセンサによる姿勢計測やリアクションホイールによる姿勢制御技術が盛り込まれている。

姿勢制御機器も開発大学生/大学院生たちの手によって開発された

北海道大学 大学院理学院・宇宙理学専攻の高橋幸弘 教授

こうした取り組みの先には、「大学発ベンチャーによる安定的な超小型衛星の供給」(北海道大学 大学院理学院・宇宙理学専攻の高橋幸弘 教授)という大きな目標がある。「短期間、低コストで開発ができる超小型だからこそできる、革新的な宇宙の利用法を誕生させたい」(同)ということであり、すでに北海道大学のキャンパスなどに超小型衛星および搭載機器の開発・試験をワンストップで行うための体制も構築したという。

各種試験用設備やクリーンブース、暗室などの開発に必要な設備を取りそろえることで、開発速度の向上などが図れるようになった

また、雷神の開発経験で得た構造開発ノウハウを、次世代以降に生かすことで、プロジェクト間のミッション機器開発連携が可能となり、例えば2012年7月21日に打ち上げる予定の宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)3号機で国際宇宙ステーション(ISS)に運び込まれる予定の「JEM-GLIMS」とフランス国立宇宙研究センター(CNES)が主導して開発を進めている小型衛星「TARANIS」にはスプライト観測機が搭載されるほか、2012年にISSの日本実験棟「きぼう」から宇宙に直接放出される予定の2Uサイズのキューブサット「RAIKO(雷鼓)」と、2013年度もしくは2014年度に打ち上げ予定の超小型衛星「RISESAT」は雷神2と並行して開発が進められるなど、開発期間の短縮(JEM-GLIMSは8カ月で開発)とモジュール化による流用を可能とした低コスト化などが図られている。

バスを中心に共通部分を多くしたことで、横展開しやすくなり、それによる開発速度向上などが図れるようになった

東北大学大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻の吉田和哉 教授

さらに、東北大学大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻の吉田和哉 教授は「今回は単なるものづくりではない。雷神の時はもの(衛星)を作って終わってしまった。それだけでは過程の半分」とし、安定運用などを実現するためには、「地上での運用ソフトや宇宙空間模擬によるシミュレーションによるハードウェアの妥当性評価などを開発して活用することが必要」であり、これを10名程度の学生のみで実現。「これにより、超小型衛星で日本の宇宙開発の再構築を迫ることができるようになった」との野望を披露をしたほか、高橋教授も「50kg級の衛星は世界があまりやってきていないが、実用性の面では可能性があるサイズ。中型や大型衛星とごう組み合わせて活用していくかが今後のポイントとなるだろうが、150-300kg級の小型衛星企業と比較しても同等以上の機能を1/3-1/5程度の価格で提供できるのは魅力」と、雷神2の打ち上げ・運用が成功すれば、日本の宇宙開発の歴史の中で大きな転換点になる可能性があることを強調した。

地上運用ソフトウェアやシミュレーション技術などのソフト面の充実も図ったことで、より完成度の高い衛星づくりが可能となった

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