国際政治においてビッグイヤーとなる2012年、アメリカ大統領選挙の裏側を舞台に繰り広げられる人間ドラマが注目を集めている。ジョージ・クルーニーの最新監督作『スーパー・チューズデー ~正義を売った日~』(3月31日公開)――ゴールデン・グローブ賞やアカデミー賞にもノミネートされた話題作だ。その脚本を手がけたのがボー・ウィリモン。ヒラリー・クリントンの上院議員選挙、ビル・ブラッドリーやハワード・ディーンの大統領選挙でキャンペーン・スタッフとして働いた過去を持つ異色の脚本家が、作品に込めた思いと今年の米大統領選について語った。

ボー・ウィリモン

――まずは『スーパー・チューズデー』の原作にあたる戯曲『ファラガット・ノース』を書こうと思った理由を教えて下さい。

ウィリモン「日本に来たかったからです! ……というのは冗談で(笑)、この作品を書こうと思ったのは2004年、ハワード・ディーンの大統領選キャンペーンにスタッフとして携わった直後。過去に選挙キャンペーンで経験したことをまとめて、いろんなことを語りたいという気持ちになったんです。そんな中で色々と考えていくうち、若くして倫理観を問われるような決断をしなければならない広報官スティーブンという主人公が浮かんだですよ」

――そのスティーブンがスーパー・チューズデーに向けた選挙キャンペーンで巻き込まれる汚い駆け引きや裏切り行為の数々は、すべて実際に起こった出来事だそうですね。それらを暴露することに、リスクの大きさは感じませんでしたか?

ウィリモン「この物語は舞台こそ政治ですが、決して政治ドラマというわけではなく、人間の野心や欲望、裏切りや忠誠心を描いた作品。大統領予備選を舞台に選んだのは、そうすることでテーマがより明確に伝わるんじゃないかと思ったからなんです。アメリカでは、選挙戦や政治の裏で汚いトリックや裏切りが横行していることは広く知られているので、その点にはそれほどリスクは感じませんでした。それに、国民が実際に選挙の裏で起きていることを知るのは健全なことだと思いますしね」

3月31日より丸の内ピカデリーほかで全国公開

――この映画が今年の大統領選において、有権者の考え方に何かしらの影響を与えることは期待していましたか?

ウィリモン「大統領選挙の年に公開されるということで、この映画の注目度は非常に高くなると思うんですよ。しかも今は実際、共和党がネガティブなキャンペーンやスキャンダラスなキャンペーンを展開している最中ですからね。このタイミングで『スーパー・チューズデー』を観て頂ければ、また選挙の見方が変わってくるのではないか。そういう期待は確かにありますね」