前回は、リニューアルされたホスティングサービス「Speever」のサーバーサービス内容や、サービスを提供するためのサーバーインフラについて紹介した。今回は、Speeverの高品質サービス提供を支えるソフトウェア「Parallels Automation」について、ライド社の田子正樹氏、パラレルス社の土居昌博氏に話を聞いた。

Parallels Automationとは

高品質なホスティングサービスを提供する「Speever」では、基盤として動いているパラレルス社のソフトウェア「Parallels Automation」が大きな役割を果たしている。今回は、このParallels Automationについて紹介しよう。

Parallels Automationを提供しているパラレルス社であるが、仮想化ソフトの世界的なトップ企業として有名だ。Mac上でWindowsを動作させるデスクトップ向けの仮想化ソフト「Parallels Desktop for Mac」を思い浮かべる読者も多いだろう。

もちろん、サーバー向けの仮想化ソフトも提供しており、Speeverの仮想サーバーにもパラレルス社の「Parallels Virtuozzo Containers(パラレルス バーチュオッゾ コンテナ)」が使用されている。Parallels Virtuozzo Containersは、ハイパフォーマンスが売りのコンテナ型の仮想化ソフトで、世界中にユーザーを持っている。

そして、今回紹介するParallels Automationのような自動化ソフトも、パラレルス社の主力商品である。SMB向けのサーバーホスティング(クラウドホスティング)を行う事業者をターゲットに開発されたこれらの製品は、多くの事業者で使われている。土居氏によれば、ホスティングサービスを行っている事業者の90%が、パラレルス社の何らかの製品を使用しているそうだ。

さて本題のParallels Automationに戻ろう。Parallels Automationは、パラレルス社が開発 / 販売しているクラウドで効率的にサービス提供するためのプラットフォームソフトウェアだ。クラウドサービス提供に欠かせない課金・請求・プロビジョニングなどを自動化することができるといっても、なかなかどのようなソフトウェアなのかわかりづらいと思う。もう少し具体的に説明していこう。

Speeverのようなホスティングサービスをビジネスとして提供するには、サーバーと通信回線などのハードウェアリソースが重要な要素になるが、それを用意するだけではビジネスにならない。サービスを提供するためのこれらのリソースを適切に運用管理し、エンドユーザーの要望するサービスを迅速に提供し、その代価を得ることによってビジネスになるわけだ。

一例として、新しいユーザーがホスティングサービスを利用するケースを考えてみよう。サービス提供を行う事業者は、ユーザーにどのようなサービスがあるのかを提示する必要がある。そして、ユーザーが選択したサービスの申し込みを受け付け、顧客情報を登録し、希望サービスのリソースを用意し、課金請求を行うなど多くの作業が発生する。

しかし、これらの作業を手作業で行っていたら、管理運用にかかるコストは莫大になってしまう。サービスをできるだけ低価格でしかも高い品質で提供するには、これらの作業を効率よく行うことが非常に重要になるのだ。

エンドユーザーがWebサイトの画面から自分で申し込みを行い、支払いのためのカード情報を入力する仕組み。ユーザーが希望したサービスに従い、適切なサーバーリソースを割り当てるプロビジョニング。そして課金請求処理。Parallels Automationは、このようなサービス提供時に発生する多くの作業を自動化してしまうという、優れたソフトウェアなのだ。

Parallels Automation概念図

サービス提供には不可欠なものだが、その作業自体が大きな付加価値を生むわけではないものに関しては、自社の大切なリソースである人手を介すよりも、ソフトウェアを使って自動化した方が事業者にとってはいいわけだ。

「必要な作業ではあるが、ミスさえなければ誰がやっても同じという作業は、機械にやらせてしまった方がよい。その方が、正確で早く行える」とパラレルス社の土居氏は言う。

次ページでは、Parallels Automationを実際にSpeeverに導入した経緯やそのメリットについて紹介する。